青色、白色、どっちがお得? 確定申告の選択肢フリーエンジニアの「知れば得する」確定申告講座(2)(2/2 ページ)

» 2009年02月10日 00時00分 公開
[森嶋卓也@IT]
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青色申告のデメリット

 一方、青色申告にすることで発生するデメリットもある。

 まず「記帳をする」という手間が増えることだ。白色であれば、いまからドタバタと源泉徴収票や領収書をかき集めて集計すれば確定申告に臨めるが、青色申告者の場合、日ごろの記帳が義務付けられる。

 青色申告は、きちんと帳簿を付けて、正しい税務申告を行っていることが大前提なので、ずさんな経理処理は許されないのだ。

 正直、多くのフリーエンジニアにとって青色申告のメリットは大きい。ただ、プログラミングに集中したい、そんな雑務はやりたくないということであれば、青色になるのをあきらめることだ。ただし、自分の確定申告から出発して、会計知識に触れることで、フリーエンジニアとしての付加価値を高めるチャンスをみすみす失っているという考え方もあるだろう。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)か必要経費か

 これは青色であっても白色であってもできることだが、自宅で仕事をしている場合、自宅の一部を事業用として利用していることになるため、その部分にかかるコストを必要経費にできる。例えば、90平方メートルの自宅のうち仕事部屋が20平方メートルであったとすると、9分の2の家賃や借入金の利息を必要経費として計上できる。無論、専用の事務所を借りた場合などは全額必要経費にできる。

 ただ、「住宅ローンがある場合、事務所にした部分は住宅借入金等特別控除の対象外にされるから、どちらが得かシミュレーションした方がよい」と深作氏はアドバイスする。

 住宅借入金等特別控除の適用を受ける住宅の要件として、「床面積が50平方メートル以上で、かつ、専ら居住の用に供する割合が50%以上」というものがある。また、実際の控除額も居住部分の割合に対応する部分のみであり、事業用の部分は特別控除の対象とならない。

 住宅借入金等特別控除を受けるのか、あるいは住宅のコストの一部を事業用として必要経費とするかは、シミュレーションしたうえで決める必要があるだろう。なお、住宅のコストの一部として必要経費とできるのは、固定資産税の一部、火災保険等の一部、住宅の減価償却費の一部が考えられる。

税理士に頼むかどうか

 最後の悩みどころは、確定申告を自分でやるか、税理士に頼むかだろう。何かあったときの相談先として税理士と付き合っておくのは悪くないことだし、楽に確定申告を乗り越えたいなら、税理士に任せることをお勧めする。費用がかかるが、必要経費ではある。

 フリーエンジニアの収入や費用の構造は、一般的な個人事業主と比べるとかなりシンプルだ。前回「税務署に疑われない『必要経費』の区分」で挙げた注意点をきちんと押さえれば、よほどの事情がない限り自分でできる範囲だろう。

 ということで、一般的なフリーエンジニアであれば、青色申告・白色申告にかかわらず、自分で確定申告をすることをお勧めする。

 次回、最終回では、法人化のメリットとデメリットについて解説しよう。

消費税――もう1つの確定申告

 フリーエンジニアが確定申告しなければならないのは、所得税に限らない。一定の条件を満たすと、「消費税の確定申告」を行う必要が生じる。納付期限は3月31日である。

 法人は別にして、個人事業主(白色でも青色でも)が消費税の納税義務者になるのは、2年前(今回であれば2006年)の課税売上高、つまり「消費税を預かる売上高」が1000万円を超えている場合だ。「消費税を預かる売上高」が何かについては消費税法が規定しているが、ほとんどのフリーエンジニアの売り上げは「国内での役務提供」になるだろうから、2年前の収入が1000万円を超えていたら、今回は消費税の納税義務者になると考えた方がいい。

 「いや自分は消費税を預かっていない、100万円の仕事はピッタリ100万円で請求し、105万円とはしていない」と勘違いをしてはいけない。「100万円」と請求した場合は、消費税込みでもらっている計算になるのだ。つまり売り上げ(収入)は「95万2381円」で、消費税として4万7619円を預かっている形になる。消費税の確定申告では、こうして納税額を計算し、確定申告しなければならない。内税方式でやっていて、突然消費税を納めなければならないことに気付いてビックリしないようにしたい(だから基本的に対象者は外税方式にする方が賢明だ)。なお、外税で請求書を切ると、「あなたは本当に消費税の納税義務者なのか証明してくれ」といってくるところもある。

 ちょっと不公平な気もするが、2006年の売上高が1000万円を超えていると、2008年の売上高が500万円であっても消費税の納税義務者になる(なお、2年後の2010年には免税事業者となる)。一方、2007年以降にフリーになり、2008年の売上高が1億円であっても、消費税の免税事業者になる(なお、2年後の2010年には納税義務者となる)。

 消費税の確定申告は「売上(収入)にかかわる消費税」から「支払(経費)にかかわる消費税」を差し引く形で納税か還付かを申告する。フリーエンジニアの場合、よほどの投資をしていない限り経費にかかわる消費税の方が少ないだろうから、こちらは還付ではなく納付になる可能性が高い。

 ところでフリーエンジニアの場合、売り上げについて預かる消費税に比べて、必要経費で支払う消費税がかなり少額であることが多いだろう(例外は下請けとして同業者に発注しているフリーエンジニアで、その外注費には消費税を同時に支払うため、支払う消費税は多いだろう)。

 こんなときは、簡易課税方式をお勧めする。これは2年前の課税売上高が5000万円以下の場合、実際に支払った消費税は少なくても、売り上げにかかわる消費税の50%の消費税の支払いがあったと見なされて(サービス業のみなし仕入れ率は50%)、確定申告の際に売り上げで預かった消費税から差し引くことができるという、極めて有利な制度である。



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