第1回 Windows 8.1のエディション構成と機能改善点Windows 8.1クロスロード

タブレットPCやタッチ操作デバイス向けに開発されたWindows 8の登場から1年、もう次のバージョンがリリースされようとしている。Windows 8.1ではGUIの改善だけではなく、内部的にもさまざまな機能強化や改善が行われている。今回はWindows 8.1の機能を一覧する。

» 2013年09月19日 17時10分 公開
[打越浩幸デジタルアドバンテージ]
Windows 8.1クロスロード
Windows Server Insider


「Windows 8.1クロスロード」のインデックス

連載目次

「Windows 8.1クロスロードは、2013年10月から出荷が予定されているWindows 8.1の注目機能について解説するコーナーです。
本記事はPreview版をベースにした以前の記事をベースにリライトしたものです。


 Windows 8の改良版であるWindows 8.1の提供開始が2013年10月18日に決まり、すでにRTM版の開発も完了している。これに伴い、本フォーラムでも新たにWindows 8.1の解説連載を開始する(Windows 8をベースにした以前の記事については連載「Windows 8レボリューション」を参照)。今回は販売開始が近づいた、Windows 8.1のリリース時期や価格情報などのほか、機能の概要をまとめておく。

Windows 8.1とWindows Server 2012 R2のRTM版が完成

本項の内容は、日本語版Windows 8.1の販売情報などが公開された後で更新する予定ですので、あらかじめご了承ください。


 2013年9月9日に、Windows 8.1およびWindows Server 2012 R2のRTM版が完成し、TechNetサブスクリプションやMSDNサブスクリプションなどのチャネルを通じての公開が始まった。当初はWindows 8の無印エディションとProエディションのみが公開されていたが、2013年9月18日にはEnterpriseエディションとボリューム・ライセンス版Proエディションの提供も始まっている。

 一般ユーザー向けに公開、販売が開始されるのは2013年10月18日からの予定となっている。

 以下にWindows 8.1 RTM版の画面例を示しておく。Preview版と比較すると基本的な機能には変更はなく、外見的には、一部英語のままだった項目名やメッセージなどが日本語化されたぐらいである。

Windows 8.1の画面例 Windows 8.1の画面例
Windows 8.1 ProのRTM版の画面の例。Preview版とほとんど違いはない。Windows 8と比較すると、デスクトップ画面に[スタート]ボタンが付いたが、これはWindows 7などの[スタート]メニューを表示させるボタンではない。単にスタート画面へ切り替えるためのものである。Windowsストア・アプリには「スナップ」という状態がなくなり、ウィンドウ幅もかなり自由に変更できるようになった。詳細は今後解説予定。

Windows 8.1の販売形態

 日本語版Windows 8.1の価格やパッケージングに関する情報はまだ発表されていないが、英語版の場合は次のようになることが発表されている。

●既存のWindows 8ユーザー向け

 既存のWindows 8ユーザーは、2013年10月18日からWindowsストア経由で無償アップグレードができるようになる。この場合は、アップグレード前とアップグレード後のエディション(無印かPro)はそのまま維持されるし、インストールされていたアプリケーションやデータもそのまま維持される。Windows 8無印エディションからWindows 8.1 Proエディションへアップグレードするには、Windows 8.1へアップグレード後、次項のWindows 8.1 Pro Packを導入するか、コントロール・パネルの[Windows 8.1への機能の追加]でアップグレード版をダウンロード購入する(いずれも有償)。

 なおWindows 8の無印/Proエディションから、Windows 8.1 Enterpriseエディションへアップグレードしたり、逆に8のEnterpriseエディションから8.1の無印/Proエディションへアップグレードすると、ユーザーのファイルは維持されるものの、ユーザーおよびWindowsの設定や、Windowsストア・アプリやデスクトップ・アプリケーション(Microsoft Officeなど)は維持されず、再インストールが必要になるようである。企業ユーザーなどでアップグレードを計画している場合は、あらかじめ十分テストしてから実行していただきたい。

●新規導入ユーザー向け

 Windows 8.1を新規導入したいユーザーに対しては、ダウンロード販売やインストールDVDを含むパッケージ販売で入手できる。価格は、Windows 8(無印エディション)が119.99ドル、Windows 8 Proが199.99ドル、Windows 8.1無印エディションからProエディションへアップグレードするWindows 8.1 Pro Packが99.99ドル、Windows 8.1 Pro向けのWindows Media Centerパッケージが9.99ドル(Pro Packには同梱。TIPS「Windows 8にDVD再生機能を追加する」参照)、となっている(いずれも英語版参考価格)。

