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» 2012年10月29日 12時29分 UPDATE

頭脳放談:第149回 Intelの投資先に見るIT業界の栄枯盛衰

Intelの投資事業部門「Intel Capital」が投資に関するイベントを開催。Intel Capitalの投資案件を見ると、現在のIT業界の栄枯盛衰が見えてくる

[Massa POP Izumida,著]

Intelの投資事業部門「Intel Capital」が投資に関するイベントを開催。Intel Capitalの投資案件を見ると、現在のIT業界の栄枯盛衰が見えてくる

 Intelの投資事業部門「Intel Capital(インテル キャピタル)」が13回目の「Intel Capital Global Summit」というイベントを開催し、10社に4000万ドル(約32億円)の投資を発表したそうだ。4000万ドルというのは庶民には巨額であるが、しかしIntelともなると、何かインパクトのない金額に思えてしまう。

 実際、Intel Capitalは2011年に5億ドル以上もの投資をしているそうなので、その総額と比べると、にぎにぎしい「サミット」でわざわざ発表するほどのものでもないようにさえ思えてくる。「Intelにしてお金がなくなったのか?」というと、そんなことはないだろう。Intelは、直近の四半期でも着実に利益を出している。

 だいたいIntel Capitalがへこんでいたら、イベントに1000人もの人、たぶん、まず間違いなくお金が欲しいビジネスマンばかり(だと想像する)が集まってきたりはしないだろう。投資する側も、投資してもらいたい側も、お金の匂いがしないところに寄り付いて社交などしないものだからだ。想像するに、4000万ドルというのは、Intel Capitalにしたら、「今回は、よい案件をあまり多くは発見できなかった」ということにつきるのではないだろうか?

 やはりこのところの経済の減速、不活性化が影を落としているのではないだろうか。Intel Capital自体は、ベンチャー・キャピタリストとしては立派にやっているように外目には見える。実際、いままでに300社以上の投資先が上場を果たし、200社以上が他社に買収され、と自身でその実績を謳いあげているくらいだ(当然、Intel Capitalはそれにより相当なキャピタル・ゲインを得たに違いない)。

 本業の半導体関連はもとより、インターネット関連など非常に幅広い分野に投資していて、そのなかには関連性が一瞬では分からないような分野の会社もある。だが、広い意味でIT産業「全体」の発展に資するような将来性のある会社に投資しているように見える。なかなか立派なものだ。きっと門前市をなすような「投資先候補」の売り込みの中から、これはという会社に投資しているのだろう。また、自らも目利きとしての自覚があって「グローバルに投資先を探している」に違いない。そのIntel Capitalにして、今期は比較的小粒の投資先しか、見つけられなかったのではないかと想像する。

 まず、投資先の分野を見れば、過半数がインターネットというべきか、クラウドというべきか、新たなサービスやサービス・インフラを提供するような企業である。エンターテインメント系ということでゲーム関連も2社入っているが、残念ながら半導体は1社でしかない。また、地域を見てみれば、Intelの足元である米国は4社、それ以外の6社はインド、中国、ブラジル、韓国、台湾と新興国中心で、欧州と日本はない。このあたり、経済状況というか、起業マインドの持ちようがそのまま反映されているようだ。

 唯一、半導体企業で出資を受ける予定(ほかの9社は決まっているが、この会社は発表までに間に合わなかったようなので、「予定」とある)なのが、台湾のFocalTechだ。タッチパネル用のコントローラIC、TFT液晶のドライバICなどを手掛ける会社だ。旬といえば旬のデバイスだろうが、すでに多くの企業が手掛けており、分かりきった市場となっているので、ここでどのくらい面白い商売ができるのか、筆者にはよく分からない。

 当然、Intel Capitalは「よく分かって」投資しているのだろうが。FocalTechは、もともと液晶の表示側から始まった会社のようだが、「中小型液晶 = タッチパネル付き」という時流にのってタッチパネル用のコントローラをメインに据えた会社らしい。ビジネスの軸足は中国ローカルにあるようで、これまた詳しいことは分からない。Intelと液晶というと、IntelがシャープのIGZO液晶向けのプロセッサを開発するというニュースが、一時流れていたのを思い浮かべる。何かそのあたりの仕掛けとも連動させる気があるのだろうか? それとも単なる投資先でそちらとの関連性はないのか? これまた投資の話だけからはよく分からない。

 たぶん、投資を受けた側は「Intelから投資を受けた」ということで、若干なりとも信用度が上がり、それぞれの国の市場でプレゼンスを増して、いずれは上場というようなシナリオを描いているに違いない。

 しかし、いまに始まった話ではないが、半導体設計のベンチャーに勢いのあるところが出てこない。半導体が停滞すると、新しいテクノロジもそのうち枯渇して、巡り巡ってIT業界全体も停滞するのではないかと思うがどうか? とっくにそんなデバイスに依存するようなステージは超えてしまったのか? そうじゃないように思うが。

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Massa POP Izumida
日本では数少ないx86プロセッサのアーキテクト。某米国半導体メーカーで8bitと16bitの、日本のベンチャー企業でx86互換プロセッサの設計に従事する。その後、出版社の半導体事業部などを経て、現在は某半導体メーカーでヘテロジニアス・マルチコア・プロセッサを中心とした開発を行っている。



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