連載
» 2013年07月01日 18時00分 UPDATE

三国大洋の箸休め(3):「全米デビュー」のチャンスを逃したGoogle Glass

NBAの2013年ドラフトは「Google Glass」が全米のお茶の間デビューを飾る絶好の機会だったが、結局は失敗に終わった。その背景には一体どのような事情があったのだろうか。

[三国大洋,オンラインニュース編集者]

 米国時間6月27日夜に行われたNBA(米プロバスケットボールリーグ)の2013年ドラフトで、グーグルのメガネ型情報端末「Google Glass」が全米のお茶の間デビューを飾り損ねる、という出来事があった。

001.png Google Glassを装着したビクター・オラディポ(出典:The Verge)

 こちらの動画に出てくるのは、今年のドラフトで全体2位でオーランド・マジックに選ばれたビクター・オラディポ(Victor Oladipo)という選手。名門インディアナ大学出身のシューティングガードで前評判も高く、「上位5人に選ばれるのはほぼ間違いなし」とみられていた。だから、そんなオラディポの名前が2番目に呼ばれたのは特に意外ではない。意外だったのは、彼がドラフト本番の2日前から、Google Glassを着用して「一生に一度の経験」(本人談)となるこのイベントに備えていた、ということ。

 Google Glass着用者が撮影した、ユーザー視点の映像はすでにそれほどめずらしくもなくなっているが、着用者の姿が全米にしかもライブでテレビ中継されるというのはまだ見聞きしたことがない。もし実現していれば、また世界的に大きなニュースになっていただろう。

 このイタズラを仕掛けたのはThe Verge。ここ2年ほどIT・ネット系では恐らく最も勢いのあるニュースサイトで、とくにGoogle Glassについては早い時期から積極的に動いてきている。グーグル開発担当者の独占インタビューを他に先駆けて動画付きで掲載してみたり、スタッフにGoogle Glassを着用させてジャスティン・ティンバーレイクのライブに潜り込ませたり、といった具合。なお、この企てを「イタズラ」としたのは無論当方の推測に過ぎないが、記事の書きぶりからは、そんな印象も伝わってくる。動画内でオラディポに取材し、Google Glassの使い方を教えているのも同編集部のニライ・パテル(Nilay Patel)だ。

 The Vergeのこの「PRただ乗り企画」は結局未遂に終わった。NBA事務局からオラディポにGoogle Glassを外すよう「待った」がかかったのは動画中に出ている通り。それでも、「彼らが気付いた時にはもう手遅れで、USA TodayやSports Illustrated、ESPNといった有力媒体が、Google Glassをかけたオラディポのことに触れていた。待ったをかけたNBA自体も、『オラディポが会場に向かうバスの車中でGoogle Glassを着用している』と、Twitterのフォロアー約720万人に知らせていた」などと、The Vergeのパテルはいかにもしてやったり、といった調子で記している。さらに、「NBA事務局がなぜ待ったをかけたかはよく分からないが、残念なことである。Glassは奇妙で新しいもの、そしてNBAが新奇なものを好まないのはよく知られている」などととぼけた一節もみられる。

 さて。この動画を観ていて思い浮かんだのは、将来NBA選手がGoogle Glassのような端末を着用してプレーするようになるかどうか、といった可能性のこと。F1(自動車レース)で昔から使われている「オンボードカメラの映像」に近いイメージだが、「選手の視点からリアルな試合を観られる」というのがファンにとってどれほど面白いものになるのか……。

 例えば、アリーウープ(alley oop:飛んできたパスを空中でキャッチし、そのままダンクでリングにたたき込むプレイ)をダンクする本人の視点から体験できるというのは、間違いなく魅力的なもの……。少なくとも自分でアリーウープをきめたことがない筆者のような人間にはそんなふうにも感じられ、ちょっとわくわくしてしまう。同時に、そうした映像が当たり前のものになってしまえば、その「ありがたみ」もすぐに薄れてしまうかもしれない……。

 いずれにしても、技術の進歩を前提とした話ーー既存のゴーグルやフェイスガードに取り付けるには、Google Glassはまだ大き過ぎるし、搭載カメラでとらえた映像をどう吸い上げて放映するかといった点でも、さら工夫が必要ーーだが、例えば、オールスター戦の名物となっているダンクコンテストなど一部の特殊な状況ではすぐに試せることにも思える。商売上手なNBA事務局にはぜひ一度試してもらいたいものである(グーグルとエンドースメント契約を結び、がっつり稼いでもらうのは、いうまでもない)

 なお、今回ドラフトの会場となったニューヨークのバークレイズ・センター(NBAブルックリン・ネッツの本拠地)は、昨年9月にオープンしたばかりのアリーナ(NBAチーム本拠地の中では最も新しい施設)で、インフラ等でも最新鋭の技術を完備しているそうだ。こちらの動画は、オープン前にThe Vergeならびに同系列のスポーツブログSBNationが取材・撮影したもの(途中に出てきて「スマートフォンはGalaxy S3を使ってる」などと話している、やたらとデカいカーリーヘアーの男性は、その後オールスター選手に選ばれたネッツのセンター、ブルック・ロペスという選手で、双子の兄弟がやはりNBAでプレイしていることでも知られている)。

002.png バークレイズ・センター(出典:The Verge)

三国大洋 プロフィール

オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。


「三国大洋の箸休め」バックナンバー

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

この記事に関連するホワイトペーパー

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。