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» 2013年11月13日 18時00分 UPDATE

「Windowsタブレット向けアプリ開発」先駆けインタビュー(2):コンテンツファーストな検索型サービスの理想形を追究する「じゃらん」

いわずと知れた旅行情報サイト「じゃらんnet」のアプリをWindows 8リリースと同時にストアに並べた秘訣を聞いた。まだアプリ開発の情報が少ない時期、フラットデザインやコンテンツファーストにどのように取り組んでいったのだろうか。

[唐沢正和,ヒューマン・データ・ラボラトリ]

 リクルートでは、パソコン向けWebサイトの構築をはじめ、さまざまな業種に向けたインターネット関連サービスを提供している。最近では、スマートフォンやタブレット端末など、スマートデバイス向けアプリの開発にも積極的に取り組んでいる。Windows 8/Windows RT向けのWindowsストアアプリの開発にも、いち早く着手。Windows 8のリリースと同時に、旅行情報サイト「じゃらんnet」のWindowsストアアプリを提供開始している。

winstore_interview2_1.jpg リクルートテクノロジーズ ITマネジメント部 シニアマネジャー 志田一茂氏

 同社がWindowsストアアプリの開発を開始したのは、2011年末頃から。2012年2月にスペイン・バルセロナで開催された移動体通信関連の展示会「Mobile World Congress(MWC) 2012」でアプリを公開するためだ。

 「当時は、スマートフォンやタブレット端末が急速に拡大し、パソコン中心だったインターネット環境が大きく変化しようとしていた時期。その流れの中で、新たに発表されたWindowsストアアプリについても、最新のトレンドにいち早く対応するべく、先駆け的に開発に取り組むことにした」と語るのは、リクルートテクノロジーズ ITマネジメント部 シニアマネジャーの志田一茂氏。

「じゃらんnet」が選ばれた理由

 Windows 8/Windows RT向けのWindowsストアアプリの開発の中でも、「じゃらんnet」のアプリ開発に最初に着手した理由を、志田氏は次のように話す。「旅行や宿泊の情報を提供する『じゃらんnet』は、幅広いユーザー層に利用されている。つまり、リクルートのサービスの中でも、カスタマーとの距離が最も近いサービスの1つといえる。そこで、まず『じゃらんnet』から先行して新しいプラットフォームへの対応を進めた」

 同社の場合、提供している情報サービスの数が多く、それぞれが個別でアプリ開発を行うと、膨大なコストと工数が掛かってしまう。そのため、多くの一般消費者が利用する「じゃらんnet」がパイロット的な役割を担い、先行開発で蓄積したノウハウや知見を他の情報サービスにも横展開していく手法を採っているのである。

「じゃらんnet」のWindowsストアアプリはHTMLベースで約2カ月で開発

 「じゃらんnet」のアプリ開発期間は、ガイドラインが公開されてから「MWC 2012」開催までの約2カ月間。リリース時期の目標が決まっている中での開発であったが、「開発言語として、C#やVisual Basicだけではなく、HTML5やJavaScriptを使うことができたので、比較的スムーズに開発を進めることができた」と志田氏。

 「JavaScriptについては、これまでのWebアプリやAndroidアプリの開発を通じてノウハウを蓄積してきた背景があった。そのため、新たな開発言語を覚える必要もなく、スマートデバイスの開発チームを中心に、ノウハウや知見を生かしながら、Windowsストアアプリの開発を進めることができた」としている。

「フラットデザイン」を取り入れる際の苦労

 一方で、「Windowsストアアプリ」という全く新しいプラットフォームへのチャレンジに当たって、大きな悩みを抱えていたのが開発チームだ。「当時は、Windowsストアアプリのガイドラインが公開されたばかり。しかも、開発環境は全て英語だったため、ガイドラインを把握するのに苦労した」と振り返るのは、リクルートライフスタイル ネットビジネス推進室 UXデザイングループ UXデザインチームの森澤思温氏。

winstore_interview2_2.jpg リクルートライフスタイル ネットビジネス推進室 UXデザイングループ UXデザインチーム 森澤思温氏

 「Windowsストアアプリ」のユーザーインターフェイスは、画面に表示するボタンやメニューを、平面的にデザインする「フラットデザイン」が基本となっている。現在は、さまざまなスマートデバイス向けアプリでも採用されており、「フラットデザイン」は当たり前のように思えるが、当時のWebデザイナーにとっては革新的なデザインであったという。

