連載
» 2011年03月24日 00時00分 UPDATE

PCハードウェア強化ラボ:第1回 省電力時代に求められる高効率電源ユニット (1/2)

PCを取り巻く最新ハードウェア動向や製品ガイドなどを解説する新連載開始。第1回は電源ユニット。分かりづらい電源効率と力率について解説。

[打越浩幸,デジタルアドバンテージ]
PCハードウェア強化ラボ ―― ビジネスPCハードウェア・パワーアップ実践ガイド ――
Windows Server Insider

 

「PCハードウェア強化ラボ ―― ビジネスPCハードウェア・パワーアップ実践ガイド ――」のインデックス

連載目次

 今回から始まる連載「PCハードウェア強化ラボ」は、PCを構成する主要パーツや周辺機器などについて、その機能や特徴、最近の動向、最新規格、改良点、選択のポイント、Windows OSにおけるサポート状況などについて解説するコーナーである。PCで利用されるパーツの種類や構成はほぼすでに決まっており、今後もそう大きく変わることはないだろうが、その機能や性能などは日々改良され、機能が強化されている。本連載では、管理者の視点から見た、最新PCハードウェアの動向や新規格などに注目して解説していく予定である。取り上げる話題としては、CPUやメモリ、ディスク、インターフェイス規格(USBやディスプレイ規格など)、周辺機器など、新しいPCシステムを導入するに当たって注意するべき点、注目するべき技術、Windows OS環境における活用方法などを解説する。


 初回となる今回は電源ユニットに注目する。東日本では大地震の影響による大規模な計画停電が実施され、さらに今後も大幅な節電が求められる現在の状況では、効率が高くて無駄が少ない、省電力に貢献する電源ユニットが求められる。電源ユニットなんて地味だし、ほかのPCパーツのように性能や機能のバリエーションは少ないが、それでも注意すべき点がいくつかある。今回は電源ユニットの効率について特に注目して見ていく。

よい電源ユニットとは?

 言うまでもなく、電源ユニットはPCを動かすための源である。電源ユニットが安定した電力を供給して初めて、CPUやメモリ、ディスク、グラフィックス・カードなどの構成パーツが機能を発揮できる。とはいえCPUやグラフィックス・カードなどと違い、ユーザーから見た機能や性能はPCの登場以来ほとんど変わっていない。サイズやコネクタの形状、固定用ネジの位置、ファンの位置などは規格が統一されたため、必要なフォームファクタ(例えばATXかSFXかなど)や要求される定格出力(W数)などが決まれば、どこのメーカーのものでもほぼ同じように利用できるし、取り替えることも可能である。

 ではどこの電源ユニットでもすべて同じ機能や性能かというと、そうではないようだ。例えば500W出力のATXサイズの電源ユニットを価格.comサイトで調べると、原稿執筆時点では100件以上ヒットし(価格未記入品や販売終了品なども含む)、その価格も3370円から1万6770円までと、非常に幅がある。いったい何が違うのか、どこに注意して選択すればよいのか、気になるところだ。

wi-powerunit01.jpg 最近の電源ユニットの例
これは、サイズが販売している「RPSB-700P」という700WのATX電源ユニットの例。市場価格は7000円程度と、700W電源の中では中級クラス。80PLUS Bronz認証の取得、力率改善回路APFC搭載、静音大型ファン、取り外し可能なケーブル、PCI-Expressカード用6+2ピン・コネクタ×4の装備、日本製コンデンサ採用による高信頼性化など、“いまどきの”電源ユニットとしては標準的な仕様の製品である。「80PLUS Bronze」や「APFC」といった単語については、あとで詳しく説明する。

 電源ユニットに求められる機能や性能としてはいろいろなものがあるが、例えば次のような項目が挙げられる。

  • 安定した電力供給能力
  • 高い信頼性(長寿命、低い故障率)
  • 高い効率(少ない損失、80PLUS、ENERGY STARなどの省電力化規格への準拠など)
  • 高い力率
  • 低ノイズ/耐ノイズ性(EMC対策)
  • 静粛性
  • 高い冷却能力
  • 高い安全性(過負荷やショート時の保護機能の充実など)
  • 豊富な電源出力コネクタ
  • 配線の容易性、柔軟性(取り外し可能な電源ケーブルや十分な数の出力コネクタ数など)
  • 低コスト性
  • 長期保証/長期サポート

 電源ユニットを選択する場合は(もしくは、導入しようとしているPCがどのような電源ユニットを持っているかを評価するには)、いろいろな条件を考慮するだろうが、高性能、高信頼性、低騒音などについては特にいうまでもないだろうから、今回は「効率」と「力率」という点に注目してみる。これ以外の項目については、以下の記事を参照していただきたい。

