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» 2014年02月17日 18時00分 UPDATE

三国大洋の箸休め(24):ビッグデータが抱える2つのボトルネックに直面したNBA (1/2)

NBAの一部のチームが導入した映像解析システム「SportVU」から得られた膨大なデータを活用する段になって、人とマシンという2つのボトルネックが明らかになってきたそうだ。

[三国大洋,@IT]

 以前のコラムで、NBA(米プロバスケットボールリーグ)の一部のチームが、「SportVU」という映像解析システムを導入したことは以前紹介した。そこから得られた膨大なデータを活用する段になって、人とマシンという2つのボトルネックが明らかになってきたそうだ。今回はそんなお話を紹介する。

今日の例文

The NBA’s big-data possession is just getting started, and everyone is rooting for a slam dunk that benefits teams, athletes, media, and most of all, fans. But that’s not guaranteed, and in the words of Parker, we just have to make sure we “make the right play in the end.”


ワード&フレーズ

 では、上記の例文に出てきたキーワードとキーフレーズを見ていこう。

原文
possession 保有(possess;保有する、の名詞形)
root for 〜 〜を見つけ出そうとする、地面を掘って探す
slam dunk スラムダンク、決定的な結果
benefit(s) 便益(メリット)をもたらす
guarantee 保証する、確約する
in the end 最終的に

ニュースの背景

 いつもよく見る「Grantland」というサイトに、先頃『DataBall』と題する記事が掲載されていた。

 Grantlandは、米大手スポーツチャネルESPN傘下のスポーツ&エンターテインメント系サイトで、『シグナル&ノイズ』の著者、Nate SilverをNYTimesから引き抜く際に使われたことでも知られる、新しい形の媒体である。

『DataBall』――膨大なデータをどう活用するか

 「SportVU」という映像解析システムが、NBA(米プロバスケットボールリーグ)の一部のチームで導入されていることは以前に軽く触れたことがある。バスケットボールコートの真上に設置したカメラで、選手やボールの動きを全て記録/解析するというこのシステムが、今シーズンから全チームで導入されている。

 『DataBall』は、このシステムで生成されるデータのごく一部を使って「遊んでみた」研究者の「発見並びに感想」といったもので、「ビッグデータが実際に入手できる環境になったときに、どんな課題に直面するか」という点が浮き彫りになっていて興味深い。

 記事の筆者であるKirk Goldsberryは、ミシガン州立大学地理学部の準教授(現在はハーバード大学の「Center for Geographic Analysis」という所で客員教授をしている人物)だそうだ。専門分野については「spatial and visual analytics」(直訳すれば「空間と視覚分析」)という説明がある。

 このGoldsberryとその研究グループ――ハーバード大で統計学やコンピューターサイエンスを専攻する大学院生4人、そのうち「2人は27歳で博士課程4年目」とあるから研究者・専門家のタマゴといえそうだ――が「XY Hoops」というプロジェクトで取り組んだのは、「コート上にいる全選手の1つ1つの動きについて、その価値を割り出す」というもの。その結果、彼らは「EPV」という新しい指標を作り出した。

 「EPV」(Expected Possession Value)。直訳すれば「期待されるボール保持の価値」、また意訳すれば「ボール保持ごとの期待値」となろうが、要は「全てのプレー(攻撃)について、ボールにタッチした全ての選手の貢献度が分かる」というものらしい。

 例えばバスケットボールでは、「スクリーン」など、ボールに触らない、あるいはボールのないところでの動きも重要だから、「そうしたものについての貢献度はどうなのか?」という疑問も残るが、ここでは触れられていない。

 『DataBall』の記事中には、このEPVの結果を視覚化したインタラクティブなグラフがある。数字(背番号)で表された10人の選手の動きと、その動きに応じて刻一刻と変化するEPVの値を見るだけでも、この指標の面白さが伝わってくる。

 白の背番号「9」の選手がドリブルしてゴールに近づいていくと、EPVの値が上昇していく。そしてゴール下を抜け、左隅にフリーで待っている味方の「2番」の選手にパスした瞬間にEPVが最高になる。

 つまり、「9番」の選手は、相手チームの「40番」にマークされながら難易度の高いシュートを無理して打つよりも、ノーマークの味方選手にパスした方がシュート成功確率が高く、より賢明な選択をした、といったことがこの数字の変化から読み取れる(このプレーでは、「白の9番」がボールを持った時点でのEVPが0.97、ボールをパスした時点のEVPが1.75で、この差分[0.78]が9番の選手の貢献度、となる)。

 従来の指標だと、このプレーでは「白の2番」の選手に「得点3」が付き、「白の9番」に「アシスト1」が付くだけで終わってしまう。シュートのお膳立てをした「白の9番」の貢献度――その時々の判断力の良し悪しなどは、アシストが決まったかどうかだけでは測れない。

 EPVには、そんな、これまで測り難かった能力・貢献度を数字で表せるメリットがある、ということになろう。

 どんな職場にも必ず、「縁の下の力持ち」的な役割を果たす個人がいたりするものだが、往々にしてそんな人の貢献度を測るのは難しい。そんなことをぼんやりと思いながらこの記事を読んでいった。

 無論、ゲームの勝敗がはっきりしているバスケットボール(や他のスポーツ)とは違い、一般の組織では、何が勝ちか、あるは負けなのかという定義も難しいし、反対にNBAでさえ「ロッカールームでのリーダーシップ」といった記録に残らない要素が選手の評価(もしくは期待)に含まれている場合もあると聞く。

 ただ、そんなあれやこれやの現実的な課題が存在することも感じつつ、それでも「個々の人間がチームの勝利(あるいはゴール達成)にどれくらい貢献したか」が数字で把握できるようになる、というのは、ちょっと刺激的なアイデアだ。メンバーの意識や動き方を大きく変える可能性があるのではないか、などと感じたりもする。

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