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» 2012年11月30日 20時27分 UPDATE

IP Meeting レポート:インターネットは「ワイン」であり、日本は「クレイジーな国」だった

 11月19〜22日にかけて開催されたイベント「Internet Week 2012」の中のテーマセッション「IP Meeting 2012〜人のチカラ、インターネットのチカラ〜」から、特に印象に残ったトピックを抜粋する。

[太田智美,@IT]

 11月19〜22日にかけて、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)主催「Internet Week 2012」が開催された。Internet Weekとは、インターネットに関する技術の研究・開発・構築・運用・サービスに携わる人々が、最新動向を学び、議論し、理解と交流を深めるためのイベント。その中から、テーマセッション「IP Meeting 2012〜人のチカラ、インターネットのチカラ〜」をレポートする。このセッションでは、「通信業界の中と外からインターネットを眺める」というテーマでパネルディスカッションが行われた。パネリストは、業種も職種もさまざま。その中から印象に残ったトピックを抜粋する。

電話に未来はあるのか?

東日本電信電話 水越一郎氏 東日本電信電話 水越一郎氏

 1人目は、東日本電信電話 水越一郎氏。電話とインターネットの関係性とこれからの電話の存在について語った。

 現在の固定電話とインターネットのユーザー数を見てほしい。「固定電話からみたインターネットはうらやましい限りだ」と水越氏はいう。


固定電話とインターネットのユーザー数 固定電話とインターネットのユーザー数

 しかし、現在インターネット以上に伸びてきているのは、携帯電話市場である。グラフを見ると、ユーザー数が年々増加していることが分かる。同じ「電話」であっても、固定接続と移動体の接続を比べてみると、結果は明らかに違ってきていることが分かる。


携帯電話、IP電話を含むユーザー数 携帯電話、IP電話を含むユーザー数

 これらのユーザー数の遷移などから、水越氏は「固定電話は衰退期」「インターネットは成熟期」「携帯電話は成長期」であると推測する。

鉄道業界から見た通信の世界

JR東日本メカトロニクス 櫻井浩氏 JR東日本メカトロニクス 櫻井浩氏

 2人目は、JR東日本メカトロニクス 櫻井浩氏。「鉄道業界から見た通信の世界」を述べた。

 鉄道と通信の共通点は、2つあるという。1つは、ネットワークを構築している点。もう1つは、社会インフラであることだと櫻井氏は話す。

 一方で大きく異なる点は、対象物、事業ポリシー、技術革新、市場の伸びの4つ。その中でも、特に「事業ポリシー」はまったく違うという。

鉄道と通信の比較 鉄道と通信の比較

 鉄道は、第一に安全、言い換えれば「安全がすべて」といってもいい。鉄道業界では、「何かあったら止める」のが鉄則であり、車両の連結部が外れたなどの緊急時には一斉にブレーキがきくようになっているという。

 そのような業界から通信業界を見ていると、「あれだけ大きな変化がありながら、よく頑張っている」とは思うが、「うらやましくは思わない」というのが正直な気持ちだそうだ。鉄道業界のように、「安全が第一」である会社が通信業界のような取り組みは現実的にはできないと指摘した。

インターネットにはソムリエが必要

九州大学教授 実積寿也氏 九州大学教授 実積寿也氏

 3人目は、九州大学教授 実積寿也氏。実積氏は、「インターネットとは、ワインと同じである」と主張する。どのような意味か。

 例えば、インターネットに「保証」は求められない。品質も保証してくれなければ、インターネットが壊れたからといって対応もしてくれない。もしこれが、インターネットではなく冷蔵庫のような「家電」だとしたらどうか。故障したら修理をしてくれるし、品質もある程度保証してくれる。「“インターネットは永遠のβ版”といわれるように、インターネットには“品質保証”という概念がない」と実積氏はいう。「ベストエフォート」というマジックワードで、守られているのだ。冷蔵庫には、「今日までは少ししか冷やせませんでしたが、明日からきちんと冷えるようになります!」という商品はありえないが、インターネットではそれが許される。

