ビッグデータインフラのパズルを埋めるラインアップと「5つのシナリオ」Database Expertイベントレポート(1/2 ページ)

近いうちに多くの企業がビッグデータ活用企業になる――その時あなたの会社はどうする? 今年の「Information On Demand Conference Japan 2013」はビッグデータ活用をより手軽に、身近にするための情報が多数見られたようだ。

» 2013年04月19日 17時20分 公開
[加山恵美@IT]

 2013年4月11日、日本IBMは同社情報管理製品の年次イベント「Information On Demand Conference Japan 2013」を開催した。基調講演にはIBMコーポレーション ゼネラル・マネジャー インフォメーション・マネジメント ソフトウェア・グループ Bob Picciano(ボブ・ピッチャーノ)氏(写真)が登壇し、ビッグデータ活用の有効性や関連する新製品を紹介した。

資料で見る企業のビッグデータ対応の現状

 IBMがオックスフォード大学と共同で実施した調査資料によると、「データ分析により競争優位を確保している」と回答した企業は2010年に37%だったところ、2012年には63%と増加している。ビジネスにおいて「分析」が競争力確保には欠かせないものとなりつつあることがうかがえる。

 しかし、分析対象としてビッグデータに手を伸ばせている企業はまだそう多くないようだ。同じ資料でビッグデータに関する取り組みの段階で分類すると、24%が情報収集中となる準備段階、47%が戦略や計画策定中となる検討段階、22%が試行段階、高度な分析を活用している実行段階となるとまだ6%に過ぎない。

 ピッチャーノ氏は「リーディング・カンパニーはビッグデータを活用して機を逃さず価値を提供している」と言う。そして、現在そこまで到達している企業はまだそう多くないものの、検討や試行段階の予備軍が多くいることから、近いうちに実行段階に到達する企業は確実に増えていくだろうと予測する。

 ただし、ビッグデータはそう簡単に扱えるものではない。データが大量であるだけではなく、多彩でつかみどころのないものも含め、統合的に把握し分析する必要がある。業務システムにあるような定型・構造型のデータだけではなく、ソーシャルにあるデータ、機器(センサー)が生成するデータ、音声や動画データなどもその対象となる。IBMはこれを「ビッグデータの特性、4つのV」として4つのキーワードでまとめている。ボリューム(Volume)、多様性(Variety)、スピード(Velocity)、正確性(Veracity)である。

ビッグデータ対応5つのシナリオ

 今まで企業システムが対象としてこなかったデータに対応する必要があるといっても、率直なところ、多くの人にとって「何から始めたらいいのか?」が悩みの種となるだろう。ピッチャーノ氏はこうした悩みを解消すべくビッグデータを活用するための5つのシナリオを提示した。

(1)ビッグデータを可視化し探索する 社内外に点在するビジネスに関するデータソースやシステムを探索し、可視化する。これにより、意思決定プロセスを改善する

(2)顧客に関する視点を広くする MDMやCRMなど、顧客に関する既存の情報源にソーシャルな情報も組み込むことにより、情報を幅広く収集する。顧客の購買行動や指向など、より理解が深まる

(3)セキュリティーをインテリジェントに改善する ソーシャル、電子メール、センサーなど新しい情報源を分析することで、脅威や不正行為をより早く検知できるようにする。より賢い防衛力を持てるようになる

(4)マシンデータを可視化し分析する 常に増え続ける複数のマシンデータやログデータをリアルタイムで分析し、故障を予見したり、データから相関関係を見い出せるようにする

(5)データウェアハウスを拡張する 分析できるデータの種類を増やす、ストリーミングデータを処理できるようにするなどして、データウェアハウス機能にビッグデータのテクノロジを拡張する

 こうしたシナリオを実行に移すにはテクノロジが必要になる。どのような技術や製品を組み合わせればいいか、ピッチャーノ氏はそれぞれに対応するIBMのテクノロジを示した(図)。

 別の視点から示すと下図となる。それそれを挙げると、データの一元化を行う「InfoSphere Data Explorer」、リアルタイム分析を行う「InfoSphere Streams」、Hadoop構築の「InfoSphere BigInsights」、データ分析の「DB2/PureData for Analytics」。特にストリームデータ処理に対応した「InfoSphere Streams」を持つことで、リアルタイムに多数の情報を分析し、次のアクションにつなげられる点が、IBMの提供する製品群の特徴的な部分である、とピッチャーノ氏は強調する。

 重要なのはテクノロジだけではない、と氏は指摘する。膨大で多彩なデータからビジネスに有用なデータやデータの相関関係を見いだすのは、やはり人間のスキルと総合力である。昨今注目されている「データサイエンティスト」としての資質を持つ人材を持つことも重要であるという。

 「企業内データ分析を最大限活用するにはプラットフォーム構築に加え、専門家のスキル蓄積や人材育成がとても重要になる。今後、企業の経営課題となるだろう」(ピッチャーノ氏)

 IBMはビッグデータ活用の人材育成にも力を入れている。オンラインの研修サイト「Big Data University」では開始2年程度で既に7万人が登録しているという。

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