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» 2013年03月15日 17時16分 UPDATE

ゆとり世代が問う「好きなことをやって何が悪い!」(2):スーパー女子中学生エンジニアが、日本の教育を斬る

2月17日、Life is Tech ! 主催「Edu×Tech Fes 2013 U-18」が開催された。そこで行われた「驚異のプレゼンテーション」をレポートする。

[太田智美,@IT]

本連載では、Life is Tech ! が主催するイベント「Edu×Tech Fes 2013 U-18〜驚異のプレゼンテーション〜」をレポートする。Edu×Tech Fes 2013 U-18は、テクノロジーから教育を考え、教育からテクノロジーを考えるイベント。天才中高生が語るゾクゾクする3時間を、全7回の連載でお届けする。

女子中学生エンジニアが生み出した「見えるプレゼンタイマー」

 角南萌氏は、現在2年生。女子中学生エンジニアだ。海外生活での体験を基に、日本とアメリカの教育について語った。彼女は、アメリカで行われたプログラミングキャンプをきっかけにテクノロジの世界に目覚め、子どもの文化・教育研究所主催の「全国小・中学生作品コンクール(パソコン部門)」において文部科学大臣奨励賞を受賞、また、昨年リリースしたタイマーアプリ「見えるプレゼンタイマー」は1万ダウンロードを突破し『アプリ甲子園2012』で優勝している。

角南萌氏 角南萌氏

 「見えるプレゼンタイマー」のアイデアを思い付いたのは、昨年の今ごろ。学校でディベート大会があり、時間配分を管理するためのタイマーが欲しかったという。しかし、App Storeでアプリを検索したところ、数字でカウントするタイマーしか見当たらなかった。彼女が欲しかったのは、プレゼンテーションの時間配分が一目で分かる、見やすいタイマー。そこで角南氏は、自分が欲しい理想のタイマーを作ることにした。こうしてできたのが、「見えるプレゼンタイマー」だ。2012年の春ごろから作り始め、ゴールデンウィークや夏休みに集中して作ったという。彼女がアプリを作成して得た一番の感動は、自分のアイデアが形になって、iPhoneアプリとして認められ、自分や友達のiPhoneに入っていること。「見えるプレゼンタイマー」は、世界中でこれまでに約4万人に使われている。

iPhoneアプリケーション「見えるプレゼンタイマー」 iPhoneアプリケーション「見えるプレゼンタイマー」

小学生時代、生活にコンピュータが入ってきた

 角南氏は、生まれつきデジタルな生活を送っていたわけではなかった。小さいころは、むしろアナログだったという。

 彼女が生まれたのは、1998年。あのカラフルなiMacが発売された年だった。彼女の家にもそのカラフルなiMacはあったが、小さいころはあまり触らせてもらえなかった。

 そんな彼女の生活にコンピュータが入ってきたのは、角南氏が小学校2年生のとき。父親の転勤で、海外に引っ越したことがきっかけだった。アメリカのカリキュラムでは、タイピングの学習やオンラインでの宿題があったため、「勉強なら仕方がない」と両親が認めてくれたのだそう。こうして、彼女の家でもパソコンが解禁された。

 パソコンが解禁されると、角南氏はアメリカで広く使用されている「Raz-Kids.com」を使い、英語の勉強を始めた。Raz-Kids.comは、英語のナレーションに合わせて少しずつ難しい本を読んでいくことで、英語の本が読めるようになるという教材だ。3年生になると、友人との遊びにもコンピュータが入ってくるようになった。友だちの間では、Webサイトを作るのが流行したという。好きな写真をアップし、自分だけのコンテンツを作ることに夢中になった。そして、彼女の10歳のお誕生日にiMacを、クリスマスにiPhoneを両親がプレゼントしてくれた。小学4年生のとき、再び父親の転勤があったが、iMacとiPhoneのおかげで前の学校の友達との連絡も、途絶えることはなかったという。また、これらのプレゼントは、勉強や連絡ツールとしてだけでなく友だちとの遊びにも使われた。例えば、ミュージックビデオを作るときに、大活躍したという。

Webサイト

 小学6年生になると、彼女の通っていたニューヨークの学校では、生徒全員にMacBook Proが配られることになっていた。学校に通う生徒たちは、このときがくるのをずっと楽しみにしているようだ。生徒には1人1人に学校ドメインのメールアドレスが割り当てられ、学校からの連絡や宿題はほとんどが学校のWebサイトを通じて行われた。質問があれば、直接メールで先生のサポートが受けられ、メールのマナーもきちんと教えられる。また、校内にはテクノロジ専門のヘルプデスクがあり、エラーやトラブルがあるとすぐに相談に乗ってもらえたそうだ。もちろん、WiFiも完備されていた。

