「クラウド基盤化」進むVMware vSphere 5の概要VMware vSphere 5を極める(1)(3/3 ページ)

» 2012年01月06日 00時00分 公開
[齋藤康成ヴイエムウェア株式会社]
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ハイパーバイザの強化

 ESXiそのものも大幅に強化された。最新のハードウェアやテクノロジーに対応すると同時に、OSカーネルとしての基本機能も着実に進化している。

UEFI Boot

 従来型のBIOS Bootに加え、UEFI Bootにも対応した。最近のx86システムにはUEFIをサポートするファームウェアを搭載しているものが出始めている。それらの多くは従来型のBIOS BootモードとUEFI Bootモードの両方をサポートしている。

 ESX 5.0はLegacy BIOS Boot、UEFI Bootのどちらにも対応可能であるが、ESX 5.0のインストール時に使用した動作モードをインストール後も使用する必要がある。UEFI Boot がサポートされるのは、該当システムがUEFI Bootによる認証試験を取得済みである場合に限られる。UEFI Bootの認証取得状況はVMware Compatibility Guide (http://www.vmware.com/resources/compatibility/search.php) より確認することができる。

2TBメモリ

 物理ホストに搭載可能なメモリの最大値を2TBに拡大した(ESX/ESXi 4.1における最大値は1TB)。厳密には、アドレッシング可能な物理メモリアドレス空間が4TiBまで、利用できる物理メモリ容量の総計が2TiBまでとなっている(ここで1 TiBとは1024の4乗を意味する)。ただし、1TiBを超える物理メモリを搭載可能なシステムに関しては、別途専用の認証試験が課せられているため、もし1TiBを超えるメモリを搭載可能とするシステムを利用する場合はこの試験をパスしているか確認する必要がある。この内容は上記のVMware Compatibility Guideより確認することができる。

管理機能の強化

vSphere Auto Deploy

 vSphereの管理・運用は比較的シンプルで容易であるが、それでも規模に応じて管理工数は増加する。この管理工数を大幅に削減する仕組みとしてvSphere Auto Deployという新機能が提供された。vSphere Auto Deployでは、ESXiのブートは毎回ネットワーク経由で行われる。ブート毎にESXiの構成処理を全自動で行うことで、ホストの構成情報をホスト毎に保有しない「ステートレス」な仮想化基盤を構築することができる。詳細は本連載の次回以降で解説する。

vCenter Server Appliance

 これまでvCenter ServerはWindowsサーバ上で実行するサービスアプリケーションという形態で提供されてきた。vSphere 5.0ではこれに加え、仮想アプライアンスとしてパッケージングされたvCenter Server Appliance(以降VCVAと略記)の提供も開始した。元々vCenter Serverの本体であるvpxdはポータブルな設計であったため、Windows以外のOS上でも実行可能な構造になっていた。VCVAではLinux上にvpxdやそれに関連するコンポーネントをパッケージングし、仮想アプライアンスという形態で提供される。このため利用者は仮想アプライアンスを展開し、必要な最小限の設定を行うだけでvCenter Serverを利用することができる。またvCenter Serverの動作プラットフォームとしてWindows Serverを用意する必要がないため、コスト的にも有利になる。

 VCVAは基本的にWindows版のvCenter Serverと同一の機能を保有しているが、一部提供されていない機能がある。以下に留意する必要がある。

(1) vCenter Linked Mode利用不可

 複数のvCenter Serverを連携させるLinked Modeという構成方法がWindows版のvCenter Serverでは提供されている。この機能はバックエンド側でADAMと呼ばれるWindowsの機構を利用しているため、VCVAでは利用することができない。このためVCVAではLinked Modeは利用することができない。

(2) vCenter Server Databaseの制約

 vCenter Serverのバックエンドで利用するデータベースとしてWindows版のvCenter Serverでは、Microsoft SQL Server、Oracle Database、IBM DB2がサポートされているが、VCVAではOracle Database、IBM DB2に限られている。このためMicrosoft SQL ServerをVCVAのバックエンドデータベースとして利用することはできない。なおVCVAには標準でDB2 Expressが収録されており、こちらをそのまま用いて環境を構築することもできる。標準収録のDB2 Expressを使用した場合、サポートされるのは最大5ホスト、最大50仮想マシンまでとされている。

(3) vSphere Storage ApplianceならびにVMware View Composerの利用の制約

 VMwareより提供されている製品の一部には、Windows版vCenter Serverと同居させることを前提とするコンポーネントがある。具体的にはvSphere Storage Applianceの管理コンポーネントであるVSA Manager、VMware Viewでリンク・クローン機能を用いる際に導入するコンポーネントView Composerがこれに該当する。これらの製品を利用する場合はWindows版のvCenter Serverを用いる必要がある。

 上記の通り、現時点ではWindows版のvCenter Serverと仮想アプライアンス版のvCenter Serverには若干の機能差が存在する。しかし、仮想アプライアンスには導入や管理の容易さなどさまざまなメリットがあるため、これによりvSphere導入のハードルが下がることが期待されている。


 今回はvSphere 5の新機能ということで、仮想マシン、ハイパーバイザ、管理体系に関する新機能を紹介した。次回はネットワークに関する新機能を解説予定である。


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