ソフトウェア資産管理(SAM)のプロセスとステップITエンジニアのためのSAM入門(2)(2/2 ページ)

» 2013年10月25日 18時00分 公開
[高橋桂子(エディフィストラーニング株式会社),@IT]
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SAMのプロセスとポイント

SAMの導入ステップ

 ここでは、主にMicrosoftのSAMの導入ステップについて解説します。MicrosoftのSAM導入プロセスは次の4ステップです。

図4 SAMの導入プロセス

 次に、特にITエンジニアに関わりの深い「STEP1」と「STEP2」に注目し、そのポイントを解説します。

「STEP1:棚卸しの実施」のポイント

 このステップでは、組織のハードウェア、ソフトウェア、保有ライセンスの全数調査を実施します。

 この時、「ハードウェア」「ソフトウェア」「保有ライセンス」の順序で調査することが重要です。まず、ハードウェアの棚卸しを実施することで、ソフトウェアの調査対象が明確になります。さらにソフトウェアの棚卸しの後で、ライセンスの棚卸しをすることで、調査しなければならないライセンスが明確になります。

 ソフトウェアの棚卸しには、通常「ソフトウェアインベントリツール」を使用します。ソフトウェアインベントリツールとは、ハードウェアにインストールされているソフトウェアの情報を自動的に取得するツールです。

 例えば、次回紹介する「Microsoft System Center Configuration Manager」には、ソフトウェアインベントリツールの機能が組み込まれており、Active Directory内、あるいはネットワーク内のコンピュータを検出して、それらのハードウェア情報(ハードウェアインベントリ)とソフトウェアの情報を自動的に収集可能です。

 ソフトウェアの棚卸しでは、各コンピュータの「プログラムと機能」などから、インストールされているソフトウェアを調べて、結果をExcelシートに記入して管理する方法(これを「手動棚卸し」と呼びます)も考えられますが、この方法はコンピュータが数台程度の小規模環境にしか適していません。コンピュータの数が数十台規模以上になると、この方法では管理の手間がかかりすぎ、データの整合性維持も複雑になり、破たんする可能性が高くなります。ソフトウェアの棚卸しでは、何らかのソフトウェアインベントリツールを使用した「自動棚卸し」が推奨されます。

 そして棚卸しの結果を管理台帳にまとめ、データベース化し、保存します。

「STEP2:整理とマッチング」のポイント

 このステップでは、まず保有ライセンスを整理し、有効なライセンス数を算出します。ライセンスには、「基本ライセンス」と「有効フルライセンス」があります。基本ライセンスとは、ライセンスを購入、もしくは調達する単位です。

 注意しなければならないのは、基本ライセンスが必ずしも有効フルライセンスとならない点です。例えば、アップグレードライセンスは基本ライセンスですが、アップグレードライセンス単体では、有効フルライセンスにはなりません。アップグレード対象となる下位バージョンのライセンス(これを「元ライセンス」、もしくは「オリジナルライセンス」と呼びます)と組み合わせることで有効フルライセンスとなります。

 基本ライセンスがそのまま有効フルライセンスとなるライセンスもあれば、アップグレードライセンスのように複数の基本ライセンスを組み合わせて有効フルライセンスとなるライセンスもあります。

図5 基本ライセンスと有効フルライセンス

 つまり保有ライセンスの整理では、基本ライセンスを整理し、有効フルライセンス数を算出する必要があります。

 では、ここでMicrosoftライセンスで有効なライセンス数を算出する際に重要となるポイントを1つご紹介しましょう。

 3ライセンス以上を必要とする企業向けのMicrosoftのライセンス販売プログラムに「Microsoft ボリュームライセンス」があります。Microsoftボリュームライセンスを契約している場合、SA(ソフトウェアアシュアランス)を追加購入できます(プログラムの種類によってはSAが標準装備されています)。

