連載
» 2008年10月16日 00時00分 公開

お茶でも飲みながら会計入門(1):連結決算って何を連結しているの?

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど。すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。

[吉田延史,日本公認会計士協会準会員]

今回のテーマ:連結ベース

 新聞や雑誌で連結ベースという単語をよく目にします。この連結ベースとは一体何なのでしょうか。ここでは、連結ベースの意味するところ、および、1社ベースでの記載ではどんな不都合が生じるかについて見ていきます。

 連結ベースとは、「自社」と「自社の支配・影響が及ぶ会社など」全体(以下自社グループと呼ぶ)の金額のことをいいます。しかし、自社グループ各社の金額を単純に合算すれば連結ベースの金額となるかというとそうではありません。実際には、各社の決算書を入手し、調整を行ったうえで連結ベースの金額を確定させます。なぜ調整が必要なのでしょうか。

【1】単純合算では10億円の利益でも、連結ベースでは利益0円となる例

 例えば、親会社A社が90億円を投じて完成させたソフトウェアを、子会社B社に100億円で売るとします。契約の成立、ソフトウェアの引き渡しなどいくつかの要件を満たすことで、A社は売り上げを計上できます。売り上げに要した対価は90億円なので、A社側では利益が10億円計上されます。一方、B社ではソフトウェアを翌期に外部へ販売することとし、同社の商品として資産計上します。B社では売り上げも費用も発生せず、利益は0円となります。

 これを単純合算すると連結ベースで10億円の利益となりますが、グループ外に売って利益を得たわけではないので、自社グループとしてそれだけの成績をあげていないのは明らかです。

(単位:億円)
 
売上高
売上原価
利益
親会社A社
100
90
10
子会社B社
0
0
0
単純合算
100
90
10

【2】単純合算 => 連結ベースへの調整

 上記のような問題が発生しないように、連結ベースの金額の算定上「自社グループ間取引はなかったもの」とする調整を行わなければなりません。例えば、以下のような方法があります。

“売上高”と“売上原価”の相殺、商品に付加した利益の消去

 上述の例を再度見てみます。単純合算では利益10億円であったとしても、調整過程において、商品に付加した利益の消去を行うため、付加した利益10億円はすべて消去されます。結果、利益は0円となり、自社グループとしての成績がきちんと反映されるようになりました。

(単位:億円)
  
売上高
売上原価
利益
親会社A社
100
90
10
子会社B社
0
0
0
単純合算
100
90
10
調整
△100
△90
△10
連結ベース
0
0
0

【3】 1社ベースの記載ではなぜいけないのか

 話を元に戻しましょう。新聞・雑誌で1社ベースの記載があまりされない理由は主に以下の2つです。

(1)1社ベースの金額では自社グループ間の売買も利益に含まれてしまう

 先ほどの例でも明らかですが、1社ベースの金額では10億円の利益を出せてしまいます。いいなりの子会社に売っただけのものを経営成績として含めてしまう点で1社ベースの金額記載では問題が残ってしまうといえます。

(2)同業他社との比較上問題が生じる

 企業によって経営形態はさまざまです。メーカーを例に挙げると、1社だけで製造・販売・サポートまでを行っている企業もあれば、製造は親会社A社が行い、販売は子会社B社、サポートは子会社C社といった形で、事業ごとに会社を分けて経営する企業もあります。こういった状況だと、1社ベースの記載ではどちらの企業価値が高いかを比較することはできません。その点で、連結ベースの記載の方が優れているといえます。

【4】 連結ベースが及ぼすシステム構築への影響

 連結ベースという言葉の意味および、それが多用される理由を見てきました。最後に、システム構築に対する影響を見ておきましょう。

 グループ間取引を、「なかったことにする」ためには、その金額が明確になっている必要があります。親子間はもちろんですが、子会社間での取引においても、相手先別明細で消去対象となる金額が把握できるようになっていなければなりません。

 さらに、企業グループの全体像を把握する必要があります。企業は、取引が起きないところで(連結の数字を作るという点において)明細を必要としません。【3】(2)のメーカーの例では、サポート会社が直接エンドユーザーとの間でお金のやりとりをしているならば、サポート会社から販売会社への売り上げは基本的に立たないはずです。企業に対する理解を深めれば、システム構築において、余計な部分に工数を割かずにすむかもしれません。企業によって置かれている状況や考え方はさまざまですから、それに沿って考えるのがよいと思います。

筆者紹介

吉田延史(よしだのぶふみ)

京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。

イラスト:Ayumi



「お茶でも飲みながら会計入門」バックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。