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» 2013年12月12日 18時00分 UPDATE

1ミリ秒でも早く〜次世代Web技術が支えるこれからのEコマース(2):もはや当たり前? CDNとクラウドを活用した構成 (1/2)

Eコマースビジネスの性質によっては、突発的に大量のアクセスが押し寄せることがあります。そんな時に備えたこれからのシステム設計とはどうあるべきでしょうか。

[松本直人(クロスワープ イーコマース エバンジェリスト),@IT]

 インターネットの普及が進み、私たちは日常的にEコマースサイトを通じて商品やサービスを購入するようになりました。これらEコマースビジネスも日々進化しており、新興市場を形成する新たなプレイヤーも生まれています。

 前回の「肥大化、複雑化するWeb、読み込み高速化のポイントは?」に続き、今回もEコマースビジネス最新動向を踏まえて、これから求められるWebサービスのカタチをひも解いていきましょう。

特性によって異なる2つのトラフィックパターン

 Eコマースビジネスを展開する企業の取り組みは日々進化を続けています。マーケットプレイスによる売買仲介インスタントEC、オススメ商品を提示するレコメンド機能集団購入によるディスカウント、サブスクリプションによる予約購入、ユーザー参加型の商品開発と販売、期間限定によるフラッシュセールスなど、6つのトレンドがEコマースを取り巻く環境の中で市場形成の手段として使われています(図1)。

ec02_fig01.png 図1 Eコマースビジネス手法の大分類と最新動向

 これらはEコマースに限った話ではありませんが、インターネットを通じた大量仕入れと大量販売という基本モデルでは、どれだけ多くの購買ユーザーを集め、どれだけ多くの購買機会をユーザーへ提供できるかが、ビジネス成功の決め手、鍵となっています。

Eコマースビジネスや技術の動向は、弊社ブログ「E-COMMERCE BUSINESS BLOG」でも毎週更新しています。興味がある方はご参照ください。

 次に、トラフィック別のEコマースビジネスモデル分類を見ていきましょう。Eコマースは、販売する商品や手法にもよりますが、ユーザー購買動向により大きく2つに分けられます。1つは緩やかなアクセス増減を繰り返すもの、もう1つは突発的に大量アクセスが生じるものです(図2)。

ec02_fig02.png 図2 販売特性により異なるトラフィックパターン

 Eコマースサイトに突発的な大量アクセス(スパイク)を起こす商品の代表的な例としては、発売日が定まっている「ゲーム」や商品限定販売を行う「キャラクターグッズ」などがよく知られています。また、前述した期間限定で商品販売をするフラッシュセールスや、一度に大量のユーザーが集団購入する手法なども、同じトラフィックパターンを示します。

 弊社クロスワープの顧客には、こういった突発的な大量アクセスのあるコンテンツを持つ場合が多く、そのピーク性能に耐えられるよう、日々技術的な改善を続けています。

 大手Eコマースサイトでも突発的な大量アクセスは不定期に発生しています。その傾向は、TwitterやFacebookなどのソーシャル解析を行っているTopsyのグラフでも確認できます(図3)。

 この解析では、URLに「amzn.to」を含む日本語のツイートから、潜在的なインプレッション数を割り出しました。Amazonへの実流入トラフィックそのものではありませんが、ソーシャルネットワークを通じた不定期で突発的な大量アクセスの兆候を把握するには十分役に立ちます。

ec02_fig03.png 図3 大手Eコマースサイトにおける突発的な大量アクセスの兆候を示すグラフ

 では、大量アクセスの具体的な例を挙げてみましょう。先日行われた「楽天日本一大セール」開催中の大量アクセスの解析結果は、以下の通りです(図4)。

 この解析は、2013年11月3日22時前後の楽天市場トップページへのアクセスを、モバイル端末に搭載されたアクセス解析ツール(HttpWatch BASIC)から行ったものです。当時の優勝歓迎ムードも相まって、膨大なアクセスが集中している最中の結果です。

ec02_fig04.png 図4 2013年11月3日 22時付近の楽天市場トップページ解析結果

 一口にEコマースサイトといっても、運営する企業によって、コンテンツやWebサービスの埋め込み方は大きく異なります。今回の解析結果では、トップページの中に、負荷集中によってアクセス不全に陥っているリンクがいくつか見て取れました。

 ユーザーからの大量アクセスが発生した結果、システムのキャパシティを越えてしまう場合は珍しくありません。むしろ、インターネットではよく起こることです。事前にこれらへの耐性を備えているかや、早期にアクセス不全を改善する手法を定常的に持ち合わせているかが鍵となってきます。

 筆者も10年以上のシステムエンジニア経験の中で、システムキャパシティを超えてしまったサービスを見てきました。しかしそうした場合でも、現場の迅速な判断とそれを支える経営層の組み合わせによって危機を乗り越えたケースが多くあります。

大量アクセスを「逆手」に取れるキャパシティを

 Eコマースでは、突発的な大量アクセスを「逆手」にとる新興ビジネスも出てきています。

 実店舗のスーパーなどでは、期間限定で特価で販売を行う「タイムセール」はごく一般的な手法です。それと同じことをEコマースサイト上で行う「フラッシュセールス」と呼ばれる手法もその1つで、国内でも大手Eコマースサイトでは一般的になりつつあります。

 まもなくIPO(株式上場)を迎える北米の新興Eコマースサイト、zulilyもその手法を使っています(図5)。

ec02_fig05.png 図5 zulilyにおけるフラッシュセールスの予告バナー表示

 フラッシュセールスには、期間限定で特定の商品を低価格で提供することにより、ユーザーの購買行動を刺激しつつ、商品仕入れと販売のサイクルを安定化させる効果があります。新興Eコマースサイトのいくつかでも同様の手法が用いられています。

 しかしこれは、その一定期間に集まる大量のアクセスに耐えられるシステムキャパシティを持っていてはじめて実現するビジネスモデルでもあります。新興Eコマース事業者は、技術とビジネスモデルの両輪で日々改善を行っています。

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