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» 2012年11月12日 15時14分 UPDATE

勢いに乗るベンチャー「トライフォート」に聞く :「決められたモノを作る受託とは違う」、スマフォ受託が儲かる理由

ソーシャルアプリの受託開発で創業したトライフォートに、好調の理由を聞いた。

[西村賢,@IT]

 「うちが作ったものは、すべてヒットしますよ」

 気負った風もなく、当然のことのようにそう言い切るのは、2012年8月に法人登記を済ませたばかりのベンチャー企業、トライフォートの共同創業者の1人、小俣泰明氏だ。自信たっぷりに言い切るのには理由がある。

 ベンチャー・キャピタルなど外部からの資金調達をすることなく起業したトライフォートは、3カ月目にして、すでに正社員・業務委託社員を含めると50人超の陣容を構えるほど急成長中。東京・西麻布のデザイナーズマンションの3室に構えたオフィスは、すでに人が溢れ出しそうな勢いで、間もなく移転を計画している。案件受注先のクライアントも、大手企業名が並ぶ。作るのはソーシャルアプリ。FacebookやiPhone、Androidなどのプラットフォームを中心に展開していて、大規模なサーバ群をデータセンターに用意する必要があるものもあるという。

 国内・国外ともに一部ソーシャル系で株価不振や売上頭打ちなど失速が伝えられることも少なくない昨今だが、トライフォートは好調そのもののようだ。スマフォとソーシャルを得意とする受託開発市場で急速な立ち上がりを経験しているまっただ中の共同創業者の2人に話を聞いた。

tri-photo01.jpg 株式会社トライフォート共同創業者でCVO兼CTOの小俣泰明氏(左)と同CEOの大竹慎太郎氏(右)

決められたものを作る受託開発とは違う

 小俣氏は、トライフォートの案件は、従来の意味でいう「受託開発」とは違うという。

 「決められたものを作る受託開発と違って、サービスやアプリの企画も顧客と一緒にやります。うちが作ったものは、すべてヒットしますよ」

 サービス開発の相談を受けて、企画の段階から深く入り込む。そして、その携わり方も、顧客の希望を聞きながら提案する下請けというイメージと異なり、顧客と一緒に新しいプロダクトを作り出すパートナーのような存在という。むしろ、小俣氏の口ぶりからは、開発を委託する側と案件を受注する開発会社の主導権が逆転しているケースがあることも感じ取れる。案件は選べるほどたくさんあるというのだ。

 「最終的に強いのは技術力がある人間です。今は仕事が選べる時代なんです。Facebook連携がしたい、iOSアプリが作りたい、そういう会社はたくさんありますから。技術力さえあれば、どんな仕事も選べます」

 小俣氏は、前職のCROOZではケータイやモバイル向けのサービス開発を担当していた(参考記事:大手ITからベンチャー「CROOZ」への転身で分かったこと)。その当時から小俣氏に直接案件以来が来るケースも少なくなかったという。そうした案件は子会社として設立したCROOZ Labsで受けていた。CROOZ自体は自社サービスを展開しているが、より社外のパートナーと協力しやすい体制を整えるためだ。CROOZ Labsは順調だったが、「会社に属する価値が感じられなくなってきて、むしろ誰と一緒に何をやるかということのほうに価値があることに気付いた」ことが独立と創業を決めた理由だという。

 小俣氏とパートナーとなってトライフォートを創業したもう1人の共同創業者、大竹慎太郎氏は、新卒入社したサイバーエージェントで入社2年目に全社MVPを取るほどの名うての広告営業担当だった。業界で顔が広く、実績もある大竹氏がトライフォートにとって“ブランド”となり、順調に案件を獲得しているという。

実力のある個人や小規模のチームが“鍵”に

 前職で経験を積み、人脈などのネットワークを築いた実力派の中堅が独立して作った制作プロ集団――。そういう捉え方をするなら、「ソーシャル、スマフォ」といった成長産業に限らず、どんな業界にもよくある話のようにも思える。ちょうど米国の映画産業で、映画の配信会社よりもコンテンツを生み出せる制作プロダクションが強くなったのと同じで、制作や運用のコストが劇的に下がりつつあるIT業界では、トライフォートのような立ちあげて間もないプロ集団が相対的に強くなってきている。仕事が選べる時代だという小俣氏の言葉の背景には、そうした時代の変化があるのだろう。KLabやカヤック、チームラボといった企業群が、そうした集団だ。

 こうした集団の周辺には、フリーランサーも少なくない。

 「実力がある人はフリーランスとして案件を渡り歩いています。あるときはベンチャーに行ったり、起業したりもする。企業相手のコンサルティングでは、週に1度の定例会議に出るだけで20万円、30万円と報酬をもらったりもしています。実力があれば個人で大手企業に入り込める時代なんです」

 「実力があって、作れるチカラのある人間が対価を受け取るという意味で健全ですよね。むしろ、大手企業の社員や大企業のブランドというのは、客やファンを集めているだけにしか見えないこともありますね」

