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» 2013年02月25日 11時56分 UPDATE

頭脳放談:第153回 メニーコアはいろいろ、開発者はオジサンばかり

メニーコアってコアは何個から? ヘテロかホモか、メモリのコヒーレンシ命かどうかなど、メニーコアといってもいろいろ。シンポジウムに参加してきたオジサンたちはメニーコアで試行錯誤中。

[Massa POP Izumida,著]

 アベノミクスで円安が進んだおかげか、典型的な輸出産業と思われている電気・電子系は結構株価が戻ってきている。それでも「買ったときはもっと高かったのだし、全然取り戻せていない」などと言っているのは持株会で自社株を買った社員の面々かもしれない。「意外と輸出比率が低いから、円安が進んでも、実はさほど儲けが出ないのさ」などという会社もあるようだ。業界全体としてはまだまだ「カムバック」という感じがしない。当然、「学会」「セミナー」「展示会」などといった催し物など行きたいと言おうものなら、出張規制で認められないと上司に突っぱねられることもシバシバだろう。経費の締め付けはいまだに厳しい。

 そんな昨今、シンポジウムなどと銘打つ催し物が開催された。いつの間にか「関係者側」に立っていた筆者の下に「参加者が多くて立ち見が出るようだったら、関係者は席を譲るように」などというお達しが来ている。このご時世である。フタを開けたら席を譲るどころか、ガラガラなんてことになるんじゃないか、などと気を揉みながら、会場になっている早稲田大学のグリーン・コンピューティング・システム研究開発センターへ向かった。ここは立派な建物である。建物だけでなく、真ん中に鎮座するスパコンが2機。建物の上にあるソーラー・パネルで電気を供給しているようだ。ただし、ソーラー・パネルで賄える電力はご愛嬌程度のようだが……。

 ここに、正面の大画面プロジェクタだけでなく、遠くの人もプレゼンが見やすいように後方にもモニタの設置されている大教室がある。こんな広い部屋が本当に埋まるのかなぁと、座って開始を待っていれば次々に人が入ってくる。関係者の端くれとしては、これは立たねばならんかも、などと気を揉んでいたら、外から椅子を持ってきて何とかなったようだ。立たずに済んだが、満席状態である。後で「定員に達して申し込めなかった」と言っていた人に会ったので、かなり人気があったようだ。

 そして「第2回 メニーコアシンポジム」がはじまった。発表の中心は、メニーコアをやっている日本の大学とベンチャー企業、「招待選手」の側には「大手代表」として東芝、ARM、マイクロソフトなどが登場。それぞれの立場で「メニーコア」を熱く語って結構盛り上がったのだが、残念ながらそれぞれを詳しく紹介している余地はない。

 だいたい「『メニーコア』って何個から『メニー』なの?」という「言語学的」疑問もあるのだが、どうも数ではないという点では見解が一致しているようだ。シングルとマルチは見れば一目瞭然なのだが、マルチとメニーの間にはいろいろな線引きがあり得る。自動車の税金のように排気量でバッサリ切れるようなものではない。それでもバッサリと出場者を分かりやすく2次元平面にマップするならば、軸は2つで、ヘテロかホモか、メモリのコヒーレンシ(データの一貫性)命か、コヒーレンシをなるべく考えずに済ますか、という感じになるかもしれない。

 ヘテロは「ヘテロジニアス」の略で、つまりは異なる種類のコアを並べたもの。ホモは「ホモジニアス」の略で、同じ種類のコアを並べたものだ。片や仕事の内容に応じて最適のコアを使い分けようという考え方であり、片や、同じコアを並べることで1つの仕事を誰に割り振ってもOKという考え方である。同じヘテロでもARMのように「小さい」ARMと「大きい」ARMというレベルから、それぞれ専用化の進んだものまでアプローチのレベルには差がある。ホモの側もすべてがホモではなく、別な種類をホストに担いでいたりするから、ある意味ヘテロな部分もあるので、取り組みを軸の上にプロットするならば選択の範囲はかなり広い。

 また、メモリのコヒーレンシにしても、「コヒーレンシをとらねばならないところ」はどのアプローチにもある。ただし、従来型のソフトウェアのマルチスレッド化からプロセッサ数を増やしてきたようなアプローチでは「ともかくコヒーレンシ命」的になりがちなのに対して、最初からメニーコアありきで出発したアプローチでは、なるべくコヒーレンシのような大変な割に本質の処理に関係ない部分は考えないで済む部分を可能な限り増やし、最後どうしようもないところだけちょこっとやろうという考え方もある。これまた、いろいろ。

 「第2回」というだけあって、すでにトレンドが決まってしまった感じはしない。まだまだ、各種のアプローチで試行錯誤中というところではないだろうか。そんな新分野の立ち上げへの期待もあり、経費の締め付けも厳しいなか、参加してきたオジサンたちが多数。質問に立った人々の所属を聞いていれば、デバイス側の人もいるが、応用側の人もいる。現状打破にはメニーコア化だろうと思っている人が多いからだろう。しかしオジサンばかりだな。若者、女性比率が低い。途中で「学生さんは手を上げて」などという呼びかけがあったが手を上げた人は数名か。こうしてオジサン達はマルチだメニーだなどと言って盛り上がっているのに、学生さんの電子デバイス離れは深刻なのか? そっちの方が大問題なのかもしれない。


Massa POP Izumida
日本では数少ないx86プロセッサのアーキテクト。某米国半導体メーカーで8bitと16bitの、日本のベンチャー企業でx86互換プロセッサの設計に従事する。その後、出版社の半導体事業部などを経て、現在は某半導体メーカーでヘテロジニアス・マルチコア・プロセッサを中心とした開発を行っている。
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