基幹系も業務アプリもモバイル時代へ、CAが包括的ソリューションを発表CA World 2013レポート

CA Technologiesは2013年4月21日から3日間に渡って米ラスベガスで年次イベント「CA World 2013」を開催。この場で「CA MDM」やLayer 7 Technologiesの買収など、いくつかの新しい発表を行った。

» 2013年04月25日 13時19分 公開
[西村賢,@IT]

 メインフレームからクラウドまでクロスプラットフォームで開発や運用管理向けソリューションを展開するCA Technologiesが、矢継ぎ早に買収や新製品を発表した。注目はモバイルとDevOpsだ。

 2013年4月21日から3日間に渡って米ラスベガスで開催された年次イベント「CA World 2013」には、各国からCIOやパートナーなど約5000人の関係者が詰めかけた。

米ラスベガスで開幕したCA World 2013には約5000人の関係者が集まった

メインフレーム環境を直撃する「モバイル」の波

 エンタープライズ市場の中でも、CA Technologiesは独特の立ち位置を占める。1つは、収益の半分強がメインフレーム関連事業、約3割がエンタープライズ・ソリューションと、大規模システムを主軸にビジネスを展開していること。もう1つはソフトウェア専業であることだ。

 この立ち位置から見るITシステムが抱える課題は何だろうか?

 CA World 2013の初日に基調講演を行った同社CEOのマイケル・グレゴア氏(Michael Gregoire)は、基幹システムを運用する金融業や航空産業などの大手企業のCIOにこう語りかけた。

 「メインフレームから分散サーバへの移行は非常にゆっくりしたものだ。一方、外部では破壊的な技術が登場してきている。こうした技術変化を取り入れ、自らビジネスで変革を起こしていきたいのか、それともこれらに翻弄されることになってしまうのか?」(グレゴアCEO)

CA Technologies CEOのマイケル・グレゴア氏(Michael Gregoire)

 グレゴアCEOが指摘する外部環境の変化として大きいのは、モバイル、ビッグデータ、クラウド、ソーシャルの4つだ。これらは完全に独立した課題ではなく「セキュリティの確保」「認証・認可」が重要になることなど、インフラに求められる共通課題も少なくない。こうした隣接する課題を包括的に解決する、というのがCAのアプローチで、競合に比べたときの強みという。

 例えば、CA World初日に発表された「CA MDM(Mobile Device Management)」は私物、業務用を問わず、業務システムにアクセスするモバイル端末を管理する製品だ。遠隔でアプリやデータを削除したり、インストールを禁止するアプリのブラックリストを作成できる。

 すでにMDM市場はセキュリティベンダやキャリアが提供するソリューションが数多くあり、競合がひしめいている。実際、CA MDMもSAPが提供する「Afaria」のソースコードレベルでのライセンスを受けて自社ポートフォリオに取り込んだ製品だ。

 ただ、CAにとってMDMはモバイル関連ソリューションの端緒であり、年末に向けて順次リリースするという「モバイルアプリ管理」(CA MAM)、「モバイルコンテンツ管理」(CA MCM)、「モバイルサービス管理」など包括的な製品群まで含めて考えると事情は変わってきそうだ。

 「SaaSとはパブリックなものだ、というのは、この技術を表面的にしか見ていない。多くのアプリは外部に公開されることなど絶対にない。データはあまりに重要だからだ」とグレゴアCEOは指摘する。

 今後、業務アプリの多くはモバイルアプリとして実装されることになる。このとき従業員が使うデバイスに対して業務アプリの初期配布、更新を管理するプラットフォームが求められる。すでに多くのユーザーが慣れている「アプリストア」と同様のプラットフォームを業務アプリ向けに提供するのがCA MAMだ。一方、CA MCMは、どの端末で、誰が、どの文書を閲覧できるかという認証・認可を行い、端末間でコンテンツを暗号化した上でコラボレーションができる環境を用意する。

自社ソリューションを次々とSaaS化

 IaaSやPaaSなどパブリックなクラウドを提供する意図はないと明言するCAは、セキュアな環境で利用するSaaSプラットフォームに基幹システムや業務アプリの未来を見ているようだ。

 「(CA Platformという)共通基盤に乗ることで、データマイニングにも備えることができる。ビッグデータはバズワードで、アナリティクスこそがキラーアプリになる。CIOにとってセキュリティを保ちつつ、データを収集するというのは大きなチャレンジになる」(グレゴアCEO)。

 モバイルアプリ管理が同じCA Platformに乗ることで、ID認証管理基盤、サービスデスク、パフォーマンス管理といった企業が求めるソリューションが揃う。買収に関わる企業戦略を担当するシニア・バイス・プレジデントのロニー・ジャフ(Lonne Jaffe)氏によれば、CA Technologiesの買収規模は年間300から400億円に上る。過去3年の間に、クラウドセキュリティ関連、CIOのための次世代ツール、遠隔計測関連などに注目して多くの買収を行い、ポートフォリオを拡充してきている。モバイルアプリ全盛の時代には、パフォーマンス管理の先にデータマイニングへの道が続いている、というのがCAの描くシナリオだ。

 グレゴアCEOはセキュリティを高く保った状態でクラウドやモバイルを業務に取り入れることの重要性を繰り返して説く。

 「大企業はデータの10%以下しか管理できていない。自社社員がDropboxやEvernoteにセールス予測をアップロードしてないと思いますか? たぶんしています。何も悪気があるわけではなく、単純に生産性を上げたいだけなのです。でも、たった1台のデバイスが大きなリスクにつながるのです。これは我々には解決ができる問題です」

 DropboxやEvernoteの便利さに慣れた従業員に、それに匹敵する使い勝手の良いサービスを提供するのがCIOの急務と言えそうだ。

包括的ソリューションの優位性

 今回、CA Worldの講演やパネルディスカッションでは「オーガニックな」(有機的な)という言葉が随所で使われていた。買収を重ねた結果、継ぎ接ぎだらけのシステムになるのではなく、1つの有機体として包括的ソリューションを提供するのだという同社の意気込みが込められている。あるいは、「個別のソリューションを集めただけではシステムは本領を発揮しない」という競合製品に対する優位性の自信がメッセージとして込められているのだろう。

 CA Worldで買収が発表されたLayer 7 Technologiesも、そうした全体像の中で重要な役割を果たすことになりそうだ。

 Layer 7は「API管理」という比較的新しいジャンルの製品を提供している。外部向けのパブリックなAPI群、あるいはパートナー企業向けの準パブリックなAPI群の提供は、ユーザーに対して魅力的な新サービスを提供するために欠かせないステップであるばかりでなく、新たなマネタイズの機会を開く礎となる。

 Layer 7はMQやSOAなどメインフレームやオープン系のバックエンドの機能を外部にAPIとして公開するときのブリッジとなる製品だ。外部のモバイルアプリに対して、今や主流となったRESTやJSONといった技術でAPIを公開できる。APIによる企業間の連携やアプリのマッシュアップ、魅力的なクライアントアプリが開発できるようになれば、例えば、航空会社とホテルチェーンが連携して、旅行者が空港に着くなり発着情報がホテルに渡ってチェックインが完了するといった応用も出てくるだろう、という。

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