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» 2010年02月02日 10時00分 公開

安藤幸央のランダウン(50):クラウド活用「雲活」のために押さえるべき39のポイント

「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)

[安藤幸央(yukio-andoh@exa-corp.co.jp),@IT]

「雲活」をするべきか否か

 「クラウド・コンピューティング」の概念や言葉がIT業界では一般化してきました。国内外のさまざまなIT企業がクラウド関連へ投資し始めているようです。あまりクラウドとは関係なさそうなものまでもが、「クラウド○○〜」と流行語的に使われています。

 やり手のビジネスマンも、さまざまなクラウドサービスを活用しないと生き残れないようです。クラウドは一時のバズワード(流行語)のようにとらえられがちですが、クラウド・コンピューティングの波は確実に押し寄せてきています。そこで今回は、就活・婚活になぞらえて「雲活」を指南してみましょう。

 クラウドの活用のしがいのあるサービスとして、以下のようなものがあります。

「雲活」しがいのある、8つのサービス例
  1. 規模の読めない携帯電話向けのサービス携帯電話向けのサービス
  2. 新規に開発を始めるWebアプリケーション
  3. 既存のデスクトップツールを拡張するようなもの(オンラインサービス系)
  4. 多量のデータを扱う計算や、大量のバッチ作業など
  5. 時期や時間によって、大きく利用率が変化するもの
  6. マシンを管理する人材も、初期投資費用もできるだけ押さえたい、ベンチャー系のサービスベンチャー系のサービス
  7. イベントや告知のタイミングで、一気にデータ配布するような場合
  8. プロトタイプ作成時の迅速なテスト環境として作成時の迅速なテスト環境として

「雲活」の利点と問題点

 上記のようなサービスで使われる場合、クラウドの特徴が利点として働く場合と、欠点として働く場合があります。さまざまな系統のクラウドサービスがありますが、主に利点として取り挙げられるのは、以下の項目です。

「雲活」の11の利点
  1. 素早く開発を始めたり、サービスを開始できる
  2. さまざまな新技術を、短期間だけ試してみる環境として手軽に使える
  3. 初期投資を極力少なく、キャパシティの予想がつきにくいスケーラブルなサービスを開始できる
  4. 開発者やサービス提供者側が、サーバのメンテナンスとは無縁になる
  5. 急に規模を拡大する必要が生じた場合、費用以外は比較的容易に増やすことができる
  6. 専用サーバのレンタルと比べると、安価に必要な分だけ借りることができる(または、規模によっては無料で使える)
  7. サービス開始時、開発時のサーバセットアップ作業の面倒さがない
  8. Web上のさまざまなサービスを組み合わせて利用できる
  9. 必要に応じて資源を増減でき、計画的に環境を構築する作業が少なくてすむ
  10. サービス提供者に、機器運用・管理・バックアップの手間が掛からない
  11. 多くの一般的な共通のソフトウェアの組み合わせによって構成されている

 その一方、既存のアプローチでは回避しづらい、クラウドならではの問題点もあります。

クラウドならではの、11の問題点
  1. ダウンタイムの対応が困難。ステータスダッシュボードなどと併用しなければいけない
  2. 24時間365日、100%動き続けなければならない重要なアプリケーションの場合は、まだまだ運用が難しい
  3. OS環境やソフトウェア環境など、自由なものを選ぶことができず、サービス側の環境に合わせなければいけない
  4. 細かいチューニングや、独自のカスタマイズなどが許されてない場合が多いチューニングや、独自のカスタマイズなどが許されてない場合が多い
  5. 開発者には、すべてをネットワーク越しに行わなければならない即時性のなさが感じられる
  6. 従来のWebアプリケーション開発者だと、数千台、数万台といった巨大なサーバリソースに慣れていないことが多い
  7. クラウド環境における各種ロギングに関する適切なソリューションがないロギングに関する適切なソリューションがない
  8. 旧来のデータセンタで運用しているアプリケーションの移行(移植、マイグレーション)が難しい
  9. 海外のサービスの場合、クレジットカードでしか支払いできない場合もある
  10. 自由にスケール可能な半面、年間の予算計画を立てにくい
  11. ある1つのクラウドプラットフォームに依存してしまうと、ほかのサービスに移行しづらい

貴社は、クラウドプラットフォームの提供側になれますか?