ソーシャル市場だから儲かるわけではない

 時代の波に乗るトライフォートだが、強みは技術力にあると言い切る。成長市場で労働集約型のビジネスをやっているわけではない、という。

tri-photo02.jpg 小俣泰明氏

 「ソーシャルサービスやモバイルアプリの開発をしている企業の有名どころでも、目も当てられない決算であることも多い。では、われわれが何が違うのか。なぜわれわれが受託で儲かるのかというと、2つ理由があると思います」

 「1つは技術者の違いです。トライフォートはスマフォやソーシャルを得意とする技術者の集まりです。ガラケーは完全に捨てていますから、ガラケー開発が得意というだけの人は1人も採用していません。SIer出身者も同じです。古いタイプの技術者は官公庁のシステムやWebに強い人が多いですが、こうした人達のうち、早い段階でモバイルやソーシャルに取り組んで来た人は少ないんじゃないでしょうか。SIerがカバーする範囲が時代に追いついていないんですね。だから、カバーしていない範囲が伸びていることを感じ取った優秀なエンジニアが、うちのようなベンチャーに来たりする。早稲田出身やオラクルのOBという人もいたりするんですよ。大手に入って安定した生活を送るほうがスキルもナマるし、会社にとって欲しい人材になれないという時代ですからね」

クラウドを使っていて勝てるわけがない

 「もう1つのわれわれの強みは技術の網羅範囲が広く、運営費、サーバの保守費を下げられることです。便利だからとクラウドを使っているのと、自分たちでインフラのことを分かってデータセンターのインフラ運用をするのとでは全然違います。例えば、RAIDコントローラの中にはバッテリーバックアップ付きのものがありますが、そういうことを知らない会社が意外に多いんですよ。あるいは出荷時にサーバのBIOS設定がエコモードになっていたりする。それで、本来1台で済むサーバを3台買うようなことがあったりする。それではパフォーマンスがフルに出せません。われわれはデータセンター事業者のIDCフロンティアと組んで、ラッキング、キッティング、BIOS設定までガッツリ一緒にやっています。データセンターも先日オープンした白河を選んだ。レイテンシが圧倒的に低いんですね」

 「クラウドを使ってソーシャルをやっているところは勝つ気がないんじゃないかとすら思えますね。われわれが1000万ユーザーをさばく案件規模でも、同じ初期投資だとクラウドでは100万人に対応するのもキツイでしょう。応答速度も1000msが達成できるかどうか。わずかな遅延がトラフィック減につながるという勝負をしているときに、そういう離脱率を許容していると勝率が下がります」

 勝率を上げるための技術的取り組みで妥協しない。こうした厳しさがあるのは、サービスの成否が顧客のビジネスの成否を決めていて、ときにレベニューシェアで取り組むこともあるからだろう。

ソーシャルプラットフォームの再編が起こる

 順風満帆。仕事は順調に回り、案件を持ちかけてくれる顧客にも恵まれている。しかし、意地悪な見方をすれば、ソーシャルの波に乗っているだけではないのか、そしてそれはバブルの様相を呈してはいないか。そう水を向けてみたところ、意外な答えが返って来た。DeNAやGREEといった個々のソーシャルプラットフォームの盛衰は関係がないというのだ。

 「今のソーシャルプラットフォームは間違いなく再編されていくでしょう。国内大手はiPhoneやAndroidといったプラットフォームに乗れなかったという政治的なところで終わりです」

 「ソーシャルプラットフォームに限りません。いまのIT業界で10年続くサービスを作るという発想が時代遅れです。アップルの売上の内訳を見ると5年前と今では7割も収益源が変わっています。たった5年です。アップルクラスの会社でもそういうことが起こっているわけです。10年続くサービスなんて考えたくもないですね」

 「CROOZではケータイ向けの検索エンジンを提供していて、人気も高かったのですが、グーグルが来て劣勢に立たされたように思います。CROOZリアルという、“リアル”と呼ばれたモバイル向けサービスもありましたが、Twitterが来て大きなシェアを獲得できたと言えなくなった。国内SNSはFacebookが来てユーザーを奪われ始めている。いつも同じ、黒船が来て負けるパターンです」

 「トライフォートという会社を作って本当にやりたいことは、常に技術の最先端を追いかけて続けて基礎体力を作る、そういうマインドをみんなで共有することです。自社だけでなく、ほかの会社と組んで、技術力を世界的なレベルに上げていきたい。そうすることで日本自体が強くなると思うんです。会社として作りたいものですか? それは間違いなくOSですね。AndroidもiOSも品質は高いとはいえない。日本はハードウェアは強くて、世界に通用するものを作っているじゃないですか。韓国はOS作れといってやってるわけですよね。日本でもそうした取り組みがあったほうがいいと思うんですよね。日本の大手ITの技術者は視野が狭い。旧態依然としていて、官公庁のシステムのようなところばかり見ている。国内で売り上げが立ってしまって、むしろ海外に出るほど利幅が薄くなる。それで日本から出ない文化になり始めている。そうした状況を変えていきたいですね」

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