 このようなことを考えると、インターネットとは「真の品質を知るのは至難の業」であり、ユーザーの満足度はインターネット単独のものではなく「周辺環境に大きく依存する」といえる。そこで同氏は「インターネットには、ソムリエが必要なのではないか」と提案する。「インターネットはワインと同じである。例えば、1000円のワインと1万円のワインを見分けるのは難しい。というのも、ワインを味わうときには、外部要因が大きく関わってくるからだ。誰と食べているか、どこで飲んでるかといった情報が、非常に重要となる。だから、『ソムリエ』がいる。インターネットもワインと同じで、ソムリエが必要ではないか」(同氏)。

名刺に「肩書き」はいらない、「役割」を書け

NECビッグローブ/JANOG会長 川村聖一氏 NECビッグローブ/JANOG会長 川村聖一氏

 4人目は、NECビッグローブ/JANOG会長 川村聖一氏。川村氏は、「自分を覚えてもらうためには『役割』を書くことが必要」という。日本の名刺には、肩書きが書いてある。しかし、アメリカでは「自分の役割」が記載されているそうだ。

 重要なのは、肩書きではない。「誰なのか」「何をやっているのか」だという。だから「肩書き」ではなく「自分の役割」を記載する。そうしなければ、覚えてもらえない。

 自分の役割を明示すれば、それについてどんどん尋ねられるようになる。川村氏は「日本でのISP事業ってregulate(規制)されている?」「日本ってIPv6先進国じゃなかったっけ?」「香港やシンガポールはやりやすいけど、日本は難しいよね」と実際に聞かれたそうだ。「もし、これらのことに対してポジティブな答えがないのであれば、作りださなければならない」と同氏はいう。自分の役割にとことん貪欲に、食らいついていくことが重要なのかもしれない。

日本は、違法音楽ダウンロードを罰する「クレイジーな国」

インターネットイニシアティブ ランディ・ブッシュ(Randy Bush)氏 インターネットイニシアティブ ランディ・ブッシュ(Randy Bush)氏

 5人目は、インターネットイニシアティブ ランディ・ブッシュ(Randy Bush)氏。「日本は技術の共有を行う素晴らしい国であるが、インターネットを制限するクレイジーな国でもある」と語る。

 「例えば、日本にはポルノをホストした事業者を罰する規制がある。インターネットでは、探さなければポルノを見ることはない。しかし、街の書店では見かける。これは、理屈が通っていることなのだろうか? 避けようのない書店では売られ、避けられるはずのインターネットでは規制されている。私は、ポルノを支持しているわけでも、書店からなくせと言っているわけでもない。ただ、理屈が合っていないと言っているだけだ」(同氏)。

 ランディ氏は、続ける。「日本は、違法音楽をダウンロードすることに対して刑事罰を設けている。こんな極端な法律規制のある国は、他にない。こんなことをしても、誰にもいいことだとは思わない。『インターネットガバナンス』という用語があるが、大変危険だと私は思う。このような用語が、人々の考え方を規制しているからだ。インターネットは本来、“協力”と“連携”であり、“ヒエラルキー”ではない。競合社同士がパケットを伝達するために、日々協力している。このことは、日本の技術コミュニティが世界中のどこよりも強い。よく『中国のインターネットウォールはおかしい』と言われるが、まずは自分自身の国を振り返ってみるべきだ。アメリカだって、世界中で12万ものドメイン名をシャットダウンしていることを知っているだろうか。私が伝えたいことは、インターネットは慎重に育まれていくべきメディアであり、制限する対象ではない。ものごとには、良い点と悪い点がある。問題なのは、どうやってオープンな対話を作り上げ、それを維持していくかだ」(同氏)

 通信業界の「内」と「外」から見たインターネットの世界は、新しく、はっとさせられる世界だった。

 

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