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» 2013年06月18日 09時58分 UPDATE

Zendesk CEO ミッケル・スヴェーン氏に聞いた:訪問営業ゼロで1万顧客を獲得――コペンハーゲンの小さな街から這い上がるまでの軌跡

Zendesk CEO ミッケル・スヴェーン氏にZendesk立ち上げ秘話を聞いてきた。

[太田智美,@IT]

 6月13日、Open Network Spaceで行われたランチミートアップで、Zendesk CEO ミッケル・スヴェーン(Mikkel Svane)氏にZendesk立ち上げ秘話を聞いてきた。Zendeskとは、クラウドベースのカスタマーサポートソフトウェア。DisneyやDell、Herokuをはじめ、現在3万社を超える企業が活用している。

 Zendeskは、2007年にデンマークのコペンハーゲンから生まれたスタートアップ企業である。コンサル会社でカスタマーサポートを行っていたミッケル氏らは、イケていない数多くのカスタマーサポート製品を見て「われわれの世代にとって魅力的な製品を作ろう」と決めた。しかし、当時のコペンハーゲンではまだ、スタートアップの文化ができあがっていなかった。周囲からは、真剣に相手にされるはずもなかった。

 しかし、彼らは決めていた。今やらなければ、もう年齢的にも挑戦は難しいと確信していたからだ。創業者のミッケル・スヴェーン氏、アレクサンダー・アガッシポア氏、モルテン・プリムダール氏の3人は、決意した。お酒を飲み、煙草を吸い、彼らのスタートアップ物語は始まった。

3人のZendesk創業者 3人のZendesk創業者

アメリカンドリームを夢見る毎日

 それからというもの、彼らは自分たちの信念を信じ、毎朝早起きをして、事業に取り組んだ。もちろん、定期的な収入はゼロ。年金としてためていたお金を切り崩しながら家族を養い、生活した。仕事部屋は、創立者の一人・アレクサンダー氏のアパートの一角。「今、私たちはどこの位置付けにいるのか」「うまくいっていないのは、どこなのか」「手放すべきものは、何か」ということを考えながら、忍耐強く耐えるしかなかった。

 そして、幸運が訪れた。本社をカリフォルニアのサンフランシスコに移し、ついに、アメリカのベンチャーキャピタリストから9000万ドルの資金提供を受けることができた。

なぜ、ベンチャーキャピタリストはZendeskに投資したのか

 Zendeskは、デンマークのコペンハーゲンから生まれた、いわば外国人ベンチャー企業である。英語もまともにしゃべれず、現地に友人がいるわけでもコネがあるわけでもなかったが、彼らは本社を移転し乗り込んでいった。その中で資金提供を受けることは、誰が見ても難しい挑戦だった。2008年、彼らは資金を獲得するために、営業に明け暮れるつらい日々を送った。

 そんな彼らがなぜ、アメリカのベンチャーキャピタリストから9000万ドルもの資金提供を受けられたのか。その理由を、ミッケル氏はこう話す。「サービスが迅速に成長していったことが一番の理由です。それから、シリコンバレーのいくつかの企業がわれわれの製品を使い始めてくれたこと。ベンチャーキャピタリストは、彼らの動きに注目して、われわれに目を向けてくれました」。

 一番最初の顧客は、通信会社のためのソフトを提供しているアイルランドの小さな企業だった。2番目は、ガソリンスタンドとコンビニのフランチャイズを展開するテキサスの企業。Zendeskにとって、それらの企業はもともとのターゲットではなかったが、グローバル展開を考えていた彼らにとってはうれしい出来事だった。

 さらに言えば、デンマークで起業した彼らのメインターゲットは、デンマーク市場ではなかった。Zendeskのターゲットは、「Zendeskを気に入って使ってくれる人」。「Zendeskを気に入ってくれた人は、友だちにそのことを伝える。すなわち、お客さまが伝道師となり、マーケティング活動を行ってくれるのです」とミッケル氏は話す。

