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» 2011年04月18日 00時00分 公開

新任PMがついやってしまうNG集(2):「大丈夫」という部下の報告を信じてはいけない理由 (1/2)

1人で仕事をしているプログラマ時代は、ばりばり仕事がこなせたのに、PMになった途端に仕事がうまく進まない! そんな新任PMの悩みを解決するTipsを紹介します。

[水口和彦,ビズアーク]

 「あのメンバー、仕事の進捗(しんちょく)は大丈夫かな?」

 PM(プロジェクトマネージャ)なら、誰もが気になるところです。

 「予定の期日に間に合います!」というメンバーの力強い返事を信じて任せていたら、完了予定日になって「実はまだできていませんでした」という相談が来て、結局対応に追われるはめになる……そんな経験はないでしょうか。

 しかも、往々にしてこのようなことは1回だけでなく、何度も繰り返し起こります。一段落した時、メンバーに仕事が遅れた理由を聞いても、返ってくるのは「申し訳ありません」という平謝りと「今後はしません」という形ばかりの口約束だけ。

 こんな調子じゃ、安心して仕事を任せられません。しかし、こんなふうになってしまうのにはちゃんと理由があるのです。

大丈夫だ、問題ない……?

 PMとしてプロジェクトを取り仕切るなら、メンバーそれぞれの仕事の進み具合を気にするのは大事な仕事の1つです。プロジェクトの工程や頼み事について、こう尋ねる人は多いと思います。

 「あの作業は期日に間に合いそう?」

 「間に合います!大丈夫です!」

 この「大丈夫」という言葉、実はかなりのくせものです。「大丈夫」という言葉を信じると、期日が来てもまだ完了していない、チーム全体が慌ててひっくり返る、PMがついカッとなって暴言を吐くなど、さまざまな弊害を引き起こします。

 問題の根本はもちろん、仕事が遅れてしまうメンバーにありますが、メンバーばかりを責めるのはPMとしてよろしくありません。それに、PM自身にだって改善すべき点があるのです。

悪意があってのウソではありませんが

 まず分かっていただきたいのは、メンバーが悪意を持って「ウソ」をついたわけではないかもしれない、というところです。

 わが身を振り返って考えてみてください。自分が担当する作業が少し遅れていたときに、「○○の件、期日に間に合う?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか? もし、少し作業が遅れていたとしても、期日までに遅れを取り戻せそうなら「大丈夫です」「間に合います」と言ってしまうのではないでしょうか。

 ここでしっかり認識しておきたいのは、「大丈夫」=「問題がない」というわけではまったくない、ということです。

ネガティブな情報は出したくありません! プチ隠ぺい体質

 そもそも、人は仕事の遅れについては、積極的に報告しようとしないものです。この傾向は、PMが同時に職制上の上司でもある場合、特に強くなります。自分の評価者でもある上司に対して、「仕事が遅れた」というネガティブな情報は出したくないと、普通は考えます。そのため、挽回できると本人が思っているうちは、「実はちょっと問題がある」という事実は表に出てきません

 この心理を、私は「プチ隠ぺい体質」と呼んでいます。「隠ぺい体質」ほど悪質ではありませんし、本人に悪気があるわけではないので「プチ」を付けています。しかし、「プチ」といえども、隠ぺいは隠ぺい。PMにとって困ったことであることに変わりありません。

「大丈夫」は主観交じりの曖昧な言葉でしかないのです

 さらに、「大丈夫」という言葉の意味についても、注意する必要があります。「大丈夫」という答えには、さまざまなニュアンスが含まれます。

  • まったく問題がないので「大丈夫」
  • ちょっと遅れているけれど、挽回できる範囲なので「大丈夫」
  • かなり遅れていても、挽回できる可能性を信じて「大丈夫」

 このように「大丈夫」という言葉には、「現実の作業具合」と「作業するメンバーの希望的観測」が混在しています。本人が「大丈夫じゃない」と言い始めるのは、挽回不可能なくらいに遅れてしまってからです。

 ですから、「大丈夫」という言葉自体を、当てにしてはいけません。「どちらかといえば大丈夫」くらいの意味だと思っておきましょう。

「イエス/ノー」という答えを本当に聞きたいのですか?

 「大丈夫」という言葉は、作業の進捗を知るうえであまり役に立たない……となれば、PMとしては代替案を考えなくてはなりません。

 ここでさらに考察しましょう。そもそも、「大丈夫です」という答えが返ってくる質問自体に問題があります。「○○の件、間に合いますか?」という質問は、その問い方からして必然的に答えが2択になります。

  • イエス……問題なし
  • ノー……問題あり

 白黒付けるだけの質問形式は、PMが本来聞きたいはずのグレーゾーン部分を問えていません。だから、結局「問題ないです」というあまり役に立たない情報しか得られないのです。

大丈夫という言葉は当てにならない 大丈夫という言葉は当てにならない

 仕事の状況を聞きたいなら、まず「イエス/ノー」で答えられる質問をやめましょう。質問の仕方をちょっと工夫するだけで、自分が聞きたい情報を引き出せる確率はぐっと高まります。

・具体的な日付が答えになるように質問する

 「いつまでに作業が終わる?」

 この問いは、具体的な日付を聞いています。答えが期日より前であれば比較的安心ですし、期限ギリギリならば要注意だと分かります。この方がより具体的な状況を把握できる可能性が高まるわけです。

・未来のことより過去のことを問う

 未来のことよりも、過去、つまり「実績」を聞く方が有効です。前回「『計画的にやれ』が悲しいほどメンバーに通じない理由」で述べたように、仕事を“計画的”にやれない人は、仕事のスタート時点で遅れています。ですから、「(将来)間に合うか?」ではなく、「(今)仕事をスタートできているか?」を確認すると、状況を把握しやすくなります。

 予定どおりスタートできていればひとまず安心ですし、スタートの時点ですでに遅れているなら、当人がまだ大丈夫だと思っている、または大丈夫と主張していても、要注意だと考えるべきです。

 適切な答えを知りたいなら、適切な問いをしましょう。質問がきちんとできてないのに「あのメンバーはこれだからなってない」と怒るのは筋違いというものです。

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