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» 2013年11月21日 18時00分 UPDATE

三国大洋の箸休め(16):英語の読み方・ニュースの読み方――世界で一番のiPhone好きになった日本

今回は、Apple系媒体などを中心に英語圏でも反響を呼んでいた「世界で一番のiPhone/Apple好きになった日本」という話をネタに、英語ニュースの読み方についてのTIPSを記してみる。

[三国大洋,@IT]

 今回は、TUAW(The Unofficial Apple Weblog)の「世界で一番のiPhone/Apple好きになった日本」という話をネタに、英語ニュースの読み方についてのTIPSを記してみる。

今日の例文

The Wall Street Journal reports that Apple is doing extremely well in Japan. So well, in fact, that Japan is now one of Apple's fastest-growing markets.

One factor that has helped boost Apple sales is the company's recent iPhone deal with DoCoMo, Japan's largest mobile carrier. Frustrated with subscriber churn on account of not carrying the iPhone for so long, DoCoMo recently began offering attractive deals to bring in new customers and keep existing customers from defecting to rival carriers like KDDI and SoftBank. In turn, these competing carriers were forced to offer consumer-friendly deals of their own. The end result is that the iPhone in Japan is now a more attractive value proposition than ever before.

Japan is a growing market for Apple

http://www.tuaw.com/2013/11/11/japan-is-a-growing-market-for-apple/


ワード&フレーズ

 では、上記の例文に出てきたキーワードとキーフレーズを見ていこう。

原文
boost 押し上げる
deal 契約
on account of〜 〜を理由に
subscriber churn 契約者(加入者)の解約(=他社への乗り換え)
keep 〜 from (--- ing) 〜が(--- することを)食い止める、抑止する
defect to 〜 (〜)へ逃げる、乗り換える
in turn すると(次には)
(be) forced to 〜 〜することを強いられる
value proposition 価値のある内容の提案、価値提案

ニュースの背景

 「日本に意外な成長市場を見つけたApple」(“Apple Finds Surprising Growth Market in Japan”)という見出しの記事が、11月10日付でWall Street Journal(WSJ)に掲載され、英語圏でもApple系媒体などを中心に、一部で割と大きな反響を呼んでいた。内容自体に興味を持たれた方は、下記のWSJ記事や翻訳記事を参照されたし。

 「スマートフォン市場に占めるiPhoneのシェアがすでに4割近く(2013年4〜9月期で37%)もあり、来年には5割にも達する勢い」という話自体は、われわれには特に目新しいことでもないかと思う(少なくとも、東京で電車に乗っている時などに目にする光景からは、そんな印象を受ける)。

 ただ、Appleにとって「お膝元」である米国でさえ、ここ数四半期は30%台、新機種(iPhone 5s、同5c)が出た今四半期でさえ40%台に上昇か……という状況なので、「日本でシェア50%が見えてきている」というのは、現場を目にしていない人々にとってはかなり驚くべきことかもしれない。

 今、iPhoneにそれほどの勢いがあるのは日本と米国くらいなもので、世界の趨勢はAndroidの進撃――WSJにしてもBloombergにしても「新規出荷台数で、Androidスマートフォンのシェア8割」「Samsungのスマートフォン出荷台数はAppleの3倍以上に」といった(IDCやガートナーあたりの)都合のいいデータを引っ張り出してきては、折に触れて「Appleの失速」などという話を書いている。

 見方によっては伝える側の「思考停止」と取れなくもないが、Appleの業績の伸びや株価の勢いが2012年以前とはすっかり様変わりしていることもまた事実。なので、そういう悲観的な見方を書いておけば、まずは事足りてしまうのかとも思えてしまう(当否は別にして)。

 モバイル端末のメーカー各社が実際にどれほどもうかっているか(単に出荷台数の過多ではなく)、価格帯別の台数シェアはどうなっているかといった多少突っ込んだ話、あるいはiPhoneの購入に関する相対的な敷居の低さにまで言及したような記事は、少なくともデイリーで動いている一般・経済系ニュース媒体(サイト)ではなかなかお目にかからない。

 もっとも、さすがにWSJあたりは、iPhoneのシェアが首位である日本と米国で特に顕著な端末代金割引(英語だと「subisidy」という単語がよく使われる)の影響や、たぶん日本にしかない「頭金ゼロ」(与信が立つ、つまりクレジットカードさえあれば現金を用意せずに購入できてしまう)など固有の事情に触れてはいるが。

 さて、グローバル市場で「成長鈍化」「停滞気味」といった形容句を付けられがちな今のAppleという状況が背景にはある。だからこそ、WSJ記者は意図的に“Surprising Growth”という単語を見出しに挟んでいる。

 また、それに対して「NTTドコモがiPhoneを取り扱い始める前から、iPhoneは機種別の販売台数で首位だった。だとすれば見出しに“Surprising”と入れるのはおかしいんじゃないか?」といった物言いも付けられていたりもする(物言いを付けたのは、John GruberというAppleファンボーイの代表格で、AppleのPhil Schillerなどからも一目置かれるブロガー)。

