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» 2013年10月07日 00時00分 UPDATE

設計・開発・運用に今求められていること:「ITシステム」とは、ハードやソフトのことではない

新しいトレンドやテクノロジが次々と登場する中で、今、情報システム部門は業務部門から寄せられる期待と現実の板挟みに遭っている。情報システム部門は今後どのような視点を持ち、どう振る舞えばよいのだろうか。

[内野宏信,@IT]

苦しい立場に追い込まれつつある、システム設計・開発・運用の現場

 仮想化、クラウドの浸透は、ビジネスのスピードアップ、コスト削減をはじめ企業にさまざまなメリットをもたらしている。また、ビッグデータトレンドや分析関連テクノロジの進展、モバイルの浸透など、変化が速い市場の中でビジネスの発展を支援する手段はここ数年で大幅に進化した。

 一方で、これらに翻弄されるケースも増えている。その中心にいるのが、業務部門の期待を一手に支えている情報システム部門だ。システムが複雑化し、運用管理負荷が増したり、求められるスキルが高度化したりしているにもかかわらず、IT予算はカットされ、運用管理スタッフや運用管理のアウトソース先が削減される例も増えた。だが業務部門側が、仮想化、クラウド、ビッグデータ、モバイルといった数々の手段に寄せる期待は大きい――。

 今、システムの設計・開発・運用の現場は、ビジネスサイドの期待と現実との板挟みにあっている状態といえるのではないだろうか。それどころか、スピーディに期待に応えられなければ、業務部門が直接SaaSやIaaSを利用してしまうなど、社内での存在意義が危ぶまれる傾向も見え始めている。

キーパーソンの声から浮かび上がる、情シスが目指すべき方向性

 もちろん、社内の全システムがパブリッククラウドに置き換わるわけでもなければ、自社に代わって各種ツールを使いこなし社業を発展させてくれるようなサービスがあるわけでもない。だが「お守りしかできない情シスはもういらない」などといった辛辣な意見もある今、多方面でいわれている「より直接的にビジネスに寄与する役割」というものを、あらためて見直しておく必要があるのではないだろうか。

 では「ビジネスに寄与する」とは、どのようなスタンスを指すのだろう? 過去に取材した設計・開発・運用分野のキーパーソンの声から、それを示唆する一言一言をここで簡単に紹介したい(カッコ内は取材年次)。

「一般に、運用部門はリリースサイクルが速いことを嫌うといわれていますが、問題はリリース回数の多さや職務分担の切り分けではなく、お互いに相手の分野を理解した上で、目標実現のために一番いい形を共に模索できるかにあります。そうした文化の醸成がDevOpsの鍵だと思いますね。Web系の会社ではサービスやテクノロジに対するモチベーションが高い人が多いこともあると思いますが、ビジネスの目的を見据える認識は浸透していると思います」――サイバーエージェント アメーバ事業本部 デカグラフ部門 インフラセクション サービスインフラグループ 桑野章弘氏(2013年)

「従来、パフォーマンス管理というと、例えばCPUの使用率、メモリ、ディスクの使用率など『システムがどのように動いているか』を数値化してモニタリングすることを指してきました。ではシステムは何のためにあるのかというと、エンドユーザーや一般消費者、ビジネスのためです。つまりパフォーマンス管理とはシステム面のみの指標で完結する問題ではなく、経営への貢献度、すなわち企業のパフォーマンスにひも付けすべき問題といえます。今はそこが切れている状態なのではないでしょうか」――ガートナー ジャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ 主席アナリスト 長嶋裕里香氏(2013年)

「サイロ化された役割分担の下、単なる死活監視を行うのではなく、各システムが『どのようなサービスを提供しているのか』『どれほどのサービスレベルを提供できているのか』といった情報を共有し、エンドユーザー視点で一元的にサービスを提供する体制を追求することが大切だ。ITサービスマネジメントの概念にのっとり、今後、IT部門はビジネスに直接的に貢献できる“企業内のサービスデスク”になることを目指すべきだろう」――IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ シニアマーケットアナリスト 入谷光浩氏(2010年)

「確かに分析は容易で、多くの人にとって身近なものになりつつある。だが一番大切なのは、分析に際して『いま自分が何を目的とし、何をしているのか』という自覚を持つことだ。これをきちんと認識していなければ、分析という行為は、企業にとって危険な行為と化してしまう」――米SAS CEO ジム・グッドナイト氏(2011年)

「弊社は創業以来、(品質の高い寿司の提供を通じて)『いただいたお金の半分はお客さまに返す』ことを理念の1つとして鮮度とコストを厳しく管理してきた。その点、データを使えばあらゆる問題や事象を客観的に素早く察知することができる。いわば、従来から大切にしてきたアナログなオペレーションに、データ分析というアンテナを融合させたのがスシローのビッグデータ活用法だ」――あきんどスシロー 情報システム部 部長 田中覚氏(2013年)

「このプロジェクトは、iPadを導入することが目的ではなく、あくまでモバイルワークスタイルの変革を目指したものだった。(情報システム部門が企画・開発した)iPadのアプリも無理やり使ってもらおうとは思っていない。人によってはノートPCの方が使いやすいケースもある。強制しなければ使ってもらえないようなアプリは、いずれ破たんする」――ガリバーインターナショナル 経営企画室 クラウドプロジェクトリーダー 椛田泰行氏(2012年)

そもそも「システム」とは何か?

 ところで、世界中で最も広く使われてきたシステムは何かご存じだろうか。それは500年以上前に開発された「Double-Entry Bookkeeping System」――複式簿記だ。もちろん「システム」とはいっても、ハードウェアやネットワーク、プログラムなどは一切使われていない。特定のルールに基づいて企業の営業活動を記録・集計するための「仕組み」だ。

 ITが社会に深く浸透している現在、「システム」というと反射的にハードウェアやネットワーク、プログラムなどで構成された「コンピュータシステム」を想起してしまいがちだ。だが本来、「システム」とは何らかの「制度や方法、手順などの体系」のことであり、コンピュータシステムだけを意味するものではない。つまり企業における「システム」とは「ビジネスの方法や手順などの体系」であり、「ITシステムの設計・開発・運用」とは、ITを使って「ビジネスを実行する仕組みを設計・開発・運用」することに他ならない。

 システムを「コンピュータシステム」と捉えてしまうと、ITの側面だけに視野が閉じてしまい、ビジネスゴールにつながらない、その場限りの施策に陥ってしまいがちだ。前述の数々の言葉が示唆するように、今、存在意義が問われている情報システム部門にとって、こうした「システム」作り本来の視点と目的を、あらためて見据えることが大切なのではないだろうか。

 では日々の業務において、具体的にどうすればよいのだろう?――@ITの新フォーラム「System Design」では、ビジネスサイドの要請をいかにビジネスゴールにつなげていくのか、「ITを使ってビジネスを推進する仕組み」の設計・開発・運用ノウハウを紹介。理想論に陥ることなく、現場視点を大切にした特集、連載、ニュース記事を展開していく。ぜひ日ごろの業務の参考にしてほしい。

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