連載
» 2013年09月19日 15時30分 UPDATE

UXClip(37):スマホアプリの検証環境改善を目指すNTTレゾナント、クラウド検証サービス提供の背景を語る

品質確認や試験工程の複雑性が増しているスマートフォン向けアプリ開発。今回は、NTTレゾナントが運営する開発支援サービス「Developers AppKitBox」を紹介する。

[沙倉芽生,@IT]

 NTTレゾナントが運営する「Developers AppKitBox」は、スマートフォン向けアプリ開発者を支援するポータルサイトだ。2012年11月13日にサービスを開始し、検証のためのスマートフォンをクラウド経由で時間貸しするサービス「Remote TestKit」と、開発者に役立つ開発や検証のノウハウを提供する「Knowledge Note」を運営している。

 Remote TestKitは、NTTレゾナントが買収したベンチャー企業であるカトマックが開発、提供していたサービスだ。カトマック買収後、NTTレゾナントはRemote TestKitを中心とした開発とイノベーションを行うための企業としてNTTレゾナントテクノロジーを設立している。NTTレゾナント サーチ事業部長 兼 NTTレゾナントテクノロジー 代表取締役社長の小澤英昭氏に、Remote TestKitを提供する背景や同サービスの方向性について聞いた。

複雑化するスマートフォンの検証環境

 小澤氏は、日本の携帯電話サービスがスマートフォン中心になりつつある中、スマートフォン向けアプリの品質確認や試験工程が複雑になっている点を課題として指摘する。「スマートフォンはPCが手のひらに乗っているようなものだ。ただ、PCはほとんどがインテル製チップとWindows OSで成り立っていたが、スマートフォンはさまざまなベンダーのチップが搭載されている。OSも、Androidが普及してはいるが、OSのアップデートの頻度はWindowsの比ではない。つまり、種類の異なる端末で安定して動くアプリが生まれにくくなっている。スマートフォンアプリの開発時間の半分以上が試験工程に掛けられているといわれるほどだ」(小澤氏)

ozawa.jpg 小澤英昭氏

 こうした現状の中でも、アプリの品質担保は開発者にとって重要なミッションだ。そのための効率的な仕組みとして誕生したのがスマートフォン開発者向けポータルサイトのDevelopers AppKitBox、そしてその中で中心的な役目を果たしているRemote TestKitだという。

 「スマートフォンアプリを検証するために、さまざまな種類のスマートフォンを購入して検証する開発者もいれば、手持ちのスマートフォンだけで検証する開発者もいる。いずれにしても、1開発者もしくは1企業がそろえることのできる検証環境には限界がある。そこでわれわれは、検証環境をクラウドで提供しようと考えた」と、小澤氏は同サービスを提供するに至った背景を説明した。

137種の端末がクラウドで検証可能に

 クラウド型端末検証ソリューションのRemote TestKitでは、137機種・161台の端末をそろえ、遠隔地から時間単位でスマートフォンの検証ができるようになっている。ユーザーは、PCに専用のクライアントソフトをインストールし、利用したいスマートフォンをクラウド経由で選択するだけで、PC上でスマートフォンの画面を再現しつつアプリが検証可能となる。クラウド経由で利用した端末は返却するごとに初期化されるため、情報漏えいの心配はない。

001.jpg

 PC上では、複数のスマートフォンを同時に検証することも可能だ。また、さまざまなロケーションから共同で同一スマートフォンを検証することもできるため、部署単位や拠点ごとに端末を調達する必要がない。つまり、海外拠点で開発したアプリが日本の端末に適合するかどうか、現地のエンジニアがその場で確認することもできるのだ。ただし、サービス側で用意している端末の数は限られており、同一の端末上で同時に異なる検証環境を構築することはできないため、他ユーザーと利用時間が重なると端末が利用できない可能性もある(そのため同サービスでは人気端末を複数台用意している)。新機種が発売された場合はすぐに端末を入手し、2週間でサービスを提供できるようにしているという。

 利用料金は、バウチャー形式の前払い制。エントリープランの価格は、1時間利用可能なチケットが945円。チケットの有効期限は購入日から90日間だ。

 現在、同サービスは数千人のユーザーを抱えている。小澤氏によると、利用率の高い端末は、市場で特に人気の高い端末よりも2番手、3番手に人気の端末だという。「人気機種は個人でも使っている人が多く、試験環境も整っているケースが多い。2番手、3番手に人気の端末が手元になくてRemote TestKitを利用することが多いようだ。また、特定の機種で不具合が起こったという報告を受け、ピンポイントにその機種を利用するユーザーもいる」と小澤氏は説明する。

 「Android端末は、端末によって画面サイズも大きく異なり、文字がつぶれてしまうこともある。Remote TestKitを使えば、PCから複数のAndroid端末を同時に確認して端末固有の表示崩れがないか比較しながら確認できる。さまざまな端末で検証し、アプリ全体の品質向上につなげてもらいたい」(小澤氏)

002.png

 スマートフォン端末の検証サービスは、イスラエルのPerfecto Mobileを筆頭に、米Keynote Systems、国内のソニックスといった企業も提供しているというが、小澤氏は「われわれのサービスでは、1つのラックに約100台のスマートフォンを搭載している。そのためコストパフォーマンス面で有利だ」と話す。

 「例えば、Perfecto Mobileでは、カメラでスマートフォンの画面を撮影し、その情報を送信している。つまり、撮影のためのスペースも必要だ。しかしわれわれの技術は、スマートフォンに独自のアプリを埋め込むことで画面の状態をPCに転送しているため、ラックに搭載できるスマートフォンの数も多い。この独自技術がわれわれの強みだ」(小澤氏)

企業向けソリューションパッケージも提供開始

 個人・法人を問わず、アプリ開発者全体に開かれたサービスを展開するNTTレゾナントだが、2013年7月17日にはRemote TestKitの企業向けソリューションパッケージとして「Developers AppKitBox - Remote TestKit Enterprise」の提供も開始している。Enterprise版ではパブリッククラウド型とオンプレミス型を用意、接続するスマートフォンの台数に応じた年間ライセンス形態で提供する。

 小澤氏は、「スマートフォンを使った予約システムや金融取引など、直接ビジネスに影響のあるアプリを提供する企業では、アプリの不具合が機会損失やクレームにつながってしまう。こうした企業に向けEnterprise版を提供していきたい」としている。

 グローバル展開も視野に入れており、既に英語には対応済みだ。また今後は、スマートフォンだけでなくタブレット端末のサポートも検討中だという。さらに小澤氏は、「将来的には情報家電もPCと同じような役割を果たすようになるだろう。その時により良い検証環境を整えなくては、検証だけで膨大な時間と費用が掛かってしまう。品質を担保するために何らかの仕組みが必要だ」と述べ、より幅広い分野で検証環境の改善を目指していることも示唆した。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

この記事に関連するホワイトペーパー

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。