勉強ではなくすごいことの共有――Shibuya.pm/Shibuya.js竹迫良範氏インタビュー【前編】OSSコミュニティの“中の人”(3)(2/2 ページ)

» 2012年05月31日 00時00分 公開
[深見嘉明慶應義塾大学大学院]
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「勉強」ではなく「すごいことの共有」

深見 Shubuya.jsの活動について教えてください。勉強会ベースのコミュニティなのですか?

竹迫良範氏 「自分たちはこんなすごいことやってるよ!」と技術の共有をする

竹迫 どちらかと言うと、話したい人が集まれば開催するという形で、皆で勉強するというノリではあまりありません。むしろ、「自分たちはこんなすごいことやってるよ!」というように、「技術の共有」という面が強いですね。

 他には、豪華ゲストを招いて講演していただくこともあります。昔、江渡浩一郎さんに基調講演をしていただいたことがありました。2006年当時に「これから10年後以内にJavaScriptがサーバサイドでもフロントエンドでもクライアントでも使える」という話をされていて、その予言どおり数年後にNode.jsやTitanium が出てきて面白かったですね。江渡さんは日本で最初にCGIのプログラムを紹介した人で、サーバサイドで動的にコンテンツを生成する仕組みを早くから注目されていました。

深見 ゲスト講演がある場合、有料イベントになるわけですか?

竹迫 いえ、Shibuya.jsは無料が原則です。他には、福岡のbrazilさん(デブサミ2007出張Shibuyaイベント )や、当時北海道に在住されていた樋口証さん(Shibuya.js Technical Talk #2 )を呼んだことがあります。

深見 コミュニティの場合、会場費やスピーカーの交通費を捻出するのは大変じゃないですか?

竹迫 そうですね。私の地元の勉強会コミュニティの「セキュリティもみじ」※では、講師には交通費を含めた謝礼を支払うようにしています。これは主催のはまもとさんのポリシーで、「講師にはきちんとした謝礼を支払う。資金については皆で参加費や5000円ぐらいの懇親会費の余剰金から支払っています。足りない場合もあるかもしれないけれど、気持ちとしてお支払いしています。

※セキュリティもみじ:広島で2005年からスタートした勉強会。情報セキュリティを対象にしている。

深見 コミュニティが大きくなるにつれ、組織をきちんと構成しなければ、運営費をきちんと捻出しなければ、という話をよく聞きます。RubyKaigiもそれでやめようかという話になった、と記憶しています。ちなみにShibuya.jsの場合、運営スタッフの体制などはしっかり決まっている方ですか?

竹迫 まったく決まっていないですね。むしろ誰が運営しているのか分からないぐらい。

深見 組織化する必要性があまりないということは、企画などに関わるコアメンバーは、そんなに多くないということでしょうか。企画の決め方はどうしているのですか?

竹迫 運営のメーリングリストには、20〜30人ぐらいが積極的に入っています。その中で出てきた企画のうち、secondlifeさんが「いいですね、やりましょう」と言ったらホワイトボードのある会議室に集まって企画会議を実施して、実際に誰を呼ぶかを議論して形にする、という感じです。

コミュニティは基本的に「一本釣り」

深見 コンテンツを出せる人が20〜30人いるということは、周辺にはウオッチャーのような人たちが数十人規模でいる、という感じでしょうか。

竹迫 そうですね。以前Shibuya.jsは、イベント申し込みを始めると、定員百数十人の枠が数分で埋まってしまったことがありました。

深見 「聞く人」を「話せる人」に引き込んでいくのは、コミュニティ運営での鍵かと思うのですが、結構大変なことでもあります。Shibuya.jsではどうしていますか。

竹迫 1つやり方があって、ブログを書いている人を見つけて一本釣りしています。secondlifeさんはもともと「JavaScriptについてアウトプットしている人とコミュニケーションを取りたい」という思いで勉強会を始めたんです。「どこの誰だかよく分からないけど、ひたすらJavaScriptについて熱く語っている」人に連絡を取って、「今度こんな勉強会をやるんだけれど来てもらえませんか?」とお誘いする。

深見 「え、あのsecondlifeさんから連絡が来ちゃったよ!」という反応ですか。

竹迫 そんな感じです(笑)。

深見 話すうちに、ステップアップしていく実例はありますか?

竹迫 それはたくさんありますね。発表をきっかけに上京して、転職した人もいます。やはり、情報発信をしている人は強いです。コミュニティ運営側としてまずチェックするのは、ブログやTwitterなどのアウトプットですからね。

深見 そうですね。上京する例、転職する例、いろいろ聞きます。発表する人はどんどんプレゼンテーションして、どんどんスキルが上がっていく。お互いに良い影響を与えあっているのですね。

→後編に続く……。

筆者紹介

深見嘉明(ふかみよしあき)

経営情報学研究者。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教、神奈川工科大学創造工学部非常勤講師、国立情報学研究所特別共同利用研究員。慶應義塾大学SFC研究所次世代Web応用技術ラボ(AWA Lab.)メンバー、W3C/Keio Inturn、修士(政策・メディア)。

専門は情報流通形態論。現在は、ウェブプラットフォーム設計とコミュニティ形成、メタデータを媒介としたコンテンツ流通、ウェブマーケティング戦略などウェブ・情報技術をベースにした情報流通形態に関して研究を行っている。

著書に『ウェブは菩薩である〜メタデータが世界を変える』『エコシステム形成のフラットフォーム:標準化活動の行動分析』(共著、『創発経営のプラットフォーム』など。

ブログ:deepen 〜Yoshiaki FUKAMI’s view

Twitter:@rhys_no1



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