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» 2012年07月30日 00時00分 公開

TechLIONレポート――技術の草原で百獣の王を目指せ!:これからのエンジニアに必要なスキルとは?

[太田智美,@IT]

 7月26日、エンジニアによるトークライブイベント「TechLION vol.8」(以下、TechLION)が開催された。TechLIONは、日々生まれては消えていく技術の中から“百獣の王”となる技術を発掘・探求しようという趣旨で開催されているイベントだ。第8回目となる今回のイベントでは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 砂原秀樹教授が、さまざまな事例を基に「これからのエンジニアに必要なスキル」について語った。

 「例えば、セキュリティスペシャリストの教育には何が必要か?」と、砂原教授は問う。答えは「技術」ではない。それは多くのエンジニアがすでに学び、知っていることばかりだ。これからのエンジニアにとって本当に必要なものは、倫理や法律、経営といったほかの分野に対する理解だ。「これができないから、エンジニアが置かれる境遇はしょぼいのだ」(同氏)。

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 砂原秀樹教授

 実は、法律はプログラミング言語で書かれているようなものであり、エンジニアにとっては、得意分野のはずだと砂原教授は述べた。

 これらは、同氏がこれまで、「インターネット」というものを広げるために実際に取り組んできたことでもある。日本でインターネットを始めようとしたとき、最初に立ちはだかったのは「電気通信事業者法」だった。そこで、エンジニアがやらなければならなかったことは、会社を作ったり、法律を変えたりすることだった。

 同じことが経営についてもいえる。例えば、セキュリティシステムを導入する必要に迫られたとき、セキュリティエンジニアは経営者に対し「このシステムを入れるには2億円かかる。しかし、2億円を投じないでセキュリティを無視すれば18億円の損をすることになる」ときちんと説明できなければならない。

 さらに、同教授は続ける。「営業になりたくないといったら負け、自分の研究をセールスできない瞬間に負け。営業ができないということは、研究もできないということ。だから、それをできるようにならなければならない。特に、ネットワークは形が見えないものだが、その見えないものをどう表現し、どうやってお金を得て、人を説得するのか。そして経営者にどう分かりやすく説明するのか……。場合によっては法律を変えなければならないこともある。これからのエンジニアは、こうした事柄についても学ばなければならない」

 砂原教授は、これらすべてを学ぶことのできる環境を求め、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(以下、KMD)やIT Keys(IT specialist program to promote Key Engineers as securitY Specialists)を設立したそうだ。

 IT Keysでは、関西圏を中心とした情報系4大学院および4企業・団体が毎年さまざまな演習を行っているという。この演習で学ぶのは技術だけではない。例えば、顧客から突然「うちのホームページがやられている! 管理はどうなっているんだ!」という電話がやってきて、それへの対処も行わなければならないという。

 中には、「じゃぁ、相手を訴えます!」などと返すエンジニアの学生もいるそうだが、演習では、実社会ではそうもいかないということから教える。最後には、会社の役員会に行って、「今回のアクシデントはここが問題でこういう状況が発生したので、次はこういう対策をして、こう改善します」というようなプレゼンテーションが待っている。学生時代のうちにこういったことを体験しておくと面白いと話す。

 KMDの目的も、IT Keysとほぼ同じだそうだ。14人の教授の顔ぶれを見ると、専門分野に統一性はほとんどない。しかし、「エンジニアに経営や政策を教える」「音楽家や芸術家にエンジニアリングを教える」といった取り組みを通じてあらゆる方面から学ぶことで、次の世代を率いる人材が育つのだという。

 最後に、砂原教授は自身の夢を語った。「とにかく、すべてをつなげ。そして、全部のデータを集めろ。そして、すごく重要なことは、集めたものを“共有する”ことだ。自分だけのものにせず、みんなでアイデアを持ち寄って有益な情報を作り、それを使って楽しみたい」。そしてさらにこう付け加えた。「もう、私はエンジニアではないのかもしれない。なぜなら、私の製品は学生だからだ」。

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