すべての授業でITが活用されるアメリカの教育

 アメリカでは、ITはコンピュータの授業だけでなく、すべての授業で活用されているという。例えば、理科や社会の授業では、動画編集ソフト「iMovie」や画像編集ソフト「Photoshop」といったソフトを活用する。また、オンラインの資料も豊富に用意され、ブリタニカの百科事典や研究機関が提供する有料資料も学校のアカウントを使いオンラインで利用でき、リサーチの役に立っている。

 また、セキュリティ面の指導も充実している。生徒がトラブルに巻き込まれないようインターネットの注意点を細かく指導したり、ネット上のいじめ問題についてもビデオを作り対策をしたりしていた。彼女が通っていた学校では、デバイスに制限をするのではなく、生徒の判断力と責任感を養うことに力を入れていたのだという。これだけ聞くと先進的に見えるが、これでも彼女の学校はニューヨークの学校においてどちらかというと保守的な学校だそうだ。ITの導入には慎重な意見もあったが、「ITのリスクから逃げるのではなく、リスクに正面から向き合い対応する力を付ける」という発想の転換をしたのだと彼女は話す。

 コンピュータは角南氏にとって、友だちとつながり、情報交換をし、創造する道具となった。そんなとき、Facebookの初期を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」と出会った。彼女は、一見なんの脈絡もない文字や記号の羅列が1つのプログラムとなり、数億人の人々を結び付けるパワーを持つことに感動した。そして、自分もやってみたいと思った。それ以来、アメリカで行われているITキャンプに参加したり、iTunesUの授業を通してプログラミングの勉強をしたりするようになったそうだ。

帰国して唖然とした日本の教育

 日本に帰国した彼女は、編入した日本の学校で教育を受け、カルチャーショックを受けたという。ニューヨークでは、コンピュータは教育に不可欠なツールであった。しかし、日本の学校では、勉強にコンピュータを用いることはなかった。なぜなら、日本の勉強は記憶をすることに重点が置かれているからだ。生徒は、先生が黒板に書いたことをノートに写し、それを暗記してテストする。角南氏は「一人一人のアイデアや創造性が無視されている」と感じた。

 小学生時代をアメリカの学校で過ごした角南氏は、クリエイティビティが無視された日本の教育を知り、違和感を覚えたという。アメリカでは、調査や考察、議論を行いながらプロジェクトを進めることが中心だった。そのため、ITが効果的に生かされていた。授業のスタイルも、先生が一方的に情報を伝えるのではなく、生徒同士や先生と議論や協力しながら進むものだった。いつも自分自身が主役であり、自分がやりたいことや知りたいことを勉強していた。例えば、日本の学校では、黒板に先生が書いた解釈をノートに書き写し、テストのために暗記しているが、アメリカでは1人1人の文章の解釈や分析をクラウド上で共有し、お互いにフィードバックを行っているという。

日本の教育とアメリカの教育

 「この違いの一番の理由は、日本では皆の関心が試験や大学受験に集中していることにあるからではないか。大学入試がペーパーテストだけで行われるため、良い結果を出すためには紙と鉛筆で暗記や計算にあけくれるしかない。日本の学校で創造力や表現力が後回しにされ、ITが教室で歓迎されないのにはこういった原因がある」と角南氏は言う。一方、角南氏は日本の教育の良いところも語っていた。「日本の教育の良いところは、計算力が付くこと。アメリカでは電卓を使うので、計算力は付かない。また、文化祭など勉強以外の場で生徒が主体的にできるところは魅力。アメリカでは良くも悪くも先生が一番やる気があるため、先生が張り切ってやってしまって生徒があまり活躍できない」(同氏)。

 日本の教育とアメリカで受けた教育を比べ、彼女は最後にこうまとめた。「計算力が付くと、テストの順位が上がる。これは、測れる学力だ。しかし、発想の新しさやコミュケーション能力など、測れない学力もあると思う。日本の中高生も、いつかは学校を出て、社会に出て、世界の人と情報やアイデアを交換し合い、新しいものを作り出さなければならない。そのときに、ITを使いこなせなくて、果たして自立した大人になれるのだろうか? ITは、アイデアを形にする道具である。子どもなら誰でも持っている『クリエイティブな発想や可能性』を広げてくれる、とてもためになるツールである。しかし、日本の学校が受験のための暗記学習に力点を置いている限り、ITが教室に入り込む余地はない。テクノロジの導入だけではなく、授業や試験の形そのものを改革しなければ意味がない。テクノロジを学んで終わりではなく、テクノロジをツールとし、興味があることを勉強したり新しいことを作り出す教育が必要。ITを使うか使わないか迷っている暇はない」(角南氏)。


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