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» 2010年06月16日 10時00分 公開

安藤幸央のランダウン(52):グーグルは、○○おもいッきり、テレビ

「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)

[安藤幸央(yukio-andoh@exa-corp.co.jp),@IT]

Google I/O 2010開催!

図1 会場Moscone Center(モスコーンセンター)の入り口 図1 会場Moscone Center(モスコーンセンター)の入り口(特に目立つ造作はなく、Googleマップの位置を特定する巨大なピンが入り口正面に存在感を放っていた。Google好きなら誰もがニヤッとしたことだろう)

 2010年5月19・20日の2日間、米国サンフランシスコのMoscone Centerで、開発者向けカンファレンス「Google I/O」が開催されました。Google I/Oは2008年以来、毎年5月に開催され、今年で3回目です。I/Oは「Innovation in the Open」の頭文字を取ったものの意味と、「Input/Output」の意味、「O」(零)と「1」(一)のビットの意味を持っているそうです。

 先日、日本では9月28日に「Google Developer Day 2010 Japan」というイベントが開催されると発表されました。Google I/Oの内容を引き継ぎ、さらに日本ならではの内容が充実すると期待されています。

 「JavaOne」のように現在のところ、Google I/Oと呼ばれるイベントは、サンフランシスコで開催されるもののみです。今回のGoogle I/Oの参加チケットは、あっという間に売り切れ、Moscone Centerの新しい棟の建物に約5000人もの開発者を集めた巨大なイベントになりました。

 会場の中は英語だけではなく、さまざまな言葉が飛び交っていました。中でも、10歳くらいの少年が父親に連れてこられていたのが印象的でした。この年齢からグーグルのテクノロジに親しんでいるとは、将来が楽しみです。

 各セッションのほかにも会場2Fに設置されたカテゴリごとに分かれた企業ブースが簡素ながらも充実していました。

図2 展示会場風景 図2 展示会場風景

グーグルを巡るエコシステムの確立

 ここでいう「エコシステム」は、節電や省資源のことではなく、“開発者コミュニティのエコシステム”のことです。グーグルは便利で使いやすいAPIを提供し、開発者に情報を提供していくことで、グーグル社内の開発者だけではなく、世界中の開発者やサービス提供者がさまざまな仕組みを構築していきます。一見ビジネスやお金とは無縁の世界に見えますが、「エコシステムが確立されれば、巡り巡って結局はグーグルの利益にもつながる」という壮大なループを描いているのです。

 Google I/Oの中にはスーツ姿の人は、まったくといっていいほどおらず、開発者が歓迎されているという雰囲気が会場全体に行き渡っていました。

 例えば、事前に知らされていましたが、Android 2.2(コードネームFroyo=フローズンヨーグルト)の発表に伴い、海外からの参加者には会場で500ドル以上するAndroid携帯電話「Nexus One」が無料で配られました。米国内のユーザーには、米モトローラの端末「Droid」が全員に事前に送付されました。

 これは、「できるだけ多くの開発者にAndroid携帯電話に親しんでもらい、素晴らしいAndroidアプリを作ってもらいたい」というグーグルの想いが伝わってくるようでした。このような開発者向けイベントでは、よくロゴ入りTシャツが配られたりします。Google I/Oでは、もうTシャツが配られることくらいは当たり前で、いかにTシャツのデザインが優れているかに参加者の議論が移っていました。

 2日目の朝のキーノートでは、Android携帯電話の中でも超最新機種の「HTC EVO」が全員に無料で配られました。さらに、Sprintの1カ月の米国内の通話利用権も込みといった、大盤振る舞いでした。

 米国での有料のカンファレンスでは普通かもしれませんが、朝食や昼食、夜のパーティ、そして、セッション中の飲み物やアイスクリーム、スナック菓子など、常に会場中が食事にあふれている環境でした。

 食事のテーブルには、グーグルの各テクノロジのキーワードが書かれており、食べながらも情報交換したり、同じような仕事をしている人と知り合ったり、その場ならではの配慮がいくつもなされていました。

図3 パーティ会場で振る舞われたカップケーキ 図3 パーティ会場で振る舞われたカップケーキ(Android 1.5のコードネームがCupcakeだから?)