 SAとは、ソフトウェアの展開や管理に役立つさまざまな特典をまとめたプログラムで、新規ライセンスとセットで購入することができ、その後、SAの更新可能期間内に契約を更新できます(更新可能期間はボリュームライセンスの種類によって異なり、例えば「Open License」という種類のボリュームライセンスでは、有効期間満了日から90日以内が更新可能期間です)。

 SAには、導入計画サービス、年中無休のサポート、エンドユーザートレーニング、独自のデスクトップテクノロジの提供などの特典が含まれています。(SAの詳細はこちらをご覧ください)。

 このSAの特典の1つに、SAの契約有効期間内に発売された最新バージョンのソフトウェアの使用権があります。SAは基本ライセンスですが、有効フルライセンスではありません。このため、ボリュームライセンスを契約し、かつSAを購入している場合、有効ライセンスを算出するために次のような処理を行う必要があります。

  1. SAの元ライセンスを特定し、更新可能期間内に更新されたものであるか確認する。元ライセンスが存在しない、あるいは更新可能期間内に更新されていなければ、そのSAを有効フルライセンスとして計上できない。
  2. 有効なSAであることが確認できたら、SAの有効期間内に販売された該当する製品の最新バージョンを特定する。そのバージョンを有効フルライセンスとして計上する。

 このように保有ライセンス数を算出するには、単純に購入したライセンスを合計するだけでなく、基本ライセンスを組み合わせて有効フルライセンスを算出する作業が必要になります。これには契約しているライセンスについての正確な知識が不可欠です。

 有効なフルライセンス数が算出できたら、それをソフトウェアインストール数と突き合わせます。その結果、余剰ライセンスがあれば、他のコンピュータにライセンスを移管するなどの有効活用を検討します。ライセンスが不足していることが明らかになった場合、速やかにライセンスを購入し、ライセンスコンプライアンスに違反した状態を正します。

 1つ注意していただきたいのは、ライセンスが不足していた場合、該当製品を不足する分だけコンピュータからアンインストールするというのは、正しい対応ではないということです。最悪の場合、著作権法違反被疑事件の証拠隠滅罪に問われる恐れがあります。

Point! 「SAMの導入ステップ」

  • SAM導入ステップは、「STEP1:棚卸しの実施」、「STEP2:整理とマッチング」、「STEP3:方針と手続きの作成」、「STEP4:SAMの継続と発展」の4ステップ。
  • 「STEP1:棚卸しの実施」では、ハードウェア、ソフトウェア、保有ライセンスの順番に棚卸しを実施し、管理台帳を作成する。
  • ソフトウェアの棚卸しにより、組織で使用されているソフトウェアが明確になるため、ソフトウェアの標準化を行うことができる。
  • 「STEP2:整理とマッチング」では、保有ライセンス数とソフトウェアインストール数を突合し、ライセンスの過不足を判定する。保有ライセンス数の算出には、基本ライセンスから有効フルライセンスを算出するという処理が必要になる。
  • ライセンスの不足が明らかになった場合、すみやかに追加ライセンスを購入する。ライセンスが不足していた分だけコンピュータからアンインストールするという対応は、ライセンスコンプライアンス違反となる。


 ここまで、SAMの概要と導入ステップについて解説してきました。次回は、SAMを支援する具体的な製品として「Microsoft System Center Configuration Manager」を取り上げ、その使い方を解説します。

著者プロフィール

高橋 桂子(たかはし けいこ)

エディフィストラーニング株式会社

1997年、NRIラーニングネットワーク(株)(現エディフィストラーニング(株))に入社。Microsoft認定トレーナーとして、Windows Server、セキュリティ、Forefront、Exchange、System Centerなどのインフラ系コースの開発、実施を担当。

2011年に、公認SAMコンサルタントの資格を取得し、SAMの入門から実務まで幅広いコースの開発、実施を担当している。なおエディフィストラーニングでは、SAMに関して幅広いコースを提供しています。詳細はこちらをご参照ください。


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