Windows 8.1へのアップグレードについて

 Windows 8.1はWindows 7からのアップグレード・インストールに対応している(ただしアップグレード版パッケージは提供されないので、フルパッケージ版の購入が必要)。Windows 8.1のインストール用DVDを使ってシステムを起動すればアップグレード・オプションを選択できるが、既存のファイルはそのまま維持されるものの、Microsoft Officeなどのデスクトップ・アプリケーションは移行されない。そのため、必要に応じて再インストールしたり、バックアップしておいたファイルを手動で戻すなどの作業が必要になる。

 Windows 8.1 Preview版からのアップグレード・インストールも可能だが(この場合もWindows 8.1のフルパッケージ版か、そのダウンロード版の購入が必要)、Windowsストア・アプリは維持されないので、それらを手動で再インストールしなければならない。Microsoftアカウントでサインインして「ストア」アプリを開くと、そのアカウントでインストールしたアプリの一覧が確認できるので、そこから必要なものを再インストールする。

 なおいずれの場合でも、32bit版のWindows OSから64bit版へのアップグレード・インストールはサポートされていない。32bit版を利用している場合は、64bit版のWindows OSを新規インストールすることになる。

●Windows XP/Vistaユーザーはアップグレードに注意

 Windows 7よりも前のWindows VistaやWindows XPに対しては、(ハードウェア的にWindows 8.1を利用可能かどうかは別にして)Windows 8.1に直接アップグレードする手段は用意されていない。基本的にはこれらのWindows OSからは、移行ツール(Windows 8.1に付属の「Windows転送ツール」や、Windows 8.1用のWindows ADKに含まれる「ユーザー状態移行ツールUSMT 6.3」)を使ってユーザーの設定情報やデータ・ファイルなどを取り出し、新しいWindows OSへ転送・展開することになる。

 だがこのツールには1つ大きな制限がある。「Windows XPおよびWindows VistaからWindows 8.1への移行はサポートされていない」のである。これらのWindows OSを使っている場合は、まずWindows 8(もしくはWindows 7)へ移行し、その後システムをWindows 8.1へアップグレードする必要がある。旧システムの更新を計画しているユーザー(特に企業組織)は、安易にWindows 8.1へアップグレードしないよう、注意していただきたい。このWindows転送ツールについては今後回を改めて詳しく紹介する予定である。Windows XPから新しいシステムへの移行については、次の記事集も参照していただきたい。

Windows 8.1の新機能

 Windows 8をベースにして、さまざまな機能追加、改善などを図ったのがWindows 8.1だが、その改善点について次にまとめておく。なお、プログラマ的な視点から見たWindows 8.1(Windowsストア・アプリ)の改善点については、以下の記事を参照していただきたい。スナップするウィンドウが廃止されたり、検索機能の意味が大きく変わるなど、プログラマにとっても大きな影響がある変更が行われている。