 Googel I/Oの参加費用は、早期割引で350ドル、定価で400ドルです。無料ではないですが、携帯端末をもらえたり、食事も振るまわれたことからも、価格以上の価値があったことは確かでしょう。

 Google I/Oの中でも人気のセッションは、技術的興味だけではなく、「確実にマネタイズできるサービスを作ることのできる技術なのか」「その技術を身に付けることによって、確実に仕事にできるのか」といった観点で人気の度合いが決まっていたようです。

 特に、Android関連のセッションは、すべて大人気で、一番大きな会場(部屋)だったにもかかわらず、常に入場制限されるほどでした。参加者の間では「Android部屋の席を離れたら“負け”だ!」と、ささやかれていたくらいです。

グーグルが進める“新しいJava”の復権

 いっときの目新しさや先進性こそ薄れているものの、依然、世界中のIT業界の中で戦力として求められているのは、Javaのできる人材です。IT関係の求人を見ても、Javaは健闘しており、フレームワークでもJava EEJ2EE)、JSPの人気は根強いものがあります。それには、Google App EngineやAndroidといったプラットフォームがJavaに対応していることも一因としてあるのかもしれません。

 そんな中、今回のGoogle I/Oの目玉の1つとして、「Google App Engine for Business」が発表され、エンタープライズ系Java開発者のための、より強固な環境が用意されました。

  • 有料での開発者サポート
  • 動作保証を行うService Level Agreement(SLA)。99.9%のuptimeを保証
  • 月額定額制の利用料金体系
  • SSL対応
  • クラウド環境でのSQLデータベースの利用
  • アプリケーションを管理するコンソールの提供
図4 Google App Engine for Businessのロードマップ(今後の予定) 図4 Google App Engine for Businessのロードマップ(今後の予定)

 SLAの導入でエンタープライズ系のビジネスでも比較的安心して使えるようになったことと、既存の多くのエンタープライズ系Java開発者を取り込むことで、App Engine自体も大きな前進が得られるのだと思われます。

グーグルによる「Webテレビ時代」の到来?

 2日目のキーノートスピーチの発表の目玉の1つに「Google TV」がありました。グーグルは、いままでもYouTubeをテレビサイズで見やすくするなど、テレビへの歩み寄りはありましたが、今回は、さらに密接に関係してきたものです。

 Google TV専用のSet-Top-Box(テレビに接続する専用機器)を用い、「世の中にあるすべての動画を“検索して”観る」という壮大なコンセプトが描かれています。

 キーノートのデモでは、会場にあふれたBluetoothデバイスの混線?で若干うまく動かない場面も見られましたが、Web広告で成功を納めているグーグルが、「テレビ広告の世界にも手を広げる」という意思がまざまざと感じられた発表でした。

 未来のテレビはWeb動画も取り込み、すべての動画は検索キーワードからたどり着くようになるのかもしれません。Webブラウザの使い方を振り返ってみると、旧来のURLをブックマークしていた時代を経て、「検索で、ほとんどすべてのWebページにたどり着く」という使い方が普通になりました。これと同じことがテレビでも起こるのではないでしょうか?

 グーグルとソニー、インテル、ロジテックの連携により、ケーブルテレビの普及している米国では、じわじわとGoogle TVの勢力が広がっていくことでしょう。日本での展開は未定ですが、YouTubeを大画面で、Google TVを利用したい、楽しみたいといった新しいテレビ視聴層は確実に増えてくるものと思われます。

おもいッきり○○して、勢いに乗るグーグル

 グーグルの社風を強く感じたのは、1日目の夜に企画されたパーティでした。巨大なキーノートスピーチ会場に並べられたイスがすべて撤去され、ソファやたくさんの食事、飲み物が振る舞われました。

図5 パーティ会場 図5 パーティ会場

 会場内には、次の週末に開催される予定のオライリーのイベント「MAKE:」から、展示参加者の数組が、自慢の展示物を引っさげて、会場の注目を集めていました。

 YouTubeのプレイリストから選曲された音楽が流れ、DJのプレイとともに、深夜までお祭り騒ぎが続きました。

 「おもいっきり仕事をし、おもいっきり遊ぶ」というグーグルらしさを、多くの開発者たちが、実感したひとときでした。何よりも「勢い」と「開発者を大切にする」心配りが感じられたカンファレンスでした。


 次回記事は、2010年7月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。

プロフィール

安藤幸央(あんどう ゆきお)

安藤幸央

1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。

ホームページ
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所属団体
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
The Java3D API仕様」(監修、アスキー)


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