ソーシャル企業が欲しがるエンジニアは「品質を重視」これから伸びる業界に乗り遅れるな!(2)(1/2 ページ)

今後、どの業界で活躍すべきか? 注目の分野はあるか? これからの成長が見込まれる業界を取り上げ、転職の事例とともに紹介する。将来の活躍の場を考える上で参考になれば幸いだ。

» 2013年04月24日 00時00分 公開
[福村志郎テクノブレーン]

 ここ数年のインターネットサービス領域におけるトピックとして、必ず挙がってくるものの1つが「ソーシャルゲーム」でしょう。

 数年前までは影も形もなかったのに、いまやその市場は国内で4000億円に迫る規模に成長しています。今後も、成長率は鈍化するものの安定した拡大が続くと予想されます。また、グローバルではさらなる拡大が見込まれています。

 ソーシャルゲームを含めたソーシャル業界で、現在、ITエンジニアの需要はかなり高い状態です。この傾向は今後も続くのでしょうか、そこでITエンジニアに求められるものとは何でしょうか。

 今回は、活況なソーシャル業界を取り上げたいと思います。

ソーシャル関連企業は、各社さまざまな事業展開を目指している

 ソーシャルゲーム業界で大量のITエンジニア募集が始まったのは数年前のことであり、皆さんもよくご存じかと思います。それまでなかった事業が新しく生まれたため、当然、人の需要も非常に多く出てきたのです。少し前の例では、1年間で社員数が3倍以上に増えたなどという企業も珍しくありませんでした。

 現在はどうでしょうか? 求人市場から見ると、まだ活況でありながらも少しずつ変化が生じているように思います。求められるレベルは上がっているというのが率直な印象です。要因としては、やはり市場の競争激化が大きいでしょう。

 ソーシャル関連各社が、事業展開の方向性やその打ち出し方をそれぞれ変えてきていることも、競争の激化が背景にありそうです。例えば最近では、以下のような打ち出し方をしている企業があります。

A社:当社はゲーム会社ではありません。人の集まるプラットフォームをさらに拡大し、プラットフォーム上でゲームだけではなく、いろいろなサービスを提供します!

B社:当社は「ソーシャル×○○」で事業を展開します。いまや世の中のスタンダードになってきている「ソーシャル」という仕組みを基盤に、サービスを提供します!

C社:当社はオリジナル企画のゲームと、人気アニメや漫画をゲームとして提供するIPものを軸に、より面白いゲーム作りを目指します!


 無料通話アプリやソーシャルラーニングなど、ゲーム以外のサービスを立ち上げてゲーム色を薄める企業、それとは対照的に新規タイトル投入でゲーム色を強める企業など、事業展開や求人市場への打ち出し方については各社さまざまな動き方をしているようです。

ゲーム開発の考え方にも変化が

 あるゲーム会社の創業メンバーで取締役のD氏は、ソーシャルゲーム市場の最近のフェイズと今後について、興味深いことを話していました。

D氏 「ゲーム市場については、やはりしばらくはソーシャルゲームでしょう」

 D氏が経営するゲーム会社は、もともとのコンソールゲーム開発を軸にしつつ、最近ではそのノウハウを生かしたスマートフォン向けソーシャルアプリの提供も始めています。

D氏 「ソーシャルゲーム自体は、一時期盛んにいわれていたような『射幸心を煽って』ユーザーをつかんでいた状況から、純粋にゲームとしての面白さでユーザーを引き付けるフェイズに移行してきています。そのような中、大手の老舗ゲーム会社もソーシャルゲーム市場に参入しています」

 確かに、ゲーム会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントが提供する大人気のソーシャルゲーム「パズドラ」(パズル&ドラゴンズ)は、あまりソーシャル要素が強くないといわれていて、実際にゲームとして面白いと思います。

D氏 「今は、『作れば売れる』という時代ではなくなっており、流れについていけないSAP(ソーシャルアプリプロバイダ)系企業は、徐々に淘汰されています。

 iPhone 6(次々世代)が出るころには、スマートフォン機器自体の性能はPSPやニンテンドーDSなどゲーム機器と変わらなくなるでしょう。そうなってくると『Web出身のソーシャルゲーム会社』vs.『ゲーム会社出身のソーシャルゲーム部門』の一騎打ちになるのではないでしょうか。その流れの中で現在は、Web出身の企業はゲーム会社のゲーム作りノウハウを、ゲーム会社はソーシャル活用のノウハウを、必死に吸収しようとしている状況が見受けられます」

 このように老舗ゲーム企業がソーシャルゲーム業界へ参入し、純粋にゲームとしての面白さや質の高さが求められる状況で、ソーシャルゲーム企業がゲームを作る際の考え方にも大きく変化が出てきているようです。これまでの「勢いで作れドンドン」という考え方ではなく、1つ1つの品質を意識し、開発手法を確立した中でしっかり作り込んでいくことが重要視されるようになっているのです。

 その傾向は、ITエンジニアの求人にも反映されています。QA(品質保証)のポジションはもちろん、すべてのポジションで「品質」や「開発手法」への高い意識が求められるようになっていると感じています。

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