連載
» 2013年12月10日 18時00分 UPDATE

特集:DevOpsで変わる情シスの未来(番外編):「爆速」の意外な中身とは?

「リーンスタートアップ」を体現するものとして注目されているヤフーの「爆速経営」。その活動の中身とは意外なまでに地道でひたむきなものだった。今回の書評記事「情シスの本棚」は、特集「DevOpsで変わる情シスの未来」の番外編としてお届けする。

[編集部,@IT]

「爆速」を成立させる秘密とは何か?

ALT ●著者:蛯谷敏●日経BP社●ISBN-10:4822274292●ISBN-13:978-4822274290●発売日:2013/11/7

 「爆速という言葉によって、社内の意識を変えられるようにはなったので、今年はイノベーティブなサービスを出すことに挑戦しています。スマートフォンやタブレットが登場したおかげで、ユーザーインターフェースと言われる、使い勝手が非常に重要になりました。だからこそ、僕らのサービスの作り方をより直観的なものに変えていかなくてはいけないと思っています。従来の工業製品のように、市場調査をして、企画書を書いて、製品を作ってといった作り方をしていたら、恐らく成功しないと思う。それよりも、プロトタイプ主義というか、ユーザーを巻き込んでは品質を改良したり、アイデアを取り入れてまた改変したり、というイメージですね」――。

 本書「爆速経営 新生ヤフーの500日」は、2012年4月、創業から15年にわたってヤフーを率いてきた井上雅博氏に代わってCEOに就任した宮坂学氏が、その後どのようにして改革を推し進めてきたのかを、約1年半にわたって取材したルポルタージュである。

 周知の通り、PCを主軸にした各種サービスで、堅調に収益・ブランドを高め続けてきたヤフーだったが、2007年以降のスマートフォンの台頭は「初めて直面した構造的な危機」となった。その象徴的な出来事が、スマートフォンを主軸にしたコミュニケーションアプリ「LINE」の台頭と、ヤフーブランドの高齢化だ。あるヤフー社員はLINEユーザーの女子高生にヤフーについて聞いたところ、「ああ、小学校のパソコンの授業で使ったことがある」と言われ「愕然とした」という。

 その背景にあったのは、業績を堅持することを重視する故に、「あらゆる意思決定のスピードが落ちている」など、「『攻め』よりも『守り』に入った」経営姿勢だったという。では「経営陣の世代交代」の後、ヤフーはどのような改革を行ったのか、本書では宮坂氏をはじめとする経営陣の人となりにも触れながら、改革の軌跡をリアルにまとめている。

 中でも印象的なのは、宮坂氏が行った改革とは、「爆速」という言葉のイメージから想起するような“特殊なもの”では決してない点だ。というのも、同氏らが行ったこととは、「自分たちの会社が何のために存在しているのか」を問い直す「理念の再定義」と、「201×年までに営業利益を2倍にする」という「明確な目標の設定」、そして「設定した目標を達成するための具体的な戦略を定め、それを戦術に落とし込む作業」の3つであり、「むしろ改革としてはオーソドックス」なものであるためだ。

 ただ、言うまでもなく、業務の実行を担うのは多数の従業員だ。その点、「経営陣の考えをいかに社員に伝えるか、浸透させるか」が戦略・戦術を実現する上で大きなポイントとなるわけだが、本書ではそうした点にこそ宮坂氏の独自性が現れていることを指摘している。本書に収められた多数のポイントの中から、ここでは印象的なものを幾つか紹介してみたい。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

この記事に関連するホワイトペーパー

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。