VMware Infrastructure 3の全体像VMware Infrastructure 3 徹底入門(2)(1/2 ページ)

VMware Infrastructure 3はハイパーバイザの「VMware ESX」と、管理ソフトウェアの「VirtualCenter」から成っている。では、これらはどのようにほかの要素と連携して、サーバ仮想化環境を作り上げるのだろうか。今回は、VMware Infrastructure 3による仮想化環境の全体像を紹介する

» 2008年07月25日 00時00分 公開

 「VMware Infrastructure 3」はVMware ESXと呼ばれるハイパーバイザ製品と、VMware VirtualCenterと呼ばれる管理ソフトウェア製品により構成されている。今回はVMware ESXの構造と、VMware Infrastructure 3の全体像について説明する。

ハイパーバイザVMware ESXの役割

 ではVMware ESXの中身をもう少し詳しく見てみよう。

図1 VMware ESXの概念図 図1 VMware ESXの概念図

 図1の中央に「VMware Virtualization Layer」と記述されている部分がある。これが仮想化を行っているソフトウェアレイヤであり、VMkernelとも呼ばれている。VMkernelはまさにハイパーバイザーそのものであり、VMware ESXの中枢部である。ハードウェア上で直接動作し、堅牢で高性能なプラットフォームを提供している。VMkernelはヴイエムウェアによって独自に設計・開発された専用カーネルである。インストーラやコマンドラインがLinux風であるため、VMware ESXはLinuxをベースに開発されていると誤解されていることも多いが、実際には完全に独自開発されたカーネルであり、仮想化を行うことだけに特化した構造になっている。

 各種ハードウェアデバイスはVMkernelの制御下に置かれる。このためコンピュータを構成する主要要素であるCPU、メモリ、ネットワーク、ストレージなどの物理リソースはすべていったんVMkernelによりハンドルされ、抽象化された形で仮想マシンに対して提供される。このため綿密な資源管理が可能となっており、また仮想マシンの大きな特長である「ハードウェア非依存」を提供している。

 繰り返しになるが、VMkernelは仮想マシンの実行に特化した専用カーネルである。コンパクトに実装されており、保有している機能は、仮想マシンの実行・物理リソースの制御・デバイス管理機能である。このため実はユーザーインターフェイスさえ実装されていない。これを制御するために、別に「サービスコンソール」と呼ばれる環境が提供されている。図の右側に記述されている部分である。

 サービスコンソールは、VMware ESX 3.xではRed Hat Enterprise Linux 3をベースに一部独自の拡張を行うことで実装されている。VMware ESXの管理用のIPアドレスとは、実際にはこのサービスコンソールに振られているIPアドレスのことを指している。VMware Infrastructure 3の操作はGUIから行うことが多いが、さまざまな操作内容はこのサービスコンソールを経由して最終的にVMkernelに伝達され、各種アクションが行われる。

 このような基盤環境の上で仮想マシンが動作している。VMware ESXはx86コンピュータのマシンを仮想的に構成することに特化しており、ほかのコンピュータプラットフォーム、例えば IA64 (Itanium) プラットフォームやRISC系プラットフォームのコンピュータを仮想的に構成することはできない。構成された仮想マシン上では、何らかのx86系オペレーティングシステム、そしてその上で動作するアプリケーションを動作させることができる。仮想マシン上で実行されるOSのことを「ゲストOS」と呼ぶ。

 ゲストOS側からの視点では、その実行環境が仮想マシンであるということを意識する必要性はない。ただ普通のx86コンピュータがそこにあるように見える。このため一般的に流通しているx86系のOSを、そのまま何の改変を加えることなく仮想マシンにインストールし、実行することが可能である。このように、ゲスト OS を改変することなくそのまま動作させることができるような仮想化のことを「完全仮想化」 (Full Virtualization) と呼んでいる。一方で、ゲスト OS 側のカーネルにも修正を施し、より効率性の良い、しかし依存性が発生する仮想化の実現方法を「擬似仮想化」 (Paravirtualization) と呼んでいる。VMware ESXも擬似仮想化機能を提供しているが、これについてはまた別途機会を設けて解説したい。

 同一物理マシン上に同居している仮想マシン上で動作させるゲストOSは必ずしも統一する必要はない。例えばゲストOSとしてWindows Server 2003を動作させる仮想マシン、Red Hat Enterprise Linuxを動作させる仮想マシン、Windows NT 4を動作させる仮想マシンなどを単一のVMware ESX上に混在配置しても問題はない。

 個々の仮想マシンは個別に仮想NICを持ち、IPアドレス、MACアドレスを保有しており、それらはそのまま外部のネットワークと通信を行う。このため仮想マシンのネットワークサービスは完全に透過的に取り扱うことができ、物理マシンを利用していたときと全く同様の環境を実現することができる。

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