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» 2013年10月11日 18時00分 UPDATE

情シスの本棚(1):設計レビューに私情を持ち込んでいませんか?

設計・開発・運用業務に役立つ書籍をピックアップして紹介する新連載「情シスの本棚」。第1回は、システム開発の現場で働く多くの人が思い当たるであろう、設計レビューの問題点と方法論を解説した書籍を紹介する。

[内野宏信,@IT]

設計レビュー以前に問題となる「マインドの間違い」とは?

ALT ●著者:森崎修司●日経BP社●ISBN-10:4822277054●ISBN-13:978-4822277055●発売日:2013/9/19

 「システム構築プロジェクトでは、さまざまな会議が開かれます。そのなかでも、参加する際にとりわけ気が重いのは、ドキュメントの問題指摘を行うレビュー会議ではないでしょうか。長々と続くにつれてレビューアーがイライラし、ドキュメント作成者がつるし上げられたり、レビューアー同士で言い争いになったりする――。そんな状態だから、長い時間をかけた割に重大な問題を指摘しきれずに終わるケースが少なくありません」。「頑張るだけのレビューには限界があります」。「必要なのは、レビューのやり方を見直すことです」――。

 本書、「間違いだらけの設計レビュー」は、レビュー方法論の第一人者である名古屋大学 大学院 情報科学研究科 准教授の森崎修司氏が、ITエンジニアとしての経験や、レビューに対する豊富な研究成果を基に、正しいレビューの方法を説いた作品だ。大きな特徴は、作業の流れだけではなく「レビューアーやドキュメント作成者が持つべきマインド(心構え)」にフォーカスしている点だ。「レビューは本質的に、レビューアーによるドキュメントへの批判」であり、「ドキュメント作成者の気持ちを深く傷つけてしまいかねない危険なコミュニケーションを伴う」。だからこそ「正しい方法」とともに「正しいマインド」が必要だと訴えている。

 例えばレビューアーごとにチェックの観点がバラバラなために、誤字脱字のような軽微な問題が多く挙がる「思いつき」、指摘件数を増やすことに注意が向かい、重大な問題の検出がおろそかになってしまう「数字合わせ」、レビューアーが問題を指摘していくうちに、ドキュメント作成者への人格攻撃にエスカレートしてしまう「つるし上げ」――こうした問題に遭遇した経験を持つ人は非常に多いのではないだろうか。だが、これは日本国内に限ったことではなく、要件定義書や仕様書、設計書などのドキュメントレビューを行っている世界中の現場で起こっているのだという。

 ではどうすれば良いのだろう? 森崎氏は「成功の秘訣は、レビューの本来の目的に立ち戻りセオリーとなる手順を実践すること」だと説く。というのも、レビュー本来の目的、セオリーはまだまだ現場に浸透しておらず、見よう見まねで行っている現場も少なくない。そんな状態で「レビューの人員や時間、対象のドキュメントを増やしても現場が疲弊するだけ」だからだ。

 そこで本書では「レビューの準備」「問題の検出」「問題の指摘」「修正・フォロー」という「レビューの4つのステップ」を紹介。それぞれについて非常に分かりやすく解説を施している。例えば「レビューの準備」では、レビューを主導する「リーダーが行う5つのプロセス」「ドキュメント作成者が行う準備」「レビューアーが行う4つのプロセス」といった具合に、レビューの役割ごとに行うべきことを解説。

 また、ドキュメントの問題検出に当たって「漏れ」をチェックする場合、ただ漫然と読むのではなく、「読む前に『こういう内容が書いてなければならない』というイメージを持ち、そのイメージをドキュメントの内容と比較する」など、随所で生きたノウハウを紹介している。さらに「ドキュメントのなかで漏れが発生しやすい箇所」の一覧など、研究成果に基づいた関連資料も豊富に盛り込んでおり、全編にわたって非常に実践的な内容となっている。

 ただ本書の最大のポイントは、やはり第1章で「マインドの間違い」と「方法の間違い」を徹底的に洗い出している点だろう。例えばドキュメント作成者によって見る目が厳しくなったり甘くなったりする「人間関係の持ち込み」、レビューアー同士で指摘件数を競い合うあまり、単なる言い換えなど、無駄な指摘が増える「見栄の張り合い」、レビューの観点を絞らず、一度に全てをチェックしようとする「二兎追い」、夜から始めて際限なくレビューを行う「無計画な耐久レビュー」――客観的かつ論理的な説明で、こうしたアンチパターンの不毛さにあらためて気付かされるだけに、第2章以降で語られる方法論をより確実に実践できるはずだ。

 「レビューは、一緒にシステムを構築する仲間を助けることです。しかも、それによって自分もラクになったり成長したりすることができます」と森崎氏は語る。こうしたマインドはレビューに限らず、近年話題に上ることが増えたDevOpsも含め、組織で1つのゴールを追求する取り組み全てに有効なのではないだろうか。マインドの間違い、方法の間違いについて、1つでも思い当たるフシがある方は、ぜひ手に取ってみてはいかがだろう。

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