 ただし、Gruberのようなツボを押さえた観察者はやはり少数派で、たいがいはちょっとトンチンカンなところに着目したりする。上記のTUAWの記事もそんな反応の1つで、Appleの成長の理由として、最大の要因であるNTTドコモのiPhone取り扱い開始や、Appleのブランド力の強さ(高級ブランドとしての認知)、従来からの韓国家電メーカーの相対的な弱さ(スマートフォンに限らず)などに注目・言及している(後の2つについては、記事で引用しなかった部分に記述あり)。

 いずれも間違いではないだろうが、読んでいてやはり少々物足りない。例えば、従来から「NTTドコモでiPhoneを使えたら」というかなり大きな潜在的ニーズがあったこと、あるいはAppleがずっと以前から決算報告の地域別売上で日本を別立てにしてきていること(本土、台湾、香港を含む中国の区分ができたのはほんの数年前、また米国でさえ南北アメリカの中に含まれている)、さらには(古い話になるが)Apple Storeの海外(米国)初出店が銀座店であったことなどに触れていないのは、何となく不公平とも感じられてしまう。

 なお、Appleの2013年会計年度(2013年9月末まで)の決算書を見ると、全世界での売上(1709億1000万ドル)のうち、日本での売上は134億6200万ドル(約7.87%)。前年が約6.75%(全世界が1565億800万ドル、日本が105億7100万ドル)。日本の成長率は27%で、世界全体の9%、中国圏の13%のいずれをも上回っている。

 ただし、前年(2012年)度の日本の成長率は94%(!)だから、それと比較すれば27%の伸びはそれほど特筆すべきものでもない(金額ベースでも2011〜2012の伸びの方が、2012〜2013の伸びよりも大きい)。結局、全体や他の地域が1割台(中国圏でさえ10%台前半)に落ち着いてしまった中で、「日本だけがいまだに……」ということになり、それがWSJ記事では「Surprising」という表現になった、ということか。

文章の分解

 上記の背景を踏まえて、冒頭の英文を少しずつ区切りながら読み解いてみよう。

[1] The Wall Street Journal reports /

[2] that Apple is doing extremely well in Japan. /

[3] So well, in fact, that Japan is now one of Apple's fastest-growing markets.

[4] One factor that has helped boost Apple sales is /

[5] the company's recent iPhone deal with DoCoMo, /

[6] Japan's largest mobile carrier. /

[7] Frustrated with subscriber churn on account of not carrying the iPhone for so long, /

[8] DoCoMo recently began offering attractive deals /

[9] to bring in new customers and keep existing customers from defecting to rival carriers like KDDI and SoftBank. /

[10] In turn, these competing carriers were forced to offer consumer-friendly deals of their own. /

[11] The end result is that the iPhone in Japan is now a more attractive value proposition than ever before.


 それぞれ、以下のように読み解ける。

[1] The Wall Street Journal が[2]と報じている

[2] Appleが日本で非常にうまく(事業を)やっている(=Appleの日本での事業が極めて好調に推移している)

[3] 実際にかなり調子がよく、日本がApple全体の中で最も急成長中の市場の1つとなっている(それほど調子がいい)

[4] Appleの売上を押し上げた要因の1つは

[5] 同社が最近になってDoCoMoと結んだiPhoneに関する取引契約

[6] DoCoMoは(加入者数で)日本最大の携帯通信事業者

[7]長い間、iPhoneを取り扱っていないことを理由とする顧客離れが続いていたことに不満を感じていた(DoCoMoは)

[8] DoCoMoは最近になって魅力的な内容の取引(=サービス)を提供し始めた

[9] 新たな顧客を獲得し、既存顧客が競合するKDDIやSoftBankに乗り換えるのを食い止めるために

[10] その影響で、これらの競合他社ではそれぞれ顧客に有利(consumer-friendly)な取引を提供することを強いられた

[11] その結果、日本(市場)におけるiPhoneは、かつてなかったほど魅力的な価値を持つ商品となっている


もう一度英文を

 では最後に、もう一度英文を読み直してみよう。

The Wall Street Journal reports that Apple is doing extremely well in Japan. So well, in fact, that Japan is now one of Apple's fastest-growing markets.

One factor that has helped boost Apple sales is the company's recent iPhone deal with DoCoMo, Japan's largest mobile carrier. Frustrated with subscriber churn on account of not carrying the iPhone for so long, DoCoMo recently began offering attractive deals to bring in new customers and keep existing customers from defecting to rival carriers like KDDI and SoftBank. In turn, these competing carriers were forced to offer consumer-friendly deals of their own. The end result is that the iPhone in Japan is now a more attractive value proposition than ever before.


【復習】

1. このTUAWの記事が参照・言及している「元ネタ」を掲載したのはどの媒体ですか?

2. ドコモ(DoCoMo)がiPhone取り扱いに踏み切った理由について、TUAWは何を挙げていますか?

3. iPhoneの取り扱いを始めたドコモの狙いを2つ挙げてください。


三国大洋 プロフィール

オンラインニュース編集者。「広く、浅く」をモットーに、シリコンバレー、ハリウッド、ニューヨーク、ワシントンなどの話題を中心に世界のニュースをチェック。「三国大洋のメモ」(ZDNet)「世界エンタメ経済学」(マイナビニュース)のコラムも連載中。


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