お願い、おわび、催促の文書は相手の立場に立って文章コミュニケーション・リファクタリング!(7)(1/3 ページ)

「文章下手」が原因で、コミュニケーション不全に陥ったことはないだろうか? 言葉足らずで相手の誤解を招いたり、指示がまったく伝わっていなかったり……開発現場を改善するための「文章コミュニケーション」方法を紹介。

» 2011年10月07日 00時00分 公開
[谷口功@IT]

 前回は、他人に何かを依頼する文書の書き方について解説しました。他人に何かを依頼するということは、できれば避けたいものです。言葉の使い方を間違えたり、まずい構成の文章を送ってしまうと、相手の気分を害してしまい、コミュニケーションが成り立たなくなってしまうことさえあります。

 今回のテーマも、できれば避けたい類の文書、つまり、注意しないと相手とのコミュニケーションが成り立たなくなってしまう文書の書き方です。具体的には、お願いおわび催促の文書を書くときのポイントを解説します。

お願いしたいことだけでなく理由などもきっちりまとめる

 お願いの文書は、読み手の承諾や承認を取り付けたり、決定や決断を促したりするために相手にお願いする文書です。ほかにも、何かの許可や許諾を得たり、要望を受け入れてもらうというときにも必要になります。読み手(顧客)に何らかの作業や仕事を依頼する文書とは異なるものと考えてください。

 例えば、見積書の作成を依頼するときに送るのは依頼の文書です。一方、見積もり作成の依頼を受けた側が、見積もりの提出期日の延長をお願いするのがお願いの文書です。お願いの文書では、次の2点を明確に、具体的に記述することが大切です。

・お願いの内容……何を、どのようなことをお願いしたいのか
・お願いの理由、目的……なぜ、なんのためにお願いするのか


 お願いの文書ですから、お願いの内容を書かないことはあまりないでしょう。しかし、お願いする理由、目的を明確に記述していないことはよくあるものです。これが明確になっていないと、相手は承諾・承認(もしくは決定・決断、許可・許諾、要望の受け入れ)についてどう判断したらよいかが分かりません。判断の基準がないからです。お願いの理由、目的を明確に示すことで、相手も判断しやすくなるのです。

 お願いの文書の典型として、文書や見積もりを顧客に提出するときに、提出期日を延ばしてもらえるようにお願いする文書が挙げられます。ただし、同じ期日延長のお願いでも、製品そのものの納期が遅れるときや、スケジュールに大きな影響を与えるような成果物の納期の延長をお願いするときなど、重大な、深刻な問題についてのお願いは、メール(文書)で済ませてはいけません。電話で話をするか、直接会って話をした方がよいでしょう。

 「A社製ソフトウェア◎◎についての調査報告書」の提出がお約束の期日である○月□日に間に合わなくなりました。
 仕様の変更によるものであり、突発的な理由であり、提出期日の延長は致し方ないものとご理解いただければ幸いです。
 きちんとした検証を行うために多少の時間が必要になります。いましばらくお待ち願えないでしょうか。
 ご理解のほど、よろしくお願いいたします。


 この例を見ると、調査報告書を出すべき人に責任があるわけではなく、外的要因でスケジュールが遅れるということのようです。しかし、この例の良くないところは、自分たちに落ち度がないと考えていることが文章に表れてしまっているところです。他人事のような表現になっていて、お願いする気持ちがまったく見えません。

 また、上の例では、延長をお願いする理由を、単に“仕様の変更によるもの”としか記述していません。延長をお願いする理由が明確になっていない上、具体的な表現にもなっていません。

 書き手にとっては、延長をお願いする理由が「A社による仕様の変更」であるということは自明のことかもしれません。しかし、それをきちんと表現しないと読み手には伝わりません。読み手にすれば、「理由も述べずに、とにかく延期しろということか」と不快に感じるかもしれません。お願いする理由を、読み手にも伝わるように表現する必要があります。

 また、期日をいつまで延ばしてほしいのか、その期間を明確に示していないことも問題です。単に「延ばしてほしい」と記述するだけでは、読み手が判断するための基準がありません。読み手の理解を得るには、延長期限を具体的に記述し、この期日まで待ってほしいということを提示しなければなりません。

 先日ご依頼いただきました「A社製ソフトウェア◎◎についての調査報告書」の提出期限を少し延ばしていただきたく、ご連絡いたしました。本来は、9月14日に提出するお約束でしたが、A社による緊急の仕様変更がありました。
 このため、この変更を考慮に入れて再度検証しなければならなくなりました。仕様変更による追加機能も新たに検証が必要になります。また、すでに検証済みの機能のいくつかについても仕様変更に伴い再検証が必要です。これらの検証のためのお時間をいただきたいのですが、いかがでしょうか。
 具体的には、当初の予定よりも1週間延長して、9月21日に提出させていただくということでご了解いただけないでしょうか。
 少しお待たせすることになりますが、検証調査の精度を上げるためとご理解いただきたく、よろしくお願いいたします。


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