「韓ドロイド」に見る1年後のAndroidアプリビジネスものになるモノ、ならないモノ(44)(1/2 ページ)

1千万台以上のAndroid端末が日本にあふれる日も遠くないと予想されている一方で、アプリビジネスとなるとまだ寂しい限り。Androidアプリ市場離陸の鍵を探るヒントを、韓国へのアプリ取次ビジネスを展開している「韓ドロイド」に見た。

» 2011年02月10日 10時00分 公開
[山崎潤一郎@IT]
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Android端末が日本中にあふれる日

 NTTドコモの山田隆持社長が「来期はスマートフォンを600万台売る」と豪語したそうだ。BlackberryやWindows Phoneはあえて無視して(オイオイ)、スマートフォン=Android端末と読み替えると、来年のいまごろには、他社の端末やこれまでの分を加えると軽く1千万台以上のAndroid端末が日本中にあふれる計算になる。すごい勢いだ。

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ドコモ、スマートフォン通期目標250万台に 来期は600万台(ITmedia News)
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 「そんなにうまくいくのかね」という声も聞こえてきそうだが、「ドコモが売る、というと必ず売るんだよ」と自信ありげに言うのは、九州地区で十数店のドコモショップを展開する、ある地場企業の経営者。その幹部がいうには、「スマートフォンに2〜3万円の端末インセンティブを付けて”売れ”の大号令がかかっている」そうだ。

 大手量販店の競争が激しい首都圏のユーザーには想像が付きにくいと思うが、「地方では、ショップカウンターでの対面販売で勧められた機種を素直に買っていく人が多い。販売員がスマートフォンを勧めれば確実に売れるし、インセンティブもタップリ入るからね。はははっ……」(地場企業経営者)というわけで、この人の話を聞いているうちに、山田社長の600万台発言はハッタリでも何でもなく、実現可能な目標に思えてくる。

 PCライクでトラフィックを食うスマートフォンが売れると、ドコモにとってサポートやインフラの保守管理が大変だろう、という思いがしないでもない。けれど「スマートフォンなら、ユーザー各人の利用料をパケット定額の上限に張り付かせることができる」(ドコモ関係者)という思惑がある。

 なるほど確かに、スマートフォンを持った途端に、アプリやらネットやらの使用時間が増える人は多い。ドコモにとっては、スマートフォンの売上増=増収増益が見込めるわけだ。もともとキャッシュリッチな会社だけに、サポートやインフラなどどうにでもなる、といったところだろう。

まだ寂しい日本のAndroidアプリビジネス

 iPhoneアプリの開発者でもある筆者からすると、「『Android端末1000万台超え時代』を迎えたとき、日本のAndroidのアプリビジネスってどうなっているのだろうか?」という興味が湧いてきた。

「韓ドロイド」を運営するウェード・コムの執行取締役 SI事業部長 曺泰鉉氏 「韓ドロイド」を運営するウェード・コムの執行取締役 SI事業部長 曺泰鉉氏

 現状のAndroidアプリ界隈(かいわい)を見渡すと、とても、アプリ販売だけで成功している開発者はいないように見える。

 例えばアプリ販売サイトの「AndroLib」には、Android Marketの統計がまとめられているが、25万ダウンロード以上の有料アプリはたったの5タイトルという有様(2011年2月2日時点)。100万ダウンロード以上の有料アプリがゴロゴロとあるiPhoneと比較すると寂しい限りだ。

 それだけに、来年のいまごろは、iPhoneアプリのように「個人でン千万円、ン億円を売り上げました」といった開発者が登場することへの大いなる期待を、山田社長の発言に重ね合わせずにはいられない。

 そんな1年後の日本のAndroidアプリビジネスの現状を占う上で、大いに参考になりそうな韓国のマーケット事情を知る機会を得た。

 取材に応じてくれたのは、日本人開発者のAndroidアプリを韓国のナンバーワン携帯電話オペレーター「SKテレコム」が運営するAndroidアプリ販売サイト「T store」などへの取り次ぎを行う「韓ドロイド」の曺泰鉉氏。いわゆるアプリのアグリゲーション・ビジネスといえるものだ。

実はアグリゲーション・ビジネスが鍵を握る?

 なぜ、いま、韓国のAndroidアプリマーケットを知る必要があるのか。

 曺氏は「いまの日本の状況は、1年前の韓国のようだ」という。韓国では、Galaxy Sの大ヒットなどにより、昨年Android端末が売れに売れた。それにつれてアプリビジネスも見事に開花したという。

 例えば、先ほど「AndroLib」の寂しい統計を紹介したが、「T storeではすでに50万ダウンロードを超える有料アプリが誕生している」(曺氏)という。ならば、韓国のいまを知れば、明日の日本のアプリビジネスが分かる、というわけだ。

 以下、そんな韓国の状況を「韓ドロイド」というサービスの紹介と絡めながらお伝えする。

 というのは、自由でオープンなマーケットであるはずのAndroidアプリビジネス(つまり、Android Marketなどを利用すれば開発者が直に販売可能な環境)において、「韓ドロイド」のようなアプリのアグリゲーション・ビジネス(取次サービス)が必要とされる状況が韓国にはあるからだ。それはそのまま、今後の日本のAndroidアプリビジネスに必要な要素(後述のゲームの審査以外)であり、おそらく日本事情も同じような方向に向かうだろうという気がするからだ。

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