連載
» 2009年09月08日 00時00分 公開

エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門(14):選ばれるエンジニアになるためのブランド力を養う (1/2)

本連載は、さまざまなキャリア理論を紹介する。何のため? もちろんあなたのエンジニア人生を豊かにするために。キャリア理論には、現在のところすべての理論を統一するような大統一理論は存在しない。あなたに適した、納得できる理論を適用して、人生を設計してみようではないか。

[松尾順,シャープマインド]

 今回は、マーケティングにおける「ブランド論」という視点でのキャリアづくり、すなわち「個人ブランド」(パーソナルブランド)の作り方について、山本直人氏の理論をご紹介します。

 山本氏は慶應義塾大学卒業後、博報堂に入社。コピーライター、研究開発、ブランドコンサルティング、そして人事・人材開発と、多様な経験を積まれた方です。現在は独立され、マーケティングサービス、人材育成関連サービス分野で活躍されています。

ブランド論とは?

 「ブランド」と聞くと、ルイ・ヴィトンやシャネルといった有名輸入ブランドを連想する方が多いと思います。しかし、マーケティングの枠組みで語られるブランドは、商品や企業だけでなく、地域やイベント、さらに個人に対しても適用される概念です。

 山本氏は、ブランド論とは、「他者からどのように認知されるべきか」を考えることだと述べています。ですから、「人が認知しているあらゆる物事」が、ブランド論の対象になり得るということになるわけです。なお、「人が認知している」という意味を簡単に説明すれば、ある商品なり、企業なり、個人なりの名前を知っていること、また、どんな特徴を持っているか理解していること、また好意や安心感、信頼など、特定の感情に結び付くといったことです。

 さて、ブランドを作り上げていく「プロセス=ブランド化」をコントロールすることを「ブランドマネジメント」と呼びます。では、ブランドはどのように作られるのでしょうか。それは、人の経験や情報を通じてです。例えば、ある商品を購入した、使用した、ほかの使用者を見たといった経験、また、その商品の広告を見た、使用者の評判を聞いた、店員に聞いた、などの情報を通じて、その商品に対する一定の認知が形成されます。

 そして、こうした経験や情報を基に、「良さそうだから(引き続き)購入してみよう」とか、「友達に紹介しよう」といった判断がなされます。大事なのは、「購入」や「紹介」といった未来のポジティブな行動に結び付くことであり、これこそがブランドづくりの目的といえるでしょう。つまり、過去の記憶に基づき、「これを買ったらうまくいくだろうな」という未来における「期待感」を醸成すること、山本氏は「未来記憶」と呼んでいますが、ブランドマネジメントとは、「未来記憶のコントロールをすること」なのです。

個人ブランドにも適用可能

 ブランドマネジメントの考え方は、前述したように個人にも当てはめることができます。山本氏によれば、ブランド化に成功している個人は、「名前」だけで仕事を任せてもらえるような状態のことです。要するに、「指名」で仕事が来るということですね。

 さて、こうした個人に対するブランド、端的にいえば、「あの人なら大丈夫だから仕事を頼もう」という「未来記憶」は、以前、その人に仕事を発注した(そしてうまくいった)、一緒に働いた、食事した、といったこれまでの経験、またその人についての他者の評判や紹介、あるいはその人が書いたブログなどの情報を通じて形成されます。その結果、「仕事を依頼しよう」というポジティブな判断につながるわけです。もちろん、ブランド化に失敗すれば、「あの人に頼むとうまくいかなさそうだ(だから発注しない)」というネガティブな判断につながる場合もありますね。

  ですから、商品もそうですが、個人の場合も、「好ましい記憶をどうやって他者に残してもらうか」が、ブランドマネジメントの基本になります。より具体的にいえば、「仕事相手から信頼してもらうこと」が、いい仕事を通じたキャリアづくりにおいて実現すべき最も重要な課題だといえますが、これは「良好な認知と記憶を築くこと」にほかなりません。

あなたが選ばれる真の理由を知っていますか?

 企業の社員、また独立されている方も同様ですが、なぜあなたに特定の仕事が任されているのか、その「真の理由」を考えたことがありますか? ほかの人ではなく、あなたに仕事が回ってくるということは、あなたがその仕事の依頼先として選ばれているということですよね。

 現在あなたが選ばれている理由が、「(誰でもいいのだけど)ほかに頼める人がいないから……」といった消極的なものだとしたら心配です。将来、ほかに頼める人が登場したら、あなたに仕事が回ってこなくなるかもしれません。あるいは「発注金額が安いから」という理由も、もっと安い見積もりを出す人が現れたらそちらに仕事が行ってしまいますので、脆弱な理由だといえます。

 しかし、ブランド化に成功すれば、「あなたにこそお願いしたい」と指名で仕事が来ます。この場合、多少値段が高くても、あるいは、ライバルが現れてもそう簡単に仕事が取られることはありません。だからこそ、個人レベルでもブランド化を目指す意義があるわけです。そこで、まずあなたが仕事の依頼先として選ばれている真の理由を知る必要があります。具体的には、上司なり、クライアントなりに、選択理由をヒアリングするのです。向こうから積極的にあなたに仕事を依頼する理由、あるいは依頼しない理由や不満点を教えてくれることはあまりありません。もし不満があった場合、黙って他者に切り替えられてしまう可能性が多いでしょう(特に独立されている方の場合)。面と向かって本音はなかなかいってくれないものなのです。従って、できるだけリラックスした環境(食事に誘うといったこと)で、いろんなことを話題にしながらヒアリングし、本音をうまく引き出すことを山本氏は勧めています。

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