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» 2013年03月19日 15時23分 UPDATE

D89クリップ(60):人とコンピュータの未来 インタラクション2013レポート (3/3)

[高須 正和,ウルトラテクノロジスト集団チームラボ]
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Webサービスやアプリケーションも

 目新しいデバイスを利用したインタラクションだけでなく、スマートフォンアプリやWebサービスなども出展されている。こちらの分野は通常の開発に近く、研究したプログラムを世の中に出している研究者も多く、親しみが湧きやすい。

音楽共有の未来Songrium

 圧巻だったのが産総研濱崎 雅弘さん、後藤 真孝さんによるSongrium。昨年発表した音楽データの曲構造を自動で解析するサービスSongleに加えて、新たに開発されたWebサービス。Vocaloid楽曲では日々多くのn次創作が生まれ、ヒット作品は次のヒット作品を生んでいる。広大なn次創作の世界をたどりやすくするツールがSongriumだ。

 ニコニコ動画上の動画データには、さまざまなタグが付く。タグをうまくたどっていくことで、「同じ作者の別の曲」や「同じ曲のカバー」などにたどり着くことができる。その、人間がタグをたどる行為を助け、さらにタグでは分かりづらい全体像を知ることができるサービスである。

ta_08d8960.jpg 「Pの次回作」「ミリオン曲」などのタグでつながっている様子が表示されている。

 タグによって示される曲と曲のつながりが可視化され、しかもその動画から派生動画がどれぐらい生まれたかを可視化することができる。

 2012年の夏からα版の公開を始めたサービスだが、今回のインタラクション2013での発表に向けて、ニコニコ動画を見ながらSongriumが利用できるChrome上の機能拡張もリリース。音楽の作り方や楽しみ方すべてがコンピュータで変わっていくことを、開発者の後藤さんは研究している。過去のニコニコ学会βでの講演も大人気だったのでぜひ見てもらいたい。

ボディスラムでスマホが震える?プロレス鑑賞用アプリ

 すぐにでも効果が見込めそうだと感じたのは、首都大学東京IDEEA Labが出展していた「プロレス興業における観客参加型体感アプリケーションの提案」。発表者自身が学生レスラーとして活躍しているとのこと。

ta_09d8960.jpg プロレスをみる際に使うスマホアプリ

 プロレス観戦時にリングが大きく揺れる、ボディスラムなどの技が発動した際に、観客の手元のスマートフォンを揺らす。実際に効果が見込め、一体感が上がりそうなアプリケーションだ。

ネガティブな言葉を言い換えるプログラム

 SNS上などでネガティブな言葉をぶつけられることはある。そのネガティブな言葉を、人間が見る前にコンピュータが補正してくれる研究が、明治大学宮下研究室が発表していたこのプログラム。

 元のネガティブなフレーズ「雨だ.死にたい.座れないし腹立ってきた.不幸だな.周りの奴らの話声うるさいし.うぜぇ.死ねよ.」の文章が、どの程度言い換えられるかというスライダーを操作すると、このようにハッピーに変わる。

ta_10d8960.jpg ポジティブさMAXの発言に入れ替わる

 ほかにも、ツイートの末尾に「われわれの世界ではご褒美です」「元気出そう!」など、ランダムにポジティブなフレーズを追加することでダメージを減らす機能も。自分のタイムラインでもぜひ試してみたい、公開が期待される研究だ。

未来のカメラが見られる カメラでのプログラミング

 数年後の未来が見えたのが、慶應大学湘南藤沢キャンパス筧康明研究室のOurcam。ビジュアルプログラミング言語をカメラ内部に仕込み、カメラを使ってプログラミングを可能にする研究だ。

 デモではスマートフォンで構築していたが、「モノクロ化する」「結果をFlickrで共有する」「絞りを優先する」など、カメラに対する命令をカメラ上で、撮影前にプログラミングできる。

 しかも、画像のアップロード時に「どういう設定で撮影したか」がインターネット上で共有され、誰かが再利用することができる。

ta_11d8960.jpg カメラ上の命令を組み合わせてプログラミングする

 デジタルカメラは進化し、写真を撮る行為と、撮った写真を使う行為が近くなってきているのを感じる。新型のカメラが出てくるたびに、写真にさまざまな効果が付け加えられたり、カメラから直接インターネットに写真をアップできたり、エフェクトが付けられたりする機能が付加されている。Exifのように、写真の設定や条件などを共有するフォーマットも普及している。

 その延長線上にカメラがプログラムをする環境になり、写真が「それをどう作られたか」を含めて共有する時代は、確かに来る予感がある。

インタラクションが目指すもの

 インタラクションは、コンピュータと人間とのかかわりを総合的に対象にしている。僕らを取り巻く多くのものがソフトウェアで制御されるようになってきたことにより、コンピュータを相手に何かをする、人間同士のコミュニケーションにコンピュータが介在する機会はますます増えてきた。スマートフォン、SNS、検索エンジンといった、近年僕らの生活を大きく変えたものは、まさにインタラクションの対象範囲である。コンピュータの活躍する場所が増えることによって、ますます世界は便利で楽しいものになっていくはずだ。

 デモ発表で扱われるような技術は、いろいろな人に体験してもらって、フィードバックを得ることで進化するようなものだと思う。インタラクションはここ数年、最終日のデモ発表を科学未来館で一般公開している。未来の体感を味わえるのはすごく楽しい。インタラクション2014でデモが公開されるようなら、ぜひとも体験してもらいたい。

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著者プロフィール

高須 正和 @tks

ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β幹事

 趣味ものづくりサークル「チームラボMAKE部」の発起人。未来を感じるものが好きで、さまざまなテクノロジー/サイエンス系イベントに出没。無駄に元気です。

 第4回のニコニコ学会βシンポジウムを4月27、28日(土-日)幕張メッセにて行います。今回は、全国のものづくり工房が連続して発表する「FAB100連発」という企画を予定しています。すでに、一般参加の発表枠「研究してみたマッドネス」「ポスターセッション」の自薦/他薦を受け付けています。請うご期待!


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