シーン別に解説、依頼文書作成の要点文章コミュニケーション・リファクタリング!(6)(1/2 ページ)

「文章下手」が原因で、コミュニケーション不全に陥ったことはないだろうか? 言葉足らずで相手の誤解を招いたり、指示がまったく伝わっていなかったり……開発現場を改善するための「文章コミュニケーション」方法を紹介。

» 2011年09月08日 00時00分 公開
[谷口功@IT]

 エンジニアに限らず社会人として仕事をしている人なら、何かを他人に依頼する文書を書くことが多いと思います。しかし、気を付けましょう。この種の文書は、相手つまり顧客やビジネスパートナーとの間のトラブルの種になってしまうことがよくあります。

 今回は、不要なトラブルを招かない依頼文書の構成や書き方、表現のポイントを解説します。

相手が何をすべきか明確に分かるように

 エンジニアとして働いていると、技術的な作業の依頼だけでなく、打ち合わせなどの日程調整の依頼、仕様の検討・確認の依頼など多様な依頼文書を作ることになります。依頼の文書とひとことで言っても、その内容はさまざまです。内容に応じていろいろな書き方があります。しかし、どのような依頼書を記述するとしても、基本的な原則というものがあります。この原則を意識することで、不要なトラブルの発生を避けられます。

 依頼の文書を作るときは、まず「前書き」を記述し、その後に具体的に何を依頼したいのかを記述します。前書きには、その文書(依頼書)を送付する(提示する)理由、意図、目的を簡潔に記述します。例えば、次の通りです。

 開発スケジュールについて緊急の打ち合わせが必要になりました。つきましては、貴社開発プロジェクト関係者のスケジュール調整をお願いいたします。


 何を依頼したいのかという部分には、少なくとも依頼する仕事や作業の内容期限依頼する理由や目的の3項目を記述します。そのほかには必要に応じて、誰に作業してほしいのか、作業を進めるときの手段や方法、作業をお願いするに当たっての条件といったことを書き連ねます。それぞれの項目は、明確で具体的、かつ簡潔に書くようにしましょう

日程調整を依頼する文書に必要な材料

 例えば、顧客との定期的な打ち合わせに加えて、不定期な打ち合わせが必要になったとします。顧客側関係者に打ち合わせに参加してもらえるように、顧客側担当者に調整を依頼しなければなりません。定期的に開いている打ち合わせの日時を変更しなければならなくなったときも同様です。

 依頼を受けた顧客側担当者は、顧客側関係者のスケジュールなどを調整しなければなりません。依頼の文書では、調整を受ける関係者全員をきちんと説得し、納得させるために必要な情報を顧客担当者に提供する必要があります。

 当社の勉強不足もあって、“コンテンツ概要検索機能”の仕様を変更しなければならなくなりました。まことに急な話ではありますが、仕様変更に関しての打ち合わせをさせて頂きたいと考えています。
 つきましては、貴社「○○システム開発プロジェクト」内の関係者への調整をよろしくお願いいたします。
・打ち合わせ内容
 コンテンツ概要検索機能の仕様変更について。
・打ち合わせ日時
 関係者の調整をお願いいたします。
・打ち合わせ場所
 貴社、当社のどちらがよろしいでしょうか。当社で行うことも貴社の方に出向くことも可能です。


 上記の例を読むと、調整を依頼する文書として必要な点が欠けています。まず、仕様を変更しなければならなくなった理由が分かりません。そして、定期的な打ち合わせまで待たずに緊急に打ち合わせしなければならない理由も見当たりません。さらに、打ち合わせで検討したい事柄や、打ち合わせで決定しなければならない事柄も不明です。

関係者を納得させる材料が必要

 以上の点が明確になっていないと、依頼書を受け取った担当者も、関係者を納得させることができず、調整は不調に終わるでしょう。また、第3回でも説明しましたが、日程の調整をお願いする文書では、具体的な日程の候補を挙げ、受け手に選択してもらうようにしないと、話が進展しないでしょう。

 打ち合わせを開催する場所も、書き手の側でまずきちんと決めておくことが大切です。ただし、受け手の側が都合が悪いときは、最適な場所を検討し合うという態度を示すことも必要です。

 そして、冒頭に「当社の勉強不足もあって」と言い訳めいた一言がありますが、このような言葉は不要です。きちんと仕様変更の理由を論理的に記述することこそが重要です。

 以上で挙げた注意点を意識して日程調整の依頼文書を書くと、以下の例のようになります。

 今回開発するシステムに採用する基盤ソフトの変更について緊急の打ち合わせを開きたいと考えています。貴社○○システム開発プロジェクト関係者の調整をお願いいたします。
1 依頼の理由
1−1 基盤ソフト変更の理由
 今回開発するシステムでは、貴社からの要望によりA社製の基盤ソフトを採用する計画でした。しかし、当該ソフトに重大な欠陥が存在することがA社から緊急発表され、基盤ソフトの変更が必要になりました。
1−2 緊急に打ち合わせを開催する理由
 開発スケジュールを遅延させないために代替の基盤ソフトを早急に決定する必要があります。
2 打ち合わせで決定すべき事項
 A社製基盤ソフトに代わる基盤ソフトの決定。
 代替の候補としてC社製、E社製の基盤ソフトを考えています。両ソフトの機能、性能、仕様、価格をA社製ソフトと比較した結果をまとめた資料を別紙に添付してあります。打ち合わせでスムーズに結論が出せるように、事前の比較検討をお願いいたします。
3 開催日時
以下の日時のうち、貴社の最も都合のよいものをお知らせください。
◎月△△日(金) 13:00〜17:00
◎月△○日(火) 13:00〜17:00
◎月△×日(水) 13:00〜17:00
4 開催場所
当社第3会議室を予約してあります。


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