機能 概要
■モダンUI
可変サイズのスナップ・ビュー ウィンドウの分割の自由度が向上し、従来のような固定サイズではなく、自由にサイズが変更可能になった。1台のモニタに最大4つのアプリを表示させることが可能。Windows 8のようなメインのウィンドウとスナップするウィンドウという関係はなくなり、すべてのアプリが対等に機能する
ブート直後のデスクトップ画面 ブートしてサインイン後、スタート画面を介さず、すぐにデスクトップ画面を表示させることが可能
キーボードやマウスでの操作サポート デスクトップ画面やスタート画面をキーボードやマウスで操作しやすくなった
スタート画面制御 スタート画面のレイアウト(アプリ・タイルの配置)を制御し、特定のアプリへ常に素早くアクセスできるようにする機能。ユーザーによるカスタマイズを禁止できる。Enterpriseエディションでのみ利用可能な機能
Windowsストア・アプリの強化 Windowsストア・アプリの機能が強化された(追加されたAPIだけでも650以上ある)
BYODサポート関連
社内ネットワークへの参加 Windows 8.1を社内のデバイス管理サービスに登録することにより、接続を許可したり、拒否したりできる(「Workplace Join」と呼ばれる機能)。このサービスに登録するWindows 8.1はドメインに参加していなくてもよい(Windows RTやWindows無印エディションでも利用可能)
ワーク・フォルダ・サポート 個人が所有するWindows 8.1デバイス上に格納したファイルと、職場のファイル・サーバ(Windows Server 2012 R2)の内容を自動的に同期させる機能。SkyDriveのような外部ソリューションを使うことなく、社内リソースを安全に、アクセス制御などを行いながら共有できる
Open MDM(Open Mobile Device Management)対応 Windows 8.1にはOMA-DM(Open Mobile Alliance Device Management)機能が組み込まれているので、OMA-DMのAPIに対応した管理ツールを使って、個人が所有するWindows 8.1端末を職場(ワークプレース)のネットワークに接続させるかどうか制御できる
WebアプリケーションProxy これはWindows Server 2012 R2のリモート・アクセスの新機能。これとWindows 8.1を組み合わせることにより、社内へのアクセスを制御できる
NFC/Wi-Fi Directプリント NFCプリンタに“かざす”だけですぐにプリントしたり、Wi-Fi Directプリントで出力したりできる
Miracast無線ディスプレイ ディスプレイ信号を無線で送信するMiracast技術にネイティブ対応
■モバイル技術関連
VPN WindowsやWindows RTデバイスにおけるさまざまなVPN技術に対応
VPN自動トリガのサポート アプリケーションなどで、ワンクリックでVPN接続を自動的に起動する機能をサポート
モバイル・ブロードバンド対応 組み込みのモバイル・ブロードバンド機能のサポート
Windows To Goサポート Windows To Go環境でもWindowsストアへアクセスしたり、Windowsストア・アプリが利用可能になる。Enterpriseエディションでのみ利用可能
ブロードバンド・テザリング・サポート Windows 8.1でのテザリング・サポート
SkyDrive統合 SkyDriveへのアクセス機能がOSに統合され、すべてのアプリケーションでSkyDriveへ保存/アクセスすることが可能になる
VDI(Virtual Desktop Infrastructure) デスクトップ環境を仮想化する技術。3DグラフィックスやUSB周辺機器などが利用可能。Enterpriseエディションでのみ利用可能
■セキュリティ機能の拡張
リモート・ビジネス・データ削除 企業に属する(暗号化された)データを、リモートから削除する機能。ある企業のユーザーが退社した場合など、そのユーザーに関連付けられているデータをリモートから削除できる。ただしこのためには、サーバ側とクライアント側の両方のアプリケーションが対応する必要がある(例:Exchange Server+Mailなど)。クライアント側では単にアクセスできなくなるようにするか、完全に消去するかを設定できる
生体認証の改善 すべてのエディションのすべての認証機構(Windowsのサインイン、リモート・アクセス、ユーザー・アカウント制御ほか)で、エンド・トゥ・エンドの生体認証機能をサポート
より広範囲なデバイス暗号化サポート Windows RTやWindows Phone 8のようなデバイス暗号化が全エディションで利用可能になる。出荷時からの暗号化や、(EnterpriseおよびProでは)BitLockerによる暗号化をサポート。コンシューマ向けデバイスはMicrosoftアカウントを使って暗号化
改善されたInternet Explorer 11 Internet Explorer 11ではより高速なページ・ロードや(Windowsストア・アプリ画面における)デュアル・ウィンドウ(左右分割)表示サポート、お気に入りやタブ、設定などの複数のWindows 8.1 PC間での同期をサポート。拡張機能(ActiveXなど)にバイナリ・データを渡す前にスキャンするアンチマルウェア・ソリューション機能の提供など
デバイス・ロックダウン Windows 8.1 RT、8.1 Pro、8.1 Enterpriseの新機能である「Assigned Access Mode(旧KIOSKモード)」では、ただ1つのWindowsストア・アプリしか実行できないように制限できる。子供向けや一般の顧客向け端末として解放するような場合に利用できる
Windows 8.1の主要な機能改善点

