人とコンピュータの未来 インタラクション2013レポートD89クリップ(60)(1/3 ページ)

さまざまな分野の研究者が、人と人、人と機械との間のインタラクションを研究しあうために集まる学会「インタラクション」をレポートする。

» 2013年03月19日 15時23分 公開
[高須 正和ウルトラテクノロジスト集団チームラボ]

 「コンピュータがこういう動作をしたら、人間はどう感じるか」「人間にxxをサポートしたいとき、コンピュータは何ができるか」などを研究するには、人間とコンピュータの両方を対象にしなければならない。「どう感じるか」についての研究発表は、論文だけでなく、実際に体感できるデモンストレーションがあった方が良い。

 年に一度行われている「インタラクション」は、さまざまな分野の研究者が、人と人、人と機械との間のインタラクションを研究するために集まる学会である。通常の学会のような口頭発表だけでなく、開発したプロトタイプを体感できるデモ発表が行われている。インタラクション2013は2月28日〜3月2日の3日間にわたり、お台場の科学未来館で行われた。人とコンピュータのかかわりは、どう進化するのか。デモ発表で見られた、さまざまな未来のインタラクションを体験してきた。

ロボットと共生する未来に向けて

 実際にロボットとともに暮らす毎日は、まだ先の話になるだろうけど、世の中にそういうことをまじめに考えている人たちがいて、研究成果が見られることにはワクワクする。

 ロボット掃除機のルンバや、スマートフォンの音声エージェント、カーナビのような形で、知能を持った機械は僕らの生活に溶け込みつつある。これから先ますます、さまざまな機械が知能を持ってロボットのようになっていくだろう。そのときに「どういう場面で、機械にどういう知能が必要とされるのか」について研究が行われている。

温かい手を持つ指相撲ロボットハンド

指相撲ロボットハンド

 目を引いたのは、モニタから手が突き出ているブース。このロボットの手は、ぷにぷにした人肌ゲルで作られ、フィルムヒーターで温められることで、まるで人間のような質感と温かさを持っている。“温かくて柔らかい機械”というのは普段触ることがないので、とても新鮮な感触がする。

 実際に指相撲をしてみると、力強さは指に劣るものの、かなり機敏な動きで、いくつかのルール(サーボの力がそれほど強くないので無理やり押さない、など)をこちら側が覚えて配慮すれば、十分に対戦を楽しめる。

 このロボットは、遠隔対話における存在感向上に向けた指相撲ロボットハンドの開発として、大阪大学中西研究室が展示していたもの。

 Skypeのようなテレビ電話で、ネットワークの向こうに相手がいるときに、こちら側にどのような装置を作ればより「ホントにつながっている感」が上がるかを検証する研究として、さまざまなロボットを作っている。

温かい手の「握手ロボ」

 もう1つ、「握手ロボ」も展示されていた。握りしめてみると、「温かさと柔らかさを感じるが、どことなく人間でないような感触もする」という微妙な違い。触覚における「不気味の谷」(機械そのものは不気味でないが、だんだん人間に似せていくと、ある瞬間にとても不気味に思える現象)なのかもしれない。

人格が移動する Morphing Agency

複数の家電の間を、同じ人格が移動する

 このムービーは慶應義塾大学情報工学科今井研究室のMorphing Agency。家電製品に目玉と手足を付けて、キャラクターを表現し、そのキャラクターが人間を助けてくれる。

 確かに、車や家電のような機械に目玉が付くだけで、何かの人格がそこに宿っているように見えて、反応したくなる。実際には機械から、自動で決められた指示の声が出ているにしても、そこに「初音ミク」のようなキャラクターがあった方が、指示や操作をコミュニケーションしやすくなる。家にさまざまなキャラクターがあふれる世界は、「トイ・ストーリー」や「ナイトライダー」のようだ。

 ムービーでは調理をするときに、「最初に冷蔵庫から食材を取り出す」ときには冷蔵庫が人格を持ち、「次に電子レンジで温める」ときにはその人格が電子レンジに移る。

 目玉と手で表現される人格が、さまざまな家電の間を渡り歩く研究だ。同じく今井研究室が展示していたのが別の研究がBReA。同じ目玉と手を使って、画面の中と外側で人格が行き来する。

画面から人格が飛び出てくる

 残念ながらデモの調子が悪く、僕が見たときは液晶ディスプレイに目玉が表示されなかったが、画面内のエージェントが外に飛び出てくるデモはかなり迫力があり、モニタが意思を持った感じがした。

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