「ウェアラブル」の先にあるのは「トランスペアレント・コンピューティング」テクノロジは人の考え方も変える

Google Glassは、短期間のうちに、ウェアラブル・コンピューティング・デバイスの代表格のように語られるようになった。しかし、Google Glassが目指すのは、「ウェアラブル」を超えた世界であるはずだ。

» 2013年06月04日 19時16分 公開
[ITmedia]

 「『デジタルネイティブ』というカテゴリが実際に存在するとは思わない。単純に考え過ぎだ。若い世代が古い世代よりも、テクノロジを直感的に理解できるという考えは、誤りだと思う」と、ガートナーのアナリスト、スティーブ・プレンティス(Steve Prentice)氏は話す。

 そういうプレンティス氏も、若い世代を中心に、ソーシャルメディアが生活の一部となっている人たちが増えていることに注目する。「使いこなしている」というより、家電のリモコンやボールペンなどのように、単なるモノ、あるいは道具になっていると表現する。デジタルツールは、人がますます意識しないもの、自分の延長のようなものになっていくという。

 プレンティス氏に指摘されるまでもなく、デジタルガジェットの今後の進化は、ウェアラブルな世界にあると考える人は多いはずだ。さらに言えば、「ウェア」「ラブル」、すなわち「身に付ける」「ことができる」という表現では、まだ人間が意識して使うというニュアンスが残っている。もっと無意識のうちに使われるものへと進化していくはずだ。「トランスペアレント(透明な)」という言葉が使われるようになるのかもしれない。

 米アップルCEOのティム・クック(Tim Cook)氏は5月下旬、ウェアラブルなガジェットについて、「この分野には多数のガジェットがあるが、すごいものはない。メガネやバンドを着けたことのない子供に、着けさせるほどの魅力はない、この分野では多くの課題を解決しなければならない」といいながら、「探究する段階には達している。おびただしい数の企業が、この分野に参入するだろう」と話している

Google Glass紹介ビデオより

 さらに、Google Glassについては、「メインストリーム的な見方でいえば、(メガネはウェアラブルコンピューティングデバイスとして)考えにくい。手首(に着けるデバイス)は面白いと思う。手首は自然だ」と発言している。

 これはおそらく、トランスペアレントな世界を目指すとしても、現時点でどういう形で提供すれば、ユーザーに受け入れてもらいやすいのかを考えた発言だろう。

 もし、Google Glassで、視界の隅に画面を見せるのではなく、ターミネーターなどの映画に登場するように、視界と情報表示が完全に一体化できたなら、「トランスペアレント性」は手首に装着するデバイスよりはるかに高い。一方、手首に着けるデバイスでは、意識的に目を向ける必要があり、その方式自体のトランスペアレント性は高くない。それでも、不完全なメガネ型に比べれば、はるかにましだといいたいのだと解釈できる。

 明らかに、クック氏の発言は、ウェアラブルデバイスを今後1、2年のビジネスとして考えた場合に、どういう形が有利かを意識している。一方で、例えば10年後を考えれば、上述のように製品の「トランスペアレント性」が十分に向上することを前提とすれば、望ましいのはメガネ型だと、同氏も考えているのではないだろうか。

ガートナーでITトレンド分析を行うプレンティス氏が、前編と趣を変えて人とインターネット、デジタル機器、システム、マシンなどとの関係について語っています

 Google Glassについては、顔認識機能などがプライバシーの侵害につながりかねないと問題視する人々がいる。現時点で、これはたしかに重要な問題だ。だが、10年、20年の単位で考えていくと、人々のプライバシーについての考え方は、変わる可能性がある。上述のプレンティス氏も、そういうことを言いたかったのだと思う。

 プレンティス氏はまた、マシンやシステムが人間に代わって判断を行うことが増え、人間の存在価値が脅かされるといった将来の可能性について言及しています。「IT INSIDER No.11」は、プレンティス氏へのインタビューの後編として、人とインターネットやシステム、マシンとの関わりの変化について語っています。ぜひお読みください。

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