入力された電力をどれだけに有効に利用するかを表す「効率」

 電源ユニットの性能指標の1つとして、「効率」がある。効率とは、入力された電力を、いかに少ない損失で、必要なコンポーネント(CPUやメモリ、ディスク、グラフィックス・カードなど)に届けることができるかを示す指標である(「電力」とその単位「W」については後述する)。

 例えば、PCの各コンポーネントで使用する電力の合計が「200W」だったとする。すると、電源ユニットは入力されたAC電源(100Vの交流電源)から200W分の電力を取り出し、それを各コンポーネントに供給しなければならない。とはいえ、電源ユニット自体もいくらかの電気を消費するので(損失がまったくなしで交流電源から直流電源を作ることは不可能)、いくらか余分に電力を必要とする。次図の電源ユニットでは、交流電源から250W分の電力を得て、200Wの直流を作り出している。この入力された電力と出力された電力の比を電源ユニットの「効率」と呼ぶ。

wi-fig01.gif 効率80%の電源ユニットの例
電源ユニットの効率が80%の場合、各コンポーネントで必要な計200Wの直流電力を得るために、250Wの交流電力を必要とする。250Wと200Wの差の50Wは、電源ユニット自身が消費する。効率がよい電源ユニットほど、少ない損失で直流に変換できる。全負荷領域に渡って効率が80%以上あれば十分性能がよい電源ユニットといえる。なお、電源ユニットが消費した50WもPCのコンポーネントが消費した200Wも、最終的には(ほとんどすべてが)熱になる。200Wは、現在のミドルクラスのデスクトップPCが、軽〜中ぐらいの負荷時に消費する電力の標準的な値といえる。

 この例では250Wの交流入力に対して直流出力は200Wなので、「200÷250=0.8」で効率は80%となる。

「80PLUS」プログラムとは?

 電源ユニットの効率は、システム全体の消費電力を決める重要な項目である。もし効率が70%しかない電源ユニットだとすると、200Wの直流出力を得るためには286Wの交流入力が必要になる(200÷0.7≒286)。先ほどの例と比べると、システム全体では36Wの電力を余分に消費する。最終的にPCコンポーネントが必要とする電力は同じ200Wなのに、システム全体で消費する電力はこのように電源ユニットの効率によって変わるのである。可能であれば、できるだけ効率の高い電源ユニットを使いたい。無駄な電力を使わなくても済むからだ。

 そこで効率のよい電源ユニットの普及/推進を図るために「80PLUS」プログラムが制定された。これは従来からある省エネ推進プログラム、ENERGYSTARに追加された仕様の1つである。電源ユニットの変換効率を向上させ、各コンピュータの電力の利用効率を高めるほか、企業内で使用する電力や、さらには社会全体で無駄なく電力を利用するための推進プログラムである。

 80PLUSに準拠した電源ユニットでは、指定された負荷領域に渡って80%以上の変換効率を実現することが求められる。具体的には次のようになっている。

負荷 20% 50% 100%
80PLUS 80% 80% 80%
80PLUS Bronze 82% 85% 82%
80PLUS Silver 85% 88% 85%
80PLUS Gold 87% 90% 87%
80PLUS Platinum 90% 92% 89%
80PLUS認証を取得するための電源ユニットの効率の最低基準
80PLUS認証を取得するためには、20%と50%、100%という3つの負荷領域において、それぞれ80%以上の効率を実現することが求められる。これはデスクトップ/サーバ向け認証プログラム(内部115V仕様)。これ以外にデータセンター向けの認証プログラム(内部230V冗長電源仕様)もある。80PLUS Platinumが最も高性能である。

 表中の負荷というのは、電源ユニットの最大出力に対する、負荷の割合である。例えば最大出力500Wの電源ならば、100W、250W、500Wという3種類の負荷に対して、それぞれ80%以上の効率を実現することが求められる。いずれか1つでも80%未満の場合は80PLUS認証を取得できない。実現している効率のランクに応じて、「80PLUS」から「80PLUS Platinum」までの5つの段階がある。

