脳科学で解明:運動は記憶力と創造力に効果あり特集:運動で変わるシゴトとカラダ(3)(2/2 ページ)

» 2009年05月27日 00時00分 公開
[荒井亜子@IT自分戦略研究所]
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運動が記憶にもたらす効果

 内田氏はセロトニンに続きもう1つ、運動によって脳内物質「IGF-1」(インスリン様成長因子)が分泌される点に言及した。「IGF-1は、BDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進し、うつ状態の改善に関与するといわれています」(内田氏)。BDNFは、因子とよばれるタンパク質群で、ニューロンの回路を構築し、成長を促すことで、脳の記憶と学習機能に重要な役割を果たす。運動によって記憶をつかさどる海馬にBDNFが増え、記憶力や学習効率が上がるというわけだ。また、運動している間に、BDNFが脳内のIGF-1の摂取量を増やし、そのIGF-1はニューロンを活性化して、セロトニンやグルタミン酸をさかんに作らせる(*2)。それによって、うつ状態も改善する効果が表れる。

 このように最近の脳科学では、習慣的な運動が、体を鍛えられたり体力が付いたりという身体的な改善だけでなく、脳に対する直接的な改善効果をもたらすことが、脳内物質レベルでも分かってきている。

(*2)参考:『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ・レイティ、エリック・ヘイガーマン著)


体を鍛えれば筋骨格系の痛みを緩和できる

 某メーカー系システム開発会社に勤めるSEの松崎弘嗣氏は、社会人になってから健康のためにジムに通い始めた。平日週3回、1回1時間程度トレーニングを続けている。トレーニングを開始して2カ月が過ぎたあたりから「肩や腰の痛みがなくなった」という。

 松崎氏が行っているのは、機械を使った上半身の筋力トレーニング。ラットプルダウン(*3)では主に背中、バーチカルチェスト(*4)では主に胸(上腕含む)、アブドミナル(*5)では主に腹部を鍛えている。

(*3)広背筋を引き下げる機械

(*4)大胸筋、三角筋など胸から肩を鍛える機械

(*5)腹筋を鍛える機械

参考:各務原市のWebサイト


 パーソナルトレーナーの肥塚氏も、「肩こりや腰痛には筋力トレーニングが有効」と述べる。実際、肥塚氏も痛めた腰を筋力トレーニングで治療した。

 学生時代サッカー部に所属していた肥塚氏は、高校2年のとき腰椎分離症にかかり、一時は医師からサッカーを断念するようにいわれたという。だが、別の医師のアドバイスで筋肉強化をし、腰椎分離症を克服した。腰が完治したわけでなかったが、高校3年で選手としてインターハイに出場し、大学までサッカーを続けた。現在もボディビルダーとして大会に出場している。「筋肉で腰を周りから保護しているから大丈夫」(肥塚氏)なのだそうだ。

 肩こりや腰痛は、体を鍛えることで緩和できるのである。

今週5日間、毎日更新

 @IT自分戦略研究所の5月のテーマは「運動」。特集:「運動で変わるシゴトとカラダ」は、5月25〜29日まで、毎日更新でお届け。ラインアップは次のとおり。


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