「自由の破壊、許せなかった」――米政府の情報収集、告発者は元CIA職員FacebookやGoogleなど各社は関与を否定

米国家安全保障局(NSA)などの政府機関がインターネット大手企業のサーバにアクセスして情報を収集していたとされる問題で、情報提供者の男性が6月9日、身元を名乗り出た。

» 2013年06月10日 18時05分 公開
[@IT]

 米国家安全保障局(NSA)などの政府機関がMicrosoftやGoogleなどインターネット大手のサーバにアクセスして情報を収集していたとされる問題で、情報提供者の男性が6月9日、英紙Guardianと米紙Washington Postの取材に応じて身元を明かし、「プライバシーや自由が破壊されるのは許せなかった」などと動機を語った。

 この問題ではGuardianとWashington Postが6月6日、NSAやFBI、英情報機関のGCHQが、Microsoft、Yahoo、Google、Facebook、PalTalk、AOL、Skype、YouTube、Appleの大手9社の中央サーバに直接アクセスし、チャット記録や写真、メール、ログ記録などを引き出していたと報じた。このプログラムは「PRISM」と呼ばれ、米ブッシュ政権時代の2007年から始まったという。

 両紙によると、この情報を提供したのはエドワード・スノーデン氏(29歳)。米中央情報局(CIA)の元技術アシスタントで、現在は軍事産業のBooz Allen Hamiltonに勤務。同社やDellなどを通じて少なくとも4年間、NSAにかかわってきたという。

 スノーデン氏は自らの意思で名乗り出ることにしたといい、「自分は間違ったことをしていないので、隠れるつもりはない」と語っている。米国で訴追されることも予想されるが、「自分の行動のために苦しめられることは分かっている。それでも、自分の愛する世界を支配している秘密の法律、不平等な寛容、抗うことのできない権力が一瞬でも暴かれるのなら満足だ」と言い切った。

 高給の得られる安定した職や幸せな家庭を犠牲にする覚悟で行動に出たのは、「良心に照らして、米政府が密かに築いた巨大監視マシンを使って世界中の人たちのプライバシーやインターネットの自由、基本的自由を破壊するのは許せない」との思いからだという。報道機関に提供した文書はハワイにあるNSAのオフィスでコピー。病気療養のためと告げて休暇を取り、香港のホテルに身を潜めていたという。

 一連の報道を受けて、Googleのラリー・ペイジCEOは7日のブログで「米国政府、あるいは他国の政府を我々のサーバに直接アクセスさせるようなプログラムには参加していない」と説明した。

 Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOも「米国あるいは他国の政府に対して我々のサーバへの直接的なアクセスを提供するようなプログラムには参加しておらず、参加したこともない」と強調。MicrosoftやAppleなどもメディアの取材に対し、米政府によるサーバへのアクセスを否定している。

 クラッパー米国家情報長官は8日に発表した声明で、「両紙が報じた監視活動は合法的に行われた」と強調。目的については「米国および同盟国に対するテロおよびサイバー攻撃を阻止するために必要な情報を収集すること」と強調している。

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