Windows 8.1のエディション

 Windows 8.1の製品エディション構成は、Windows 8の場合と同じく4つである。

エディション 用途
Windows 8.1 Windows 8の下位エディション。エディション名は特にないので、本記事では「無印エディション」と呼ぶことにする。Windows 7のWindows Home BasicやHome Premiumに相当する、一番基本的なエディション。Active Directoryへの参加機能やグループ・ポリシー、Hyper-V仮想化機能がないなど、一般家庭やActive DirectoryドメインのないSOHO/中小企業向けである。Windows 8.1 Pro Pack(有償製品)を追加インストールして、Proエディションへアップグレードできる
Windows 8.1 Pro 企業向けの一部機能を除くWindows 8の全機能が利用できるエディション。企業や上級ユーザー向け。Windows 7のProfessional/Ultimateに相当
Windows 8.1 Enterprise 企業向けのエディション。Windows 8 Proに対して、リモート・アクセスやVDI、モバイル(BYOD)機能、セキュリティ機能などを強化している。Enterpriseエディション独自の機能としては、Windows To Go、スタート画面制御、DirectAccess、BranchCache、VDI、AppLockerなどがある
Windows RT 8.1 ARMアーキテクチャのプレインストールPCやタブレットPC向けエディション。以前は「Windows 8 WOA(Windows on ARM)」と呼ばれていた。Windows 8.1のOS単体でのパッケージ製品は販売されず、ハードウェア製品に組み込まれた形でのみ販売される
Windows 8.1のエディション構成
Windows 8.1の基本的なエディション構成。パッケージ販売のほか、ソフトウェア・アシュアランスやボリューム・ライセンス、ダウンロード販売などでも提供される。

 各エディションのごとの機能の違いは次の通りである。

機能 Windows 8.1(無印) Windows 8.1 Pro Windows 8.1 Enterprise Windows RT 8.1
■ユーザー・インターフェイス
アプリからの別アプリ起動(新)
複数タイルの同時カスタマイズ(新)
ロック画面の写真スライドショー(新)
4種類のタイル・サイズ(新)
Microsoftアカウントによるログオン
同一アプリの複数起動(新)
最大4つまでの可変サイズ・ウィンドウ・アプリの同時表示(新)
デスクトップの直接起動(新)
PCの設定の改善(新)
ポートレート・モードの改善(新)
Bing検索機能の強化(新)
スタート画面背景のカスタマイズ(新)
[スタート]ボタン(新)
スタート画面/ライブ・タイル
タッチ/サム・キーボード
■Windowsストア・アプリ
Windowsストアからの自動アプリ更新(新)
組み込みアプリ(メール、カレンダー、Peopleほか)
x86/x64デスクトップ・アプリ・サポート
Internet Explorer 11(新)
Windows Media Player
Windowsストア
■デバイス・サポート
3Dプリンタ・サポート(新)
生体認証(新)
InstantGo(旧コネクテッド・スタンバイ)
Miracastワイヤレス・ディスプレイ(新)
モバイル・ホットスポット/Wi-Fiテザリング(新)
マルチモニタ・サポートの改善(新)
記憶域スペース
Wi-Fi Directによるワイヤレス・プリント(新)
■システム
CPUアーキテクチャ x86/x64 x86/x64 x86/x64 ARM
最大サポートCPUソケット数 1 2 2 1
最大メモリ容量 128Gbytes 512Gbytes 512Gbytes 4Gbytes
ISO/VHDのマウント
PCのリセット/リフレッシュ
言語の高速切り替え(言語パック)
VHDブート
Windows Update
■管理
Assigned Access Mode(デバイス・ロックダウン) (新)
クライアントHyper-V
デバイス・エンロールメント(新)
Active Directoryドメイン参加
Exchange ActiveSync
グループ・ポリシー
Open MDMサポート(新)
スタート画面制御(新)
Windows To Go作成ツール
ワーク・フォルダ(新)
社内ネットワークへの参加(新)
■セキュリティ
AppLocker
バイナリ拡張機能スキャニング
BitLocker/BitLocker To Go
デバイス暗号化
ファミリー・セーフティ
BYOD多要素認証(新)
ピクチャ・パスワード
リモート・ビジネス・データ消去(新)
Trusted Boot
Windows Defender
Windows SmartScreen
■ネットワーク
BranchCache
ビルトインVPNクライアント
DirectAccess
リモート・デスクトップ(クライアント)
リモート・デスクトップ(ホスト)
VDI機能拡張
Windows 8.1のエディションごとの機能比較(抜粋)
Windows 8.1のエディションごとの機能の詳細。(新)は、Windows 8.1における新機能/機能強化点。今後の連載で順次解説していく予定だ。


 今回はWindows 8.1のエディション構成や改善/強化された機能について見てきた。各機能の詳細については次回から順に解説する。

「Windows 8.1クロスロード」のインデックス

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