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» 2013年09月04日 17時50分 UPDATE

あらためて見直すサービスデスクの意義:クラウド時代にインシデント対応を軽んじてはいけない理由

サービスデスクというとコストセンターと捉えられ、十分な予算と人が割り当てられていないケースが多い。だが本来、日々のインシデント対応にこそ情シスの存在意義が懸かっている。

[内野宏信,@IT]

“勝手クラウド”や増え続けるインシデントにどう対応する?

 仮想化、クラウドの浸透は柔軟・迅速なITリソースの調達・配備を可能にした。だがシステムインフラは複雑化し、ITシステム/リソースの一元管理はますます難しくなっている。こうした中、情報システム部門にはさらなる問題が突きつけられている。

 例えば、業務基盤を速く整えたいばかりに業務部門主導でSaaSなどを導入してしまう“勝手クラウド”のような問題だ。情報システム部門が関知しないリソース調達はシステムのサイロ化やスパゲティ化を招き、運用管理の負担、コストを一層増大させる。また、システムが複雑化すればインシデントの数や種類も増加する。それなりの対応体制がなければ社内外のエンドユーザーにストレスを与え、業務の遅滞を招くばかりか、自社サービス、ブランドの信頼性を低下させる原因にもなりかねない。

 ではコストも人も限られている中で、「業務基盤を一刻も早く整えたい」と「システムに何かあれば一刻も早く解決したい」というビジネス部門の要請を、いったいどうすれば両立することができるのだろうか?――運用管理のベストプラクティス集、ITIL導入のコンサルティングを行っているニュートン・コンサルティング シニアコンサルタントの内海良氏に、情報システム部門が担うべき役割とサービスデスクの本来の意義を聞いた。

日々のインシデント対応の在り方が、社の社会的評価に影響する

 「昨今、運用管理の課題として寄せられる相談としては、『インシデントの数が減らない』という声が非常に多い。その原因を探ってみると、システム構成の複雑化や、インシデント管理のプロセスが整備されていなかったり、人のスキルが追いついていなかったりする問題にたどり着く。たとえITIL導入済みの企業でも、サービスデスクがうまく機能していない例は少なくない」

 特にITILについては、ITILに準拠したITサービスマネジメントのルール/プロセスはあっても組織内に定着しておらず、「ルールと実態が違う」と内部監査で指摘を受けてしまうケースもあるという。逆に、ITIL準拠ではないものの、ルール/プロセスがあり組織内にも定着していたが、ITILに準拠させようと支援ツールを導入したところ、入力作業の手間が嫌われるなど、かえって効率が落ちてしまう事例も珍しくない。

ALT ニュートン・コンサルティング シニアコンサルタントの内海良氏

 「ツールについてはカスタマイズの仕方の問題もあるが、何より重要なのは管理プロセスの設計と、プロセスを確実に定着させ、運用するための人材教育。例えば収集・管理すべき項目を設定して入力規則などを定めていても、ツールの教育やルール/プロセス定着のための取り組みが足りなかったりすれば、データを入力してもらえない、あるいは入力してもらってもデータに不備があるなど、蓄積しても価値がないようなデータになりやすい」

 こうした現状について、内海氏は「一言でいえば、サービスデスクの問題は結局『人』に帰結する」と話す。例えば一次対応は「ユーザー削除」「アクセス権限の変更」など高度なスキルを必要としない定型的な対応が多い。だがそれでも、寄せられたインシデント内容に対応すべきか、対応しても問題はないのかなど、ルールに応じた最低限の判断力が求められる。もちろんスタッフのスキルや教育の問題を問う以前に、ルール/プロセスやツールに対する現場スタッフの合意、納得を得ることも不可欠となる。

 しかしサービスデスクはコストセンターと見られ、十分な予算と人が割り当てられられず、プロセスも整備し切れていない例が多いのが現実。その結果、社内外からのインシデントに効率的に対応できず、エスカレーション先にインシデントの情報がきちんと伝わらない、エスカレーション先からなかなか回答が返ってこないといった問題が起こり、社内外のエンドユーザーに多大なストレスと不信感を与えてしまう。

運用管理の本当の意義と価値

 内海氏は、「サービスデスクは自社の信頼や収益を支える業務。コストセンターと見て軽視してはいけない」と警鐘を鳴らす。特に強調するのは、「サービスデスクは自社ビジネスにひも付き、経営を支えるものである」という点だ。

 その1つの根拠として、ITILにおけるサービスデスク機能の位置づけを振り返る。というのも、ITシステムと運用管理によってビジネスの遂行を支援することを「ITサービス」と捉え、ビジネスの要請に応じて高い投資対効果でサービスを提供する、継続的に改善していくことがITILの本質。また、ITILではITサービスの受益者を「顧客」(一般的な意味での顧客とは異なり経営層などを指す)、日常的にITサービスを利用する人・組織を「ユーザ」、ITサービスの提供に責任を持つ人・組織を「プロバイダ」、ITサービスを支える要素を提供する人・組織を「サプライヤ」と位置付けている。

 つまりサービスデスクとは、高い投資対効果をもってITサービスを提供し、ビジネスの遂行を支える「サービスプロバイダ」であり、本来的には「予算を掛けられない」「優秀な人材はアサインしない」といったコストセンター的に捉えるべき業務では決してないためだ。

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 無論、これをITIL上の定義として「現実は違う」と視界から外してしまうこともできる。しかし、この「ITサービスの提供に責任を持つサービスプロバイダ」という位置付けは、「ビジネス部門の要請になかなか応えてくれない情報システム部門」といった否定的な見方もある中で、創出すべき付加価値や進むべき方向性を、あらためて示唆してくれるテーマといえるのではないだろうか。

 内海氏はこの考え方に基づき、IT活用を監視・規律することで勝手クラウドなどの問題を基から断つ、ITガバナンスの整備についても言及。さらに経営陣が主体となるITガバナンスと、情報システム部門が中心となるITILの関係をひもとき、インシデント対応という日々の活動が“問題をつぶす”ことで完結するものではなく、ビジネスや情報システム部門の存在意義にひも付いた重要な活動であることを力説する。

 情シスの社内プレゼンス向上に役立つコンテンツをお届けする「TechTargetジャパン プレミアム」。その第9弾となる『クラウド時代に見直すべき、サービスデスクという落とし穴』では、サービスデスク本来の在り方と、定義にとらわれないITIL実装の現実的なポイントをまとめた。ルーティンとして流してしまいがちな日々の運用管理業務だが、その本当の意義と自身の業務の価値を、あらためて確認してみてはいかがだろうか。

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