連載
» 2011年03月18日 00時00分 公開

クラウドHot Topics(2):AWSはいま、何を考えているか (1/2)

今世紀最大のIT潮流といっても過言ではないと思われる「クラウド」「クラウドコンピューティング」「クラウドサービス」。本連載では、最新の展開を含めて、クラウドをさまざまな側面から分析する。

[三木泉,@IT]

日本は最大のリージョンの1つになる

 3月初めに東京データセンターの運用を開始したAmazon Web Services(AWS)。世界的な拠点展開を進める一方で、そのサービスは急速に多様化し、進化してきている。IaaS、PaaS、SaaSの分類を当てはめるのはもう無意味と思えるほどだ。米アマゾンのAmazon Web Services兼Amazon Infrastructure担当上級副社長 アンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏に、AWSで何を目指しているのかを聞いた。インタビューは3月2日、東京リージョン提供開始の数時間前に行った。東京リージョンについてのインタビュー内容は、ニュース記事で紹介していることもあり、一部割愛している。

―― AWSが日本にデータセンターを設置するという噂は、2年くらい前からあった。実現するのに時間がかかったという認識はあるのか。

 AWSを過去4、5年にわたりフォローしてくれている人は、当社が非常に迅速に、たくさんの結果を出してきたことを知っているはずだ。しかし、一度にできることには限度がある。このリージョンで、想定し得る需要すべてに対応できると確信したうえで、日本データセンターを立ち上げたかった。当社はできる限りのスピードで東京リージョン開設を進めた。その結果が今夜になったということだ。

―― 自前のデータセンターをつくったのか、それともデータセンター施設を提供できるところと組んだのか。

 そうした詳細については公表していない。しかし、当社の考える限りにおいて、需要に応えるに十分な収容能力でスタートできた。そしてデータセンターをさらに追加するべく取り組んでいる。なぜならAWSにとって、日本は最大のリージョンの1つになると考えているからだ。ほかのすべてのリージョンと同じように、(日本でも)ビジネス・ニーズに応じて、データセンターを継続的に増やしていくつもりだ。

―― しかし、リソース利用の大部分が日本のユーザーによって占められるデータセンターは、世界各地から利用されるデータセンターに比べ、リソース利用の山と谷をならすことが難しいのではないか。

 それは米国のリージョン、欧州リージョン、シンガポール・リージョンと、すべてのリージョンについて当てはまることだ。利用率を平準化するには、扱うワークロードの多様性が重要だ。

 例えば米国のリージョンでも、一般企業のほとんど大部分は、平日の業務時間にワークロードを動かす。一方で当社にはNetflixのような顧客がいる。映画の視聴が活発なのは休日や夜間だ。他にも多数のメディア企業がいる。これによりピークをならすことができる。さらに世界中からの人々か顧客として使ってくれる。

 日本にも同じことは当てはまる。もし、日本のビジネスが、当社が望むような規模に育つなら、アプリケーションの多様化により、ピークの平準化は確保できると思う。さらに、当社の顧客には、日本にグローバル顧客やエンドユーザーを持つ多数のグローバル企業がおり、こうした企業は東京リージョンを使って、エンドユーザーに対し、ユーザー体験の向上と低遅延を実現しようとしている。これがさらに、ピークの平準化につながると考えている。

 どんな大企業も何らかのインターネット上のビジネスやアプリケーションを持ち、全世界に顧客がいる。当社のエンタープライズ顧客やグローバル顧客の多くは、AWSのリソースを、当社の提供するすべてのリージョンにわたって使うことにより、ユーザー体験を向上しようとしている。

―― AWSはリージョンによって価格が異なる。(発表されれば)すぐに分かることだが、東京リージョンの価格は世界一高いのか。

 AWSでは、すべてのリージョンで価格が少しずつ異なる。それぞれのリージョンにおけるインフラコストの影響を受ける。当社ではコストに基づく価格付けを戦略としているからだ。日本のインフラはこれまでの他のリージョンに比べて多少高い。だが、今後参入する国のいくつかと比べると、安いともいえる。しかし、実際に価格を見てもらい、他の選択肢、例えば自分でサーバを立てるとか、日本国内のサードパーティ事業者を使う場合と比較すれば、当社の価格が非常に魅力的だと分かるだろう。

―― AWSは過去1年だけをみても、おびただしい数の新サービスや新機能をリリースしている。1年に投入する新サービスの数を目標にするようなことはあるのか。

 サービスの数を目標とすることはない。しかし毎年、どの特定のサービスや機能をリリースするかについては詳細な目標を設定している。当社は「デリバリ」するということに関して非常に積極的な姿勢を、文化として持っている。当社のやるすべてのことは、顧客から始まる。フィードバック・ループを構築して顧客からのフィードバックを吸い上げ、優先順位を設定したり、プロダクトの提供計画を頻繁に見直したりしている。顧客が重要だと当社に教えてくれた機能やサービスをデリバリするということには、非常に固執している。社内では、なにを作り上げるかを非常に明確に定義し、スケジュールを設定し、これに従ってできるだけ早く顧客に届けるということを、非常に厳しくやっている。

 従って、新サービスの絶対数は目標ではない。ただし、近年拡大してきた開発チームが成果を出す時期に入ってきている。過去3、4年に生まれた多数の開発チームから急速なデリバリが見られるようになってきた。

優先付けにはまず「最大多数の最大幸福」

――(顧客本位だというが、)「顧客」はいろいろなことを言う。できるだけ安く、何でも欲しがるのが常だ。どういう要因を基に優先順位を設定するのか。

 それは非常にいい質問だ。リーダーシップ・チームの一番難しい仕事の1つが優先順位の設定だ。なぜなら、現在の当社の活動範囲の広さから考えると、やろうとすれば、文字どおり何十万もやれることはあるからだ。

 第1に、当社では一番多くの顧客が望む新機能や新サービスは何かを考える。もし顧客の4分の3が望むような機能やサービスが判明したら、それを実行するというのは非常に明白で容易な判断だ。

 当社では時々、世界に存在するあらゆるアプリケーションをまとめて考えるということをやっている。そのうち一部のアプリケーションは低遅延や地理的展開で支援できるし、当社のいずれかのサービスで支援できるかもしれない。一部のアプリケーションは当社のサービスの機能や運用パフォーマンスで支援できるかもしれない。こうした形でさまざまなワークロードをグループ化し、現在のサービスで対応できるものと、追加的なサービスによって対応するしかないものを区別する。そのうえで、顧客に対し、もっとも大きな価値を提供できる活動は何かを考える。

 第3の点として、アマゾンにはすべての事業を通じて、顧客の声を非常に注意深く聞くと同時に、顧客のために新しいものを生み出すという方針がある。例えば顧客がある問題を抱えているということを聞いたとする。それがなぜなのかを問い続けると、その顧客が根源的に何を求めているかに行き当たる。例えば、顧客の抱えているある問題については、既存のソリューションがあるが、それが顧客の問題の解決に最適ではないという場合がある。当社では、その顧客のニーズに応えるのに最適なソリューションを考えることができる。その結果、顧客のためにまったく新しいやり方を発明することになるケースもある。

 このように3つのポイントを考慮したうえで、ほとんどの場合、最大数の顧客の直面する問題を解決し、あるいはより多くのワークロードの問題を解決し、AWS上でこうしたワークロードがもっと増えるような活動の優先順位を高く設定している。

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