 また、国内外でさまざまなクラウドプラットフォームを提供する企業があり、サービスが立ち上がってきていますが、誰もが成功への切符を手に入れているわけではありません。

 クラウドプラットフォームそのものの提供者となるためには、以下のような条件が求められます。

クラウドプラットフォーム提供企業になるための、7つの条件
  1. クラウドは薄利多売でもうける構造であるため、大規模で継続したサービスを提供可能な資金がある
  2. 既存のインフラを有効に使える
  3. いままでの技術を、うまく流用できる
  4. 大量のハードウェアを安価に安定して入手できる
  5. もともと、サービスとしてのプラットフォームを持っている
  6. 現在主流のサービスで信頼性が広まっている
  7. 現在多くの顧客を持っている

 すべてではありませんが、このうちいくつかの点が当てはまらないと、継続的なサービス提供は難しいでしょう。

「雲活」において開発者がするべき、2つのこと

 書籍やCD/DVDなど、さまざまな商品のオンライン販売で知られ、クラウドプラットフォームを提供している「Amazon.com」は、Webページのレスポンスが0.1秒遅くなると、1%売り上げが減少するそうです。

 1%といえば、わずかに思えるかもしれませんが、数百億ドルの販売額のうち1%と考えると、莫大な損失です。検索エンジンのGoogleも0.5秒遅くなると、検索数が20%減少するそうです。これは、結果的に広告収入が減ることを意味しています。

 これを聞いて、さまざまなWebを活用したサービスを快適に提供する場合、サーバの性能やチューニングに目を向けがちです。

【1】Webブラウザ/クライアントアプリの反応速度を上げる

 ところが、「遅い」という減少のほとんどは、ユーザーが使っているPC端末のWebブラウザが遅いことによるものです。サービスの種類にもよりますが、遅さの8割程度はWebブラウザ/クライアントアプリケーション側の遅さによるものといえます(HTMLCSSJavaScript、画像などの扱い方にもよる)。

 クラウド側のサーバ環境を細かく調整することも重要ですが、Webブラウザ/クライアントアプリケーション側のチューニングを念入りにする方が、目で見える効果が得られることでしょう。Google Chromeなど、最近はWebブラウザ自体の高速化も追い風となっています。

 1度、FirefoxのプラグインFirebugYSlowや、Google Chrome、Safariなどの機能を使って計測してみることをお勧めします。これらについては、下記記事を参考にしてください。

WebデザイナのためのHTMLチューニング入門

WebデザイナのためのHTMLチューニング入門
Webサイトを見た人の印象を良くするのか悪くするのかには“速度”が大きくかかわってきます。FirefoxのプラグインYSlowで測る7つの計測ポイントから“速い” HTMLの書き方を学びましょう
      「デザインハック」コーナー

Google Chromeの隠し機能を使いこなしていますか?

Google Chromeの隠し機能を使いこなしていますか?
本音のWebサービスガイド(3) 「起動や読み込みがすごく速いらしい!」と評判のGoogle Chromeを使ってみました。便利なアプリのショートカットや隠し機能なども紹介
      デザインハックリッチクライアント 2008/10/21

Webアプリ開発環境としてのSafariを知ってますか?

Webアプリ開発環境としてのSafariを知ってますか?
安藤幸央のランダウン(40) Safariは単なるWebブラウザではなく、Webアプリケーション開発に役立つツールとしての側面を持っています。その機能をすべて紹介しましょう
      「Java Solution」フォーラム 2008/5/12


【2】雲の中身を見せて「安心感」を与える

 また、単に「速い」ということだけではなく、「速く動いているように見える」ことも重要です。違和感やストレスを感じさせない作りのために、データの移動(転送)効率を考えましょう。

 クラウド自身データやアプリケーションがどこに設置されているのか分からないものです。ユーザーは、実体がどこにあるか分からないものを操作することになります。そこで「安心感」を見せてあげることが大切です。それは、処理の流れが見えたり、具体的に把握できたりといった要素を追加するということです。

雨ニモマケズ、雲ニモマケズ

 クラウドを活用する日々は、晴れの日もあれば、曇りの日も、雨の日もあるかもしれません。クラウドの特徴を最大限に把握したうえで、よいところをさらに伸ばし「雲活」していってください。

 次回は、2010年3月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。

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プロフィール

安藤幸央(あんどう ゆきお)

安藤幸央

1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。

ホームページ
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所属団体
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
The Java3D API仕様」(監修、アスキー)


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