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» 2014年03月26日 18時00分 UPDATE

「Windowsタブレット向けアプリ開発」先駆けインタビュー(3):累計100万DLの人気ゲームに見るUnity 4.3のWindowsストア対応の実際

累計100万ダウンロードの人気ゲーム「サムライディフェンダー」について、iOS/Androidからの移植対応や独自機能実装などを担当者に聞いた。

[吉村哲樹,@IT]

iOS/Androidで人気のゲームアプリ「サムライディフェンダー」のWindowsストア版が登場

 今Windowsストアで、とあるゲームアプリが大人気を博している。リンクキットが開発・提供する「サムライディフェンダー」というタワーディフェンス型ゲームがそれだ。2014年2月20日にWindowsストアに登録されて以来、1日当たり2000〜3000のダウンロード数を継続的に記録しており、息の長い人気を保っている。

win_sakigake3_07.jpg Windowsストアの「サムライディフェンダー」

 ちなみに、モバイルゲームにある程度詳しい方なら、既にサムライディフェンダーのことはご存じかもしれない。このタイトル、実は2013年3月にiOS向けのアプリとしてApp Storeで初めて公開されたもので、その後Android対応版がGoogle Play、Amazon Appstore、Samsung Appsで順次リリースされている。これらを含めると、既に累計ダウンロード数は100万を超えているという。

 これだけ高い実績を誇るタイトルを、なぜ今あらためてWindowsストアに対応させたのか。リンクキット 代表取締役社長 竹内啓二氏は、その理由として「Windowsタブレット端末の将来性」を挙げる。

win_sakigake3_02.jpg リンクキット 代表取締役社長 竹内啓二氏

 「スマートフォンやタブレット端末はこれまで、多くのユーザーにとって新規性の高いデバイスだったが、今後その存在が当たり前になってくるにつれ、より多くの機能が求められてくるだろう。例えば、『より豊富な機能が欲しい』『普段仕事で使っているWindows環境が使いたい』といったニーズが増えてくるはず。その折には、WindowsタブレットやWindows Phoneは極めて魅力的な選択肢になるだろう」

 そのためリンクキットでは、サムライディフェンダーの開発段階から、Windowsストアへの公開タイミングを計っていたという。転機が訪れたのは、2013年11月のことだった。サムライディフェンダーのゲームエンジンとして採用していた「Unity」の新バージョン「Unity 4.3」がリリースされ、Windowsストア対応機能が大幅に強化されたのだ。またそれに合わせて日本マイクロソフトも、Unityを使って開発したアプリケーションのWindowsストア対応に関する情報を、積極的に発信し始めていた。

 「マイクロソフトからの薦めもあり、さまざまなサポートが期待できそうなこともあって、このタイミングでサムライディフェンダーのWindowsストア対応に踏み切ることにした」(竹内氏)

UnityのWindowsストア対応強化を機にWindowsストア版の開発に着手

 同社はそもそも、なぜサムライディフェンダーのエンジンにUnityを採用したのだろうか。リンクキット 取締役 和田昌司氏は、次のように説明する。

 「3年ほど前、iOS版を企画していた当時のUnityは、まだバージョン3だったが。既にこの時点で高度な技術を満載しており、弊社のような少人数の開発チームが独自でエンジンを開発しても、到底太刀打ちできるものではないと思った。そこで、Unityをエンジンにして開発を進めるのが、最も効率が良いと判断した」

 また当時のUnityは、まだiOSとOS Xにしか対応していなかったが、その後AndroidやWindowsにも順次対応していき、マルチプラットフォーム開発のための基盤としても有用性を増してきた。そして2013年11月にリリースされたUnity 4.3において、Windowsストア対応が大幅に強化されたのだ。

win_sakigake3_04.jpg Unity 4.3の新機能より抜粋

 Windowsストア版サムライディフェンダーの開発は、このバージョン4.3を使って行われたが、Unity上で稼働するゲーム本体の移植に関しては、わずか3日間という短期間の内に作業を完了したという。

 「もともとマルチプラットフォームを意識して開発していたこともあり、コンテンツ本体に関しては特に大きな手間が掛かることもなく、Windowsストア対応を済ませることができた」(和田氏)

 また、日本マイクロソフトから開発に関するさまざまな情報の提供を受けたことも、大いに役立ったと竹内氏は振り返る。

 「Unityを使ったWindowsストアアプリ開発のセミナーを受講して、日本マイクロソフトのエバンジェリストから開発のさまざまなポイントをレクチャーしてもらった。Unity 4.3は、Windowsストアに本格対応したバージョンとしては“初物”だったので、品質に若干の不安もあったが、実際には動作も安定していたため、Unityのバグに煩わせられることもなく、わずか1カ月間で全ての移植作業を完了できた」(竹内氏)

わずか1カ月間の開発期間でWindowsストアへのフル対応を完了

 なお、1カ月間の開発期間の大部分は「Unity以外の部分」、つまりUnityだけでは対応できない機能の改修や追加開発に充てられたという。

 「Unityは、各アプリマーケットに固有の機能はカバーしていないため、自分たちで独自に作り込む必要があった。例えば、Windowsストアの規約に沿うために機能を追加・改修したり、あるいはゲーム内課金をWindowsストアの課金決済システムで行うための処理を追加開発した。またゲーム内で表示する広告も、Windowsストアの広告表示機能を使うようにした」(竹内氏)

