連載
» 2012年10月16日 20時54分 公開

D89クリップ(54):手軽に家電が作れる時代に小さな会社だからできること (1/3)

プログラマなのにハードウェアを作った鳥人間の久川さん、1人家電メーカーのBsize八木さん、クラウドファンディングを興したCerevoの岩佐さんが手軽になったモノづくりを語った。「おばかアイデアを形にする方法」や「ものづくりの新しい形」とは?

[岡本紳吾,hatte.Inc]

 最近、ものづくりに注目が集まっている。Webサービスの開発を行っている人たちの間でも、Arduinoなどを組み合わせ、プログラムと連動させて、実際に動くものを作る人が増えてきた。

 ものづくりのポイント、設計からテスト、そして資金集めまでを知ることができる「みんな何かの作り手だ〜Makerからメーカー、クラウドファンディングまで〜」をレポートする。

会場となったリクルートの会議室

 このイベントは、鳥人間おばかアプリ選手権2012夏に出場し、見事「いいニャ!」で、Web CAT Studio賞を受賞した副賞として、Web CAT Studioが開催したものだ。ものづくりを始めて、量産に着手した3名が登壇し、自分たちの経験を語った。

みんな何かの作り手だ〜ソフト屋がハードを作って売って分かったこと〜

 鳥人間は、Facebookの通知を教えてくれるガジェット『NOTICE』開発を、STROKEを開発したBsizeの八木さんと、Cerevoの岩佐さんとコラボレーションした(参照:@IT monoistの記事企画プロジェクト「リアルFacebookガジェット!? 『NOTICE』とは)。量産に向けてKickstarterで出資を募ったが、目標額に届かず幻のガジェットとなった。

 鳥人間の久川さんはかねてより宇宙に興味があり、いつか「風の谷のナウシカ」に出てくるメーヴェ(2人まで乗れる小型の飛行装置)を作りたいと考えていた。

鳥人間の久川さん。右手でArduinoを使ったガジェットを操作し、プレゼンを進めた

 しかしメーヴェをアニメの設定通りに作って飛ばすには、重量が300kgほどに上ることが分かり、やむなくあきらめた。

 続いて、国際宇宙ステーション(ISS)が地上から肉眼で見られると知り、どの方角に見えるのかを調べるサービスを作った。

 ここに、同社のプログラマがGoogle Mapsと連動する機能を作成。ユーザーを伸ばし始めたので、今度は拡張現実(AR)を使って、どの方向に見えるのかを再現するアプリを作成した。それがToriSatだ。実際にJAXAの関係者も利用しているとのことだ。

ToriSatの画面。リクルートが入居するビルのそばにISSのアイコンが表示されている

 このように、鳥人間では、ちょっとした思い付きからものを作り、実際に使っているユーザーの声を反映しながら、拡張する方法で、さまざまなガジェットなどを制作してきている。

 ある日、久川さんはADK(Android Open Accessory Development Kit)と出会った。ADKはArduino互換でAndroid端末とやりとりができる開発キットのことだ。センサの入力やサーボモーターへの出力などがAndroid端末から行えるようになる。

 ところがこの開発キットは3万1500円もするので、普通の人にはちょっと手を出しにくい。Arduinoは最新版のArduino UNOだと、3000円未満で購入できる。

 ADKは仕様が公開されているため、久川さんはまず、必要最低限の機能を実装したものの開発を開始。Happy Nanoとして2880円で販売したところ、見事完売した。

Happy Nanoを手にする久川さん。とても小さくできている

 ユーザーがさまざまなガジェットを制作して、それを公開してくれ、そこから派生してさらにコーヒーメーカーや家の電気をリモート操作する装置を作る人が出てきた。

 開発者としてはそういう流れはとてもうれしかったが、そこにPSE認証の問題が露呈した。日本国内では電化製品は電気用品安全法の適用を受ける。これは電化製品の安全性の確保を目的としており、技術基準に適合した製品にはPSEマークが表示される。身近なところではACアダプタに表示があるはずだ。

PSEマークは表示する製品の品目によって2種類ある

 つい最近、パナソニックがスマートフォンを使って外出先からでもコントロール可能なエアコンを発売しようとしたところ、PSEはリモートからの電源操作に対応していなかったため、適合が得られず、やむなくリモート操作機能をなくして販売するといったことが起きた(参照記事「帰宅前にエアコンON」はNG? パナソニックがアプリの仕様を変更)。

 人のいないところで電源を操作した場合、何らかの不具合が起きてもすぐに対応できない可能性もあり、結果として、このような自作デバイスが火災などのトラブルを招く要因になるとも考えられる。

 ユーザーからの反響を受けて、久川さんはHappy Nanoを量産することに決めた。しかし、量産にはさまざまなノウハウが必要になり、実際に量産するまでにさまざまな問題を解決しなければならなかった。それまで手でハンダ付けしていたものを、表面実装部品を利用することにした。が、それにはリフロー炉というものが必要になる。(ちなみに、リフロー炉は購入すると高額なため、ホットプレートを使用している人もいるという。実際にAmazonでもリフロー炉として使っているレビューが入っている製品が存在するのは面白い)

 しかし、表面実装の部品を手で載せるのはかなりの重労働となる。そこで、FabLabの協力を得て、チップマウンターを借りる話を進めた。電気工学のプロの人にきちんと検証をお願いし、コンサルティングを受けた。これを自分のノウハウとして吸収できたのもメリットだったという。

 そして久川さんはこうまとめる。

 「量産を行うならば、ネガティブなフィードバックがあることを理解し、それらを受け入れた方がいい」と。そして、「次は皆さんの番です」と締めくくった。

 ここで久川さんは、普段から付き合いがあるという中学2年生の枝川さんにバトンタッチし、枝川さんは、緊張の面持ちでプレゼンした。

中学2年生の枝川さん

 枝川さんは中学2年生だが、電子オルゴールの制作やテルミット反応の実験を行うなど、大人顔負けの科学好きで、これからはArduinoなどのガジェット制作、Androidアプリの開発に挑戦していくそうだ。

 プレゼン後、久川さんからAndroidアプリの参考書籍を手渡された。

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