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» 2013年06月06日 16時32分 UPDATE

アラン・ケイ氏が考えるコンピュータリテラシー:「Dynabook」の背景にあった、知られざる物語

5月19日、Scratchのお祭り「Scratch Day 2013 in Tokyo」が開催された。

[太田智美,@IT]
阿部和広氏 阿部和広氏

 5月19日、年に1度のScratchのお祭り「Scratch Day 2013 in Tokyo」が開催された。Scratchとは、MITメディアラボが開発した子ども用プログラミング環境。コードを書かずに、ビジュアル的なインターフェイスでプログラムを組むことができる。津田塾大学/青山学院大学の非常勤講師 阿部和広氏は、多くの人の概念や言葉を引用しながらScratchの概念について語った。

 最初の引用は、アメリカの数学者シーモア・パパート(Seymour Papert)氏の言葉である。

Should the computer program the kid, or should the kid program the computer? ―― S. Papert

 シーモア氏は、教育用プログラミング言語「LOGO」の開発者であり、新しい技術が教育に与える影響を研究している。LOGOは、「構成主義(Constructionism)」の概念に基づいて作られ、誰かが「教える」のではなく、自らモノを作る過程で学べる環境作りを目指しているという。これと対になるのが「教示主義(Instructionism)」。教示主義は、自ら学ぶ「構成主義」に対し、先生が前に立って「教える」スタイルを指す。これに対し、シーモア氏は「モノを作る道具としてのプログラミング」を提唱している。

 また、パソコンの父 アラン・ケイ(Alan Kay)氏は、学校で学ぶ子どもたちの姿を見て次のように語る。「学校に行くと、コンピュータがたくさんある。子供たちは、それらのコンピュータを使って楽しく学んでいる。しかし、子どもたち自身が興味のあることをしているわけではない。子どもたちは、これで本当に成長できているのだろうか?」

 アラン氏が思い描く理想のパソコン「Dynabook」のコンセプト画を見てほしい。

1968年に描かれた「Dynabook」のコンセプト画。左がジミー、右がベス(推測) 1968年に描かれた「Dynabook」のコンセプト画。左がジミー、右がベス(推測)

 ジミーとベスが、屋外でコンピュータゲームをしている。コンピュータはネットワークにつながっており、対戦をしている2人の画面には同じ映像が映っている。「Dynabook」のコンセプト画として有名なこの絵だが、実はこの背景にはあまり知られていないストーリーがあった。

 ジミーとベスがやっているゲームは「SpaceWar」。宇宙船を撃ち落とし合う「宇宙戦争ゲーム」だ。ゲームをしているうちに、ジミーは宇宙船の動きがおかしいことに気付く。そして、ジミーとベスはこんな会話をした。「星の近くを飛んでいるから、宇宙船は重力の影響を受けるはずじゃない?」「この前、理科で習ったよね」「この動きは変だよ」「じゃあ、重力の影響で動きが変わるように、プログラムに組み込んでみよう!」。これが、アラン氏が考える「コンピュータリテラシー」である。コンピュータリテラシーと聞くと、パソコンで読み書きする能力やインターネットに関する知識をイメージしがちだが、実はそうではない。コンピュータは、どのようなメディアにもなり得る能力を秘めている。従ってその読み書き能力(=リテラシー)とは、コンピュータを使って課題を解決するだけにとどまらず、メディアを作り出す能力を持つことを意味する。

 アラン氏は、子どもたちのコンピュータリテラシー向上を支援するために、簡単にプログラムが書ける道具も考えた。「Squeak Etoys」という、非開発者向けビジュアルスクリプティング環境である。このSqueak Etoysを参考に開発されたのがScratchだ。2013年4月時点で、Scratchの登録ユーザーは世界で150万人、320万個の作品がアップされている。

 Scratchを開発したミッチェル氏は言う――「子どもたちが知的に活動しているのは、彼らにとって個人的に意味のあるものを組み立てているときだけだ」。

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