 ちなみにWindows 8.1では、画面を分割して複数のアプリのウィンドウを同時に表示させることができる。Windows OSとしてはごくごく当たり前の仕様なのだが、一方でiOSやAndroidといったスマートフォン/タブレット専用OSではできない芸当だ。そのため、もともとiOS/Androidアプリとして開発されたサムライディフェンダーも、Windows 8.1に対応させるに当たり、画面分割に合わせてゲーム画面を自動的に縮小する機能を独自に実装した。

win_sakigake3_05.jpg 画面分割機能を実装(左がサムライディフェンダーの画面(上部に広告)、右がWebブラウザーで表示されたリンクキットのWebサイト)

 「Unityには、ゲーム画面を自動的に縮小する機能は備わっていないので、独自に作り込む必要があった。この部分の開発に最も時間がかかったが、ゲーム画面と他のアプリの画面を同時に表示できるのは、Windows 8.1の最大の魅力だと感じていたので、ぜひとも対応する必要があった。例えば、ゲームの横にSNSアプリの画面を開いておくだけでも、ユーザーにこれまでにないプレー体験を提供できるようになる」(和田氏)

 こうした開発作業は全てVisual Studioを使って行われたが、その開発環境は「極めて快適だった」と和田氏は述べる。

win_sakigake3_03.jpg リンクキット 取締役 和田昌司氏

 「竹内も私も、もともとVisual Studioをはじめとするマイクロソフトの開発ツールで育った世代。iOS向けアプリの開発もWindows環境上で行うぐらいなので、Visual Studioを使った開発作業にはまったく違和感はなかった。UIの実装にはXAMLを使ったが、メソッドやプロパティの名称が実装側と呼び出し側できちんと統一されていて、かつドキュメントもきちんと整備されているので、開発効率が極めて良かった。他のプラットフォームでは、この辺りが整備されていないので、なかなかこうはいかない」

 唯一、Unity関連のサンプルコードがまだ少なかった点が不安だったが、あらかじめ幾つかのポイントを押さえてさえおけば、UnityアプリケーションのWindowsストア対応は決して難しくないと同氏は言う。

 「iOSなどでは、日付や通貨の表示は米国の仕様に合わせていればおおむね問題ないが、Windowsではロケール設定に応じて表示形式が自動的に切り替わるので、いい加減なプログラミングでは特定のロケールで動作がおかしくなったり、動かなくなったりすることがある。このように、幾つか気を付けるべきポイントはあるが、それらをあらかじめ把握できていれば、恐らく一般に思われているよりはるかに簡単にWindowsストアに対応できる。

 今回は広告や課金決済システムなど、かなり細かい部分までWindowsストアの機能に対応したが、それでも約1カ月で移植を完了できた。これが、例えばUnity単体だけで完結する売り切り型のゲームであれば、それこそ数日間程度で対応するのも不可能ではないはず」(和田氏)

win_sakigake3_06.jpg 課金決済システムを実装

今後はWindows Phone対応やXbox One対応も視野に

 既に日本国内はもちろん、米国など海外のWindowsストアでも大好評を博しているサムライディフェンダー。リンクキットでは現在、Windowsデバイスへのさらなる広範な対応に向け、次の一手を考えているという。

 「Windows Phoneには、ぜひ対応させたいと考えている。Windows Phoneデバイスは今後、ビジネスパースンを中心に大きな需要が生まれると考えているので、今後タイミングを見て対応していきたい。さらにはXbox Oneにも、できれば対応していきたいので、「ID@Xbox」にもチャレンジします。Kinectを使えば、タッチ操作の代わりにプレーヤーの動作でサムライディフェンダーをプレイできる。もしこれが実現すれば、本当に楽しいと思う!」(竹内氏)

 ちなみに2013年6月、Unityの開発元であるユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、Windows 8、Windows Phone 8およびXbox One向けの開発環境を、マイクロソフトと共同開発していく旨を表明している。この協業は、既にUnity 4.3をはじめ、さまざまな形で結実しつつあるが、ゲームファンにとっては、Unityベースのゲームタイトルが今後続々とWindows端末やXbox One上でプレイできるようになる状況は、大いに楽しみだろう。

 竹内氏によれば、同社は今後もWindowsストア向けのゲームを中心に、Windowsプラットフォームに向けたコンテンツ開発を積極的に手掛けていく予定だという。

 「もともとWindowsプラットフォームは市場規模が巨大なので、モバイルゲーム市場としても大きな可能性を秘めていると思う。実際、今回サムライディフェンダーをWindowsストアに登録してみて、国内外からのユーザーの反響の大きさに驚いている。現在、同じくUnityをベースにした新タイトルを開発中だが、こちらもぜひWindowsストアに対応させた上で、できるだけ多くのWindows 8ユーザーに楽しんでもらいたいと考えている」

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