転職エージェントのビジネスを理解するエージェント徹底活用法(2)(1/2 ページ)

転職エージェントはどこでも同じ、そう思っていませんか? いえいえ、そんなことはありません。規模の大小やプロセスの進め方、得意な業界や職種など、それぞれに異なる特徴があるのです

» 2013年11月29日 00時00分 公開
[リーベル 田中祐介,@IT]

 エージェントの活用法、前回は転職エージェントを利用するメリットをお伝えしました。今回は、エージェントとはどういうものか、業界の構造やビジネスモデル、種類とその特徴などを紹介します。

 転職活動をしたことのある方はお分かりかと思いますが、世の中にはとてもたくさんの人材紹介会社=転職エージェントがあります。それぞれが独自の特徴を持ち、サポートの仕方もアドバイスもまったく異なります。自分にとってどのエージェントがよいかを考えるためには、まずその裏側の仕組みから知っておく必要があります。

転職エージェントのビジネスと収益構造

 転職エージェントの仕事は、正しくは「有料職業紹介事業」と呼びます。第1回で少し触れた通り、エージェントはハローワークのような無料のサービス機関ではなく、有料で職業紹介を行う民間の機関です。その職務内容は職業安定法により定められており、厚生労働省より許可を得た事業者だけが職業紹介業務を行えます。

 有料と聞くと「いくら掛かるのか?」が気になりますが、転職希望者は金銭の心配をする必要はありません。転職エージェントは、人材を募集している企業(求人企業といいます)に人材が入社したときに、その企業から紹介料として報酬を得ることになっているからです。

転職エージェントは企業の採用支援機関

 そもそも、なぜ求人企業は転職エージェントに報酬を支払わなければならないのでしょうか。

 それは、エージェントが「企業の採用業務の一翼を担っている」からです。一度でも採用を経験したことのある方はお分かりかと思いますが、自社内で採用活動を行うと、多くの場合、負荷の割には希望する人材に会えません。

 そこで、企業が採用戦略の1つとして利用するのが転職エージェントです。エージェントは、企業の特徴や事業戦略、戦略実現のための人材戦略、必要な人材の詳しい要件、入社後に実現可能なキャリアプランやモデルケースなどを、企業の人事や事業部担当者にヒアリングします。そして、転職希望者との面接の中で、その経験やキャリアプランが企業の人材戦略に合致していると判断した場合は、あたかもその企業の採用担当であるかのように、企業のことや、そこで実現可能なキャリアについて説明します。

 企業にとっては、転職エージェントが自分たちの代わりに自社の説明をしてくれるだけではなく、人材戦略に合致しているか否かも確認してくれるため、全て自社で採用業務を行う場合に比べて、希望に合致した人材に効率的に会えるのです。

 転職エージェントに支払う報酬は決して安くはありません。しかし、自社では採用のための人員を抱えず、選抜という最も時間のかかる作業の負荷を軽減でき、さらには宣伝広告費も抑えられることを考えると、トータルで見ればリーズナブルといえるのです。そのような背景があり、企業は採用支援費として転職エージェントに報酬を支払うのです。

入社時年収に連動する成功報酬型ビジネス

 ところで、求人企業はいつ、どのタイミングで、どれだけの報酬を転職エージェントに支払うのでしょうか。

 報酬のパターンは大きく2種類あります。先に報酬の一部を支払い、残りを転職支援が成功した後に支払うパターンと、転職支援成功後に一括して支払うパターンです。前者はヘッドハンティングの場合に、後者は通常の転職支援の場合によく採用されます。

 後者の場合、どれだけ転職支援を親身になって行ったとしても、転職が実現しなければ収入はゼロです。大変厳しい仕組みですね。

 気になる報酬額ですが、転職者の入社時想定年収の25〜35%が一般的で、企業の採用意欲が高い昨今では35%前後が標準です。転職が当たり前の国では20〜25%が標準のようですが、日本ではまだまだ人材の流動性が低いことから、ビジネスとして成り立たせるために、他の国に比べて割高になっていると思われます。

参入障壁が低く、激しい競争がある

 人材紹介業は、極端に言えば自宅とPCと携帯電話があれば始められます。事業資金や資格取得など一定の条件はあるものの、創業に当たりそれほど厳しい条件は求められないことから、他と比べて参入障壁が低い業界といえます。また、企業への営業も転職希望者との面談も、その後の転職支援の全てのプロセスも1人で対応できることから、社員数が1〜10人未満の会社が無数にあります。

 一方、日本では転職に対する抵抗が根強く、転職する人の数はそれほど多くありません。そのため、転職活動をする人の数に対する転職エージェントの数が過剰になり、エージェント同士が激しく競争する状況になっています。

 実際、電車やWebサイトで転職エージェントの広告を見ない日はありません。転職サイトに登録すると、エージェントからのメールが1日に数十通も届きます。こうしたことからも、エージェント間の競争の激しさを垣間見ることができます。

転職エージェントの種類と特徴

 では、多くの転職エージェントがひしめく中で、どのエージェントをパートナーとして選べばよいのでしょうか。フィーリングで選ぶのもよいのですが、大まかな分類とその特徴を知っておけば、自分の目的や志向に合った企業を選びやすくなります。そこで、まずはエージェントの種類と特徴を見てみましょう。

 切り口は大きく2つです。

  • 総合型エージェント/特化型エージェント
  • 大規模エージェント/中小規模エージェント

 転職エージェントのタイプを見るときは、「総合型×大規模」のように切り口を組み合わせて特徴をつかんでください。もっと細かい分類も可能ですが、分かりやすさのために簡略化しました。

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