事業戦略を学ぶ――まずは3Cモデルで現状分析ITエンジニアのための経営戦略入門(11)

ユーザー企業がシステムの設計・開発を依頼するとき、そこには経営的な判断が存在する。顧客の「経営戦略」をとらえたうえでシステムを設計・開発できるITエンジニアになろう。

» 2011年08月18日 00時00分 公開

 全社戦略についての講義の後、2回ほど「もうけ」についての講義を挟んだ。今回からいよいよ、後半の「事業戦略」について説明する。

 全社戦略を作るとは「事業ポートフォリオを作ること」であった。この事業ポートフォリオにおける各事業を、どのような指針で具体的に運営していくか――これが「事業戦略」だ。

事業戦略とは/立案の手順とは

  事業戦略を一言で説明すると、下記のようになる。

  • 全社戦略からの指針を前提として
  • 強みを生かしてチャンス(機会)を捉え
  • 弱みをさらさずにピンチ(脅威)を回避するための指針

 事業戦略を立案する手順は、「現状分析→戦略立案」という流れになる。

  • 強みを生かして、チャンス(機会)を捉え
  • 弱みをさらさずに、ピンチ(脅威)を回避する

という定義からも想像がつくかと思うが、現状分析はSWOT分析を中心に進める。

◎SWOT分析とは

 組織の外的環境に潜む機会(O=opportunities)、脅威(T=threats)を検討・考慮した上で、その組織が持つ強み(S=strengths)と弱み(W=weaknesses)を確認・評価すること。

 SWOT以外にも、3C、4P、5F、7S、PEST、AIDMAなど、さまざまなフレームワークがある。これらのフレームワークは、SWOTにまとめる前段階に利用するフレームワークだと考えてほしい。

 いろいろなフレームワークを使った分析により、

  • 環境の機会/脅威
  • 自社の強み/弱み

をあぶりだす。そこから、

  • 強みを生かしてチャンス(機会)を捉え
  • 弱みをさらさずにピンチ(脅威)を回避する

ためのストーリーを作り出すのである。このストーリーが、事業戦略の骨子となる。

 ストーリーをどのような形でアウトプットにするのか、明確なルールはない。PowerPointを利用して、図や表を中心に表現するのもいいだろう。筆者の場合、「A4用紙1枚に収まる程度の簡潔な文章にまとめる」ことを推奨している。文章にはどんな内容を盛り込めばよいか、そのあたりは連載の中で順を追って説明していく。

現状分析の前に、事業の概観を3C分析

 現状分析の前に、「事業の概観」を理解しておこう。そうすると、次の現状分析がスムーズになる。

 事業の概観を理解するためには、3Cというフレームワークが便利だ。このフレームワークを使うと包括的に現状を分析できるため、事業の概観を「大ざっぱに」理解したいときには使い勝手が良い。

◎3C分析における3つのC

 3Cの3つのCは、「Customer」「Competitor」「Company」を指す。

  • Customer(市場/顧客=外部環境)
    市場規模、成長性、ニーズ、購買行動など (市場/顧客=外部環境)
  • Competitor(競合=外部環境/内部要因)
    寡占度、参入障壁、強み・弱みなど (競合=外部環境/内部要因)
  • Company(自社=内部要因)
    技術力、販売力、ブランド、売上高/収益性/シェア、人材/組織スキルなど (自社=内部要因)

 3C分析とは、3つのCを具体的にまとめていくことだ。3つのCに関連した特徴的なことを、短文で、できるだけ定量的な表現を交えて書き出していく。

3C分析を実践してみよう

 フレームワークを用いた分析は、フレームワークの解説文章を読むよりも、実際のフレームワークの利用例を見た方が理解はぐっと深まり、応用しやすい。

 そこで本連載は今後、実際にフレームワークを利用しながら分析を進めていきたい。しかも、著者が分析したものを一方的に提示するのではなく、読者から寄せられた分析例の中から最優秀賞を紹介するという方法で進める予定だ。最優秀賞者には、著者が講師を務める経営戦略セミナー、または会計財務セミナーへの無料招待をさせてもらいたい(スケジュールの都合などにより、どのセミナーになるかは未定)。

 さて、それでは最初のお題。

◎お題:「日本航空(JAL)」の事業の概観を3C分析せよ

 JALの航空機事業について、概観をつかもう。使うフレームワークは3Cだ。3つのCの箱に分けて、JALの航空機事業の概観が分かる情報を抜き出し、整理をしてほしい。

※注意事項1:どの事業を題材にするかについて。今回は航空機事業として事業単位を切り出す(話題の格安航空会社:Low-Cost Carrierも含めて)。従って、ホテル・不動産事業やカード・金融事業などの関連事業については対象外とする。

※注意事項2:いつの時点を分析対象とするかについて。「○○年×月時点」といったような過去の特定時期を対象にはしない。本連載は定期更新のため、その時々の最新情報を基に分析してほしい。

  • 応募形式:パワーポイント1枚、フォントサイズは12ポイント程度。
  • 期限:8月31日中。
  • 応募先:info@willmitz.jp

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セミナー情報

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筆者紹介

松浦剛志(まつうらたけし)

京都大学経済学部卒。東京銀行(現 三菱東京UFJ銀行)審査部にて事業再生を担当。その後、グロービス(ビジネス教育、ベンチャー・キャピタル)、外資系ベンチャー・キャピタルを経て2002年、戦略・人事・会計を中心とするコンサルティングファーム、ウィルミッツを創業。2006年、業務改善に特化したコンサルティングファーム、プロセス・ラボを創業。現在は2社の代表を務める傍ら、公開セミナー、企業研修の講師を務める。セミナーテーマは「経営戦略」「会計と財務」「問題解決」「業務改善」。

木山崇(きやまたかし)

2000年、東京大学工学系研究科修了。シティバンクを経て、外資系証券会社に勤務。日本証券アナリスト協会検定会員。ウィルミッツ、プロセス・ラボのアドバイザーとしても活躍。


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