 「ガイドラインに沿って『フラットデザイン』を開発したつもりが、理解が足りずに審査に通らなかったことも少なくなかった。審査に通るかどうか、毎回不安に思っていたが、マイクロソフトからもアドバイスをもらいながら、二人三脚でガイドラインに近づけていった」という。

「コンテンツファースト」を実現するための試行錯誤

 また、「フラットデザイン」に加えてもう一つ、「コンテンツファースト」というコンセプトも、デザインチームにとって大きな課題であった。「『コンテンツファースト』の考え方自体は、スマートデバイス向けアプリを開発する中で理解できていたが、『じゃらんnet』のサービスの中でどう表現していくのか、試行錯誤の繰り返しだった」と森澤氏は語る。

 「コンテンツファースト」は、明確なコンテンツが用意されているサービスには適しているが、「じゃらんnet」は、旅行や宿泊の情報を条件を絞りながら探していく検索型のサービス。どのエリアに行きたいのか、どんな目的で旅行に行くのか、どんな宿泊施設を希望しているのか、利用者によって求めるコンテンツは全く異なってくる。

winstore_interview2_3.jpg 「じゃらんnet」のWindowsストアアプリの検索画面

 「『コンテンツファースト』に最適化した検索型サービスの実現に向けて、デザインチームで、さまざまな意見を出しあった。その際、参考になったのが海外で提供されていたWindowsストアアプリ。特に、天気予報のアプリやレシピのアプリは、ビジュアル面の構成などがとても新鮮で、『コンテンツファースト』のデザイン研究を行う上で刺激になった」(森澤氏)としている。

JavaScriptをフレームワーク化することで、約2週間で他のアプリを開発

 こうして、急ピッチで開発された「じゃらんnet」のWindowsストアアプリは、無事に「MWC 2012」で初披露され、同年10月、Windows 8のリリースと同時に公式アプリとして提供開始された。この時には、「じゃらんnet」とともに、「SUUMO」「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」のWindowsストアアプリも提供開始。これらのアプリの多くは、「じゃらんnet」で開発したJavaScriptをフレームワーク化し、横展開することで、約2週間という短期間でのアプリ開発を実現している。

 「短期間でアプリを開発できた背景には、最終テストにおけるシミュレーターの存在も見逃せない。当社がWindowsストアアプリの開発を進めていた段階では、まだWindows 8搭載マシンは発売前であり、実機によるテストは難しい状況。そのため、シミュレーターの役割が重要になったが、Windowsストアアプリのシミュレーターはとてもスムーズに動作し、実機がなくてもストレスなく動作テストができた」と志田氏は述べている。

Windows 8.1にもリリースと同時に対応

 「じゃらんnet」のWindowsストアアプリは、「MWC 2012」での初公開から正式リリース。そして現在に至るまで、継続してデザインや機能面の改良が行われており、Windows 8.1についてもリリースと同時に対応版を提供開始している。

 「今後も『コンテンツファースト』における検索型サービスの理想型を追究し、ユーザーが使いやすいサービスを目指していく。実際にユーザーの声を聞きながら、ユーザーが求める旅行・宿泊情報にスムーズにたどり着けるよう、これからも『じゃらんnet』のWindowsストアアプリを進化させていきたい」と、志田氏は意欲を見せた。

 また、これからWindowsストアアプリの開発を目指すエンジニアに向けて、志田氏は「パソコン向けのWebアプリを開発してきたエンジニアにとって、『コンテンツファースト』のWindowsストアアプリの開発はとても新鮮で、やりがいがあるはず。オープンな技術を採用しているため、開発のハードルも低く、個人のエンジニアでもアプリを作ることができる。ぜひ挑戦してほしい」とエールを送ってくれた。

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