訪問営業マンなしで、1万顧客を獲得

 Zendeskには、訪問営業マンがいない。収入の3分の1はセルフサービスモデル、残りの3分の2はインサイドセールスモデルで成り立っている。

Zendesk CEO ミッケル・スヴェーン氏 Zendesk CEO ミッケル・スヴェーン氏

 セルフサービスモデルとは、ユーザーが自らZendeskのWebサイトを訪問し、サインアップして製品を使い始めるモデルのこと。営業マンがわざわざお客さんのもとへ営業に行かなくても、自然とお客さんが付く仕組みだ。一方、インサイドセールスモデルとは、マーケティング活動によって行う営業活動のこと。「革新的な製品を持っていれば、こちらから営業に出向かなくても、自然とお客さんは付いてきてくれます。私たちは、ただ単によりよい製品を作り、その作る過程の中で幸運に恵まれました」(ミッケル氏)。

 また、Zendeskが成功した理由について、同氏は次のように述べる。「カスタマーサービスは、少し前までは主にFace to Faceで行われるものでした。しかし、世界中がネットワークでつながった今、カスタマーサービスの形も徐々に変わってきています。例えば、ユーザーはある製品を気に入れば、その製品について友だちや同僚、あるいはSNSなどで世界中にその製品の素晴らしさを広めようとします。またその反対に、悪い体験をすれば、同じく世界中に自分がいかに悪い体験をしたかを語ります。これは、人々に非常に大きな影響を及ぼします。私たちは、私たちのお客さまが顧客とより良い関係が築ける方法をサービスとして提供していいます。ソーシャルメディアが発達した今、カスタマーサービスの在り方に着目したことが、時代にマッチしたのかもしれません」(ミッケル氏)。

ターゲットは若い世代

 Zendeskのターゲットは若い世代である。ひと昔前であれば、決裁権のある会社の上層部のおじさんたちがターゲットとされていた。しかし、彼らはあくまでも若年層をターゲットにするという。なぜか。

 それは今、インターネットを通じてZendeskを実際に使う人たちに直接製品を訴求できるようになったからだと、ミッケル氏は述べる。ユーザーは、操作が簡単で、楽しくて、フレンドリーなものを求めている。実際に使うユーザーに直接そのことをアピールすることで、シェアを拡大しいていくという考え方だ。

 ZendeskのWebサイトやマーケティング動画を見ると、そのことがよく分かる。Zendeskのキャラクターは太った大仏であり、サービスを紹介する動画はユーモアにあふれている。フレンドリーなイメージを社風として押し出し、そのイメージはどのような製品をローンチするときにも使っているという。

Zendeskのキャラクター Zendeskのキャラクター

スタートアップの心構え

 最後に、ミッケル氏はスタートアップの極意を語った。

 「スタートアップの際、最新の技術を扱いながらどんどん進化させているつもりでも、ある日気付くとすぐ後ろに、小規模で迅速で柔軟なベンチャー企業が自分たちを追い越そうとしていることがあります。私たちは、スタートアップ企業です。でも、ときには、もう一度包括的に自分の企業を見直すことが必要かもしれません。どこをどのように変えるべきなのかということを、常に考え直しながら進んでいくことが大切です。

 例えば、こんなことがありました。1989年、ロマ・プリータ地震によりサンフランシスコのベイブリッジの一部が崩壊してしまいました。橋はすぐに修復され、今でも1日に何百万台もの車が古い橋の上を行き来しています。古い橋は、常にメンテナンスにお金をかけています。同時に、その橋のすぐ隣に、数億のお金をかけて新しい橋を建てています。これを、スタートアップに置き換えて考えてみます。皆さんが今まで構築していたものが崩れかけたり、可能性が見えなくなったりすることがあるかもしれません。そのときは、もう一度基本に戻り、まったく新しいものを構築する必要があります。それも古いシステムをメンテナンスしながら行うことが必要かもしれません。一度のみならず、何回も繰り返すことがスタートアップとして成功するカギとなるでしょう」(同氏)。

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