 80PLUS認証を取得すると、製品に次のような80PLUS認証のロゴを付けて販売できる。安価な電源ユニットはこの認証プログラムを取得していないものが多いので、ユーザーとしては、高性能な電源ユニットを選ぶ尺度として利用できる。一般的には、高価な電源ユニットほど、より上位のロゴ・プログラムを取得しており、それが価格差にも反映されている。とはいえ一番下の80PLUSか1つ上の80PLUS Bronzeあたりを取得しておけば十分で、それ以上はこだわる人でなければ必要ないかもしれない(最上位と最下位では効率がたった10%違うだけである)

wi-logo01.gif 80PLUSロゴ
80PLUS認証を取得した製品は、実現された効率のランクに応じて、これらのうちのいずれかのロゴを付けることができる。

 80PLUS認証を取得した電源ユニットの一覧と、その性能(効率や後述する力率)などの情報については、先ほどのWebページで確認できる。ページ下にあるベンダ名をクリックすると認証を取得した電源ユニットの一覧が表示されるので、その中から型番のリンクをクリックすると、検証結果レポートのPDFファイルが取得できる。以下のように、ページの中ほどに、効率のグラフが表示されている。

wi-report01.gif 電源ユニットの効率の検証レポート
これは、Shuttle ComputerのPC63I0005という500W電源ユニットの検証レポートの例である(レポートの一覧はこちら)。取得した80PLUSロゴやそのテスト結果などが記録されている。
  (1)負荷別の電源ユニットの出力W数。定格出力の20%、50%、100%の3つを測定している。
  (2)測定された効率(Efficiency)。
  (3)負荷別の、入力された電力と出力された電力のグラフ。上側が入力電力、下側が出力電力。間の赤い部分が電源ユニットにおけるロス(損失)。
  (4)効率のグラフ。赤い点線が80%ライン。これよりも上側にならないとロゴを取得できない。昔の電源ユニットでは、負荷が高すぎたり低すぎたりすると、極端に効率が落ちたり、不安定になったりするものがあった(注:無負荷に近い状態だと動かないものもある)。80PLUSでは、実負荷領域で安定的に動作することが求められている。
  (5)PF(Power Factor)欄は、次ページで解説する力率である。

 なお、電源の定格出力が実際に必要な消費電力よりも大きくても問題はない。例えば250Wの消費電力が見込まれる場合に、500Wの定格出力を持つ電源ユニットを利用しても構わない(不足するのは当然不可)。実際に必要な分しか電力を消費しないからだ。だが必要な定格出力よりも5倍も10倍も大きな電源ユニットを使うといったことは無駄が多いので、望ましくない。上のグラフからも分かるように、電源ユニットは真ん中程度の負荷のときが一番効率がよい。20%や100%の負荷の場合は少し効率が落ちてしまう。もっとも100%の負荷で使用していると、まったく余裕がないので、突発的な大電流が流れたときに保護回路などが働いてシャットダウンしてしまう可能性があるが。

消費電力を測定する

 PCシステムが消費している電力や、電源ユニットの効率などを測定するには、電力計(ワット・チェッカー)が必要になる。HWMonitorというツールのように、簡易的にCPUやグラフィックス・カードなどの消費電力を表示できるツールなどもあるが、システムによっては消費電力量をモニタできないことも多い。

wi-hwmonitor01.gif HWMnitorによる消費電力の表示
HWMnitorというフリーソフトウェアでは、システムの消費電力量を表示できる。ただしシステムにセンサーLSIなどが付いていて、かつWindows OSによってサポートされている場合にしか表示できない。CPUの消費電力しか表示できないことも少なくない。
  (1)このシステムでは、CPUの消費電力のみが表示できる。それ以外は電圧や温度しか表示されない。

 システム全体の消費電力を測定するには、やはり専用の測定器が必要である。次の写真は、サンワサプライが販売している「ワットチェッカーPlus(TAP-TST7)」という消費電力測定器である。電圧や電流のほか、各種の電力、力率などが測定できるし、電力量の積算や料金の概算計算などもできる。安価なものは、力率測定がなかったり、正弦波以外の力率測定ができなかったりする。ただし、電源ユニットの出力を測定できるわけではないので、電源ユニットの効率を知ることはできない。

wi-tester01.jpg 消費電力の測定装置
サンワサプライの「ワットチェッカーPlus(TAP-TST7)」。PCユーザー/システム管理者が求める電流や電圧、周波数、力率、各種電力などが簡単に計測できる。1台あると非常に便利。

 以下に測定結果の例を示す。消費電力がWattという単位で表示されている。

wi-meter25.jpg 消費電力の測定例
これは、あるシステムの消費電力を測定した例である。アイドル時は消費電力が少ないが、CPUやグラフィックス・カードに負荷を与えると消費電力が増減することなどが確認できる。

       1|2 次のページへ

Copyright© 1999-2017 Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

この記事に関連するホワイトペーパー

Focus

- PR -

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。