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» 2014年02月25日 18時00分 UPDATE

転機をチャンスに変えた瞬間(14)〜プロ野球選手 石井琢朗:投手から野手へ 好きなことへの挑戦なら、結果が出なくても後悔しない

プロ3年目に投手から野手へ転向。その男はなぜ、ゼロから学ぶことを厭わなかったのか――。

[聞き手 クライス&カンパニー 丸山貴宏,@IT]
転機をチャンスに変えた瞬間〜プロ野球選手 石井琢朗の場合

 入団1年目に投手として初勝利を挙げ、2年目にはジュニアオールスターに出場するなど、10代にして進むべき道を切り開きつつあった石井琢朗さん。しかし3年目終了後に、野手への転向を首脳陣に直訴する。

 監督には猛反対されたが、少年時代から積み上げてきた投手としての成功を全て捨ててでも、打撃、守備、走塁を、ゼロから学ぶことを選択した。それは「野球を心から楽しみたい」という、自分の心に正直であろうとしたが故の決断であった。

 背番号を「66」から「0」に変更した転向1年目、出場69試合で10個の失策、33個の三振を喫しながらも、内野手として着実に定位置を固め、59本の安打と、3本の本塁打を記録した。それが、後に名球会入りを果たす、偉大な野手 石井琢朗さんの始まりであった──。

石井琢朗(いしい たくろう) プロ野球選手

石井琢朗

1970年 栃木県生まれ。
1988年 横浜大洋ホエールズ(当時)入団。
1999年に通算1000本安打、1000試合出場、200盗塁達成。2006年に2000本安打を達成。2009年、広島東洋カープへ移籍。2012年秋に現役引退、同球団でコーチとして後進の指導に当たっている。


好きなことに挑戦できたなら、自分の選択に責任を持てる

丸山 プロ入り3年目、投手として活躍しつつあった時期に、なぜ野手への転向を志願されたのでしょうか。投手としてプロ入りを果たし、すでに実績もありながら、野手としてゼロから再出発するということには、とても勇気がいると思うのですが。

石井 実は高校3年生の時にはすでに投手としての自信を失いかけ、「もう無理かもしれない」という気持ちがあったのです。それはプロに入ってからもずっと残っていました。そして同時に、「投手は無理でも、野手ならやれるのではないか」という気持ちも芽生えていました。打つこと、守ること、走ることは、投げること以上に自分の性に合っていたし、何より、野手としてグラウンドに立つことを想像したら、とても楽しそうに思えました。

 高校時代は、投手も打撃や守備や走塁の練習があったので、野球をしているという実感があったのですが、プロに入ると「投手は危険だからそういう練習は駄目だ」と言われてがっかりしました。夢がかなってプロ野球選手にはなれたものの、このまま投手として活躍できなかったら、きっと悔いが残るのではないかと思ったのです。

 好きなことに挑戦できたなら、結果が出ようが出まいが、自分の選択に責任を持てるし、後悔せずにいられるんじゃないかと。2年目からコーチに直談判を始めて、3年目に監督に話した時は激怒されました。「話にならん!」と監督室を出ていかれるほど反対されましたが、最後は転向を認めてくださいました。

丸山 打撃、守備、走塁、全てをプロとしてゼロから積み上げなければならないことは、途方もなく険しい山を登る挑戦だったと想像します。しかし、多くの失敗を重ねながらも2年目にはタイトル獲得までされる活躍振り。その陰には、すさまじい努力があったのでしょう。

石井 高校時代は、投手以外では外野を守らせてもらう程度だったので、内野の守備練習の経験はなかったし、打撃も走塁もプロに入ってから覚えたことばかりです。守備は、捕球できるだけでは駄目で、グローブの芯で捕らなければならない。打撃は、球をバットに当てるだけでは駄目で、詰まらせずに飛ばさなければならない。

 練習は辛かったし、苦しかったです。かなりレベルが低かったのですから。でもその一方で、新鮮なことばかりだし、練習を積み重ねて上達したら、辛く苦しい練習も心から楽しめたのです。やっぱり野手はいいなと。

丸山 サードやショートでレギュラーとして活躍し、ゴールデングラブ賞を獲得するまでになりましたが、苦労した分、喜びもひとしおだったのでは?

石井 野手としての経験が無かったことは、マイナス要因でしかありません。でも僕は根っからのプラス思考の持ち主で、経験が無くて癖が無い分、コーチが教えてくれたり、先輩のプレーを見て、スポンジみたいに何でも吸収できるのではないかと考えたのです。

 幸い僕がサードを守り始めたころには、ショートに進藤選手というとても守備が上手な先輩がいらして、僕はいつも、お手本を見るつもりで隣で練習させていただきました。しかも僕は守ることが好きだし、自ら志願して転向したので、受け身で練習するのではなく、貪欲に、積極的に覚えようという気になれました。好きなことをすることこそ、上達への近道ですよね。

構成/平山譲

聞き手 丸山貴宏

丸山貴宏

クライス&カンパニー 代表取締役社長

リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「キャリアコンサルティング」(翔泳社)


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