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» 2012年08月30日 00時00分 UPDATE

ITエンジニアの市場価値を高める「営業力」(1):「ITエンジニアの市場価値」を決めるのは誰か? (1/2)

エンジニアが市場価値を上げるには、営業力が必要だ。元SEで営業経験もある著者が、「エンジニアが身に付けておきたい営業力」を語る。

[森川滋之,ITブレークスルー]

エンジニアとしての市場価値を上げるには「営業スキル」が必要だ

 「エンジニアの市場価値」という言葉を、いろいろなところで聞きます。

 私は、エンジニアが自分の市場価値を高めようと思ったら、「営業」のことを知る必要があると思っています。

 SEと企画営業、ITコンサルタントを経て、中小企業向けの営業コンサルタントも経験してくる中、この考えは強まるばかりでした。特に確信を強めたのは、前連載「SEの未来を開く、フルスクラッチ開発術」で取材したプラムザの事例を聞いたときです。同社では開発と営業を分離せず、「SE=営業=PM」というスタンスで仕事を取ってきていました。営業と開発の衝突でプロジェクトが炎上、あるいは案件が取れない、というように、多くの受託開発企業が苦労している中、プラムザが比較的うまくいっている理由は「これだ!」と思ったのです。

飛び込み営業ではなく「提案営業」

 「営業」といっても、電話をかけてアポを取ったり、飛び込みで商品を売り込むといったものではありません。既存顧客に新規開発を提案する、あるいは紹介案件に対して早い段階から話を聞くという、いわゆる「提案営業」のことです。

 ただ、提案営業ではあっても、営業であることには変わりはありません。そこで、本連載では提案営業をメインテーマとしながらも、営業全般に通じる話をしていく予定です。

エンジニアの「市場価値」とはそもそも何か

 営業について考える前に、まずはエンジニアの市場価値について考えてみましょう。なぜエンジニアが営業について考えるべきなのか、の基となる考え方です。

 「価値」という言葉には、大きく分けて2つの意味合いがあります。1つは道徳的な意味でのもの、もう1つは経済的な意味でのものです。

 道徳的な意味では、「真・善・美」の3つの観点から価値を議論しますが、市場価値は「経済的な価値」における価値の1つです。

 経済的な価値は、原則として金額に換算されます。単純に考えれば、金額=報酬です。つまり「市場価値の高いエンジニア=高額な報酬をもらっている」ということになります。

 市場価値という意味だけで考えれば、実にシンプルです。しかし、「市場」という言葉をいったん外して考えてみてください。あなたは、「世の中のエンジニアを報酬の順番に並べたら、価値の順番に一致する」という考え方に賛成できるでしょうか?

 多くの人が、「自分より価値がないエンジニアが、自分より高い報酬をもらっているのではないか」という疑念を持っているのではないでしょうか。

あなたの市場価値は誰が決めているのか?

 ここで、「報酬」とはそもそも何かを考えてみましょう。

 私のようなフリーランスにとっては、報酬とは売り上げそのものです。そこから経費や税金を引けば、私の収入(≒給料)になります。読者の中には、私のようなフリーランスもいらっしゃるでしょうが、多くは給与所得者だと思います。

 では、給料=報酬なのでしょうか?

 市場価値という意味でいえば、報酬は会社が支払う「給料」ではなく、顧客が払ってくれた「単価」(※)です。フリーランスも給与所得者も一緒です。

※この部分については、「元請けの大手SI企業と下請け企業では、単価が違う」というご意見もあると思います。残念ながら、会社間格差があることは認めざるを得ません。ただ、私自身の経験では、どうしてもプロジェクトに入ってほしいエンジニアが外注先にいる場合は、いろいろな調整をして「実質的」に高い単価をお支払いしたことがあります。それも一度や二度ではありません。このような人たちは、エンジニアとしての能力も高かったのですが、それだけではなくこの連載で書いていくような「営業」力も持っていました。いずれ具体的なエピソードをお話ししたいと思っています。

 つまり「報酬額を決める顧客が、あなたの市場価値を決めている」ということになります。

 「顧客が決める価格=市場価値」、ここが出発点です。

転職市場での価値も、最終的には顧客が決める

 なんて身もふたもない話なんだろう――そう思ったかもしれません。自分の価値を決めているのは顧客だ、なんて受け入れがたい、という人もいるでしょう。

 しかし、市場価値として考えれば、最終的に決定するのは買い手側です。

 「いやいや、今より高い給料をもらえる地位に昇進すること、あるいは転職することが、市場価値の向上なのではないか?」

 当然の疑問です。しかし、転職の場合でも、あなたの給料を決めるのは顧客です。

 転職先の企業は、あなたを総合的に評価して給料を決定しますが、その基準は自社の顧客がどれだけお金を支払ってくれるか、という一点です(スタッフ部門への転職の場合にはちょっと違ってきますが、それでも最終的には売上へどれだけ貢献するかで決めるという意味では同じです)。

 実際に雇ってみて、「単価に見合わない」と顧客が判断すれば、企業収入は下がり、結果として給料はだんだん下がってくることになるでしょう。

市場価値は、「誰に・何を」がマッチングしたときに最高になる

 では、どういうエンジニアに顧客は、高い単価を払うのでしょうか?

 ここで私のエンジニア時代の経験をお話ししましょう。私がSEマネージャとして働いていた時の収入はいわゆる平均の値段でした。ところが、Aさんというマネージャの単価を聞いて驚きました。私よりも50万円も高いというのです。

 正直に言えば、エンジニアとしての技術力はAさんよりもあったと自負しています。しかし、Aさんは得意分野が明確でした。

 Aさんは、特定の業界業務を知り尽くしていたのです。システムが優秀であることが、そのまま強みになる業界がありますが、Aさんが得意だったのはまさにそういう種類の業界でした。当然、そういった業界はシステムへの投資を惜しみません。そのため、Aさんの単価は私よりも高かったのです。

 このことについては重要なので、連載の中でも何度も触れますが、適切な相手に一番欲しいものを提供できれば、つまり「誰に・何を」がぴったりマッチすれば、市場価値が最大になります。

 エンジニアの一部の方々は、ここをしっかり認識していないように思います。

 先ほど「自分より価値のないエンジニアが、自分より高い報酬をもらっているのではないかという疑念を持っている」と書きましたが、このような疑念を持つ人は、ほとんどの場合「価値=能力」と思っているようです。

 しかし、市場価値という場合、顧客が払ってくれる単価しか指標はありません。単価の中には、もちろん能力への評価も含まれます。しかし、それが顧客の求めている能力であれば単価は高くなり、そうでなければ低くなるのです。

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