ソフトウェア、ライセンスの現状把握と、その後の管理、確実な方法とは?〜今すぐ使える管理項目台帳もダウンロード提供〜実践! IT資産管理の秘訣(5)(3/3 ページ)

» 2014年07月23日 18時00分 公開
[篠田仁太郎クロスビート]
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保有ライセンス報告方法の決定〜差分の是正と管理台帳の策定

 保有ライセンスの調査では、最終的にインストールしているソフトウェア情報とのひも付けを考慮する必要があります。また、ITリテラシの異なる社内担当者もしくは個々人がライセンス調査を実施することも考慮し、書式や情報項目などのバラつきを抑え、誰でも同じように報告できる手順や仕組みを用意することが望まれます。そのために筆者が推奨するのは以下の2点です。

  • 利用許可ソフトウェアの情報を活用する
  • 調査手順を組織内に適切に周知する

1.利用許可ソフトウェアの情報を活用する

 全ての担当者に、ライセンスの情報を統一して記録してもらうのは至難の業です。しかし統一して記録してもらわないと、同じソフトウェア、同じライセンスかどうかの判断がつかなかったり、そもそも何のソフトウェアで何のライセンスなのかすら、分からないものとなってしまったりする可能性があります。

 そうなることを少しでも防ぐために、ライセンス情報の登録の際には、利用許可ソフトウェアで制定したソフトウェア名称を、選択・コピーして登録できるような仕組みを持つことをお勧めします。

 また、手順を策定する際は、単に調査のためだけの手順を策定するのではなく、調査結果の精査方法や、調査結果に基づく是正方法までを策定しておくことが望まれます。

 ライセンスの現状把握を実施すると、多くの場合、保有ライセンスの不足が発見されます。ライセンスの不足がどれくらい出るかは、残念ながら保有ライセンス調査を実施してみなければ分かりません(事前に数部門でサンプリング調査を実施し、前もって予測しておく方法もありますが、多くの場合、この数値は「全社の不足数の傾向値」にはなかなかなりにくいものです)。

 不足数は出たものの、その調達のための予算の確保がままならないケースは少なくありません。こういう事態を避けるためにも、あらかじめ「組織としてのライセンス是正方法」を定めておき、その対処方法について、マネジメント層の承認を得ておくことが大切です。

 また、是正必要数を算定するための方法として、少なくとも以下の点についても、あらかじめ定めておくことが大切です。

(1)アップグレード/ダウングレードの適用方法

(2)過不足数の算定範囲(部門単位での過不足判定とするのか?それとも組織横断的な過不足判定とするのか? など)

(3)ライセンス保有の決定基準(何を持っていればライセンスを保有しているとするのか? それが不足している場合にライセンス保有を認定するプロセスを別に持つのか?など)

 特に(3)については、できればソフトウェアベンダーや信頼できる調達先、SAMコンサルタントなどに確認をして記録を残しておくことをお勧めします。

2.調査手順を組織内に適切に周知する

 調査手順を策定したら、調査を実施してもらう社内担当者にその手順を周知することが必要です。しかし、この周知を単にメールや掲示板だけで実施することはやめた方がいいでしょう。

 社内担当者にとってこの業務は“通常業務に割り込んでくる業務”であり、加えて非常に手間の掛かる面倒な作業です。しかしながら、この調査は各担当者に適切に実施してもらわなければ、いつまでたっても終わらない作業ですし、調査結果の精度が低ければ、管理部門の精査作業にも支障を来すことになります。各担当者に適切な手順で、かつ適切な内容で実施してもらうためにも、単にメールや掲示板だけでの周知ではなく、調査の目的や手順を直接伝える場をセッティングすることを強くお勧めします。

 もちろん、担当者のスケジュール調整は簡単なことではないでしょう。しかし、筆者のこれまでの経験では、単にメールや掲示板のみで周知した組織の現状把握は100%に近い確率で失敗し、作業のやり直しを余儀なくされています。

 また、一般的な社内ユーザーには、ライセンス調査に求められる「ライセンスに関する知識」が不足しているケースが多いものです。ですので、この機会にライセンス知識についても習得できる研修を実施することをお勧めします。

 なお今回は、現状調査の対象項目をイメージしていただきやすくするために、弊社が一般的に推奨する管理台帳項目を記載した「ソフトウェア/ライセンス台帳関連図」(APDX-SYS-01-01.台帳関連図Ver.2.5)と、各項目の必要性や目的・注意事項などを記載した「管理台帳項目説明用資料」(APDX-SYS-01-02.管理台帳項目説明用資料Ver.2.7)をダウンロード提供します。よろしければ参考までにご覧ください。

「ソフトウェア/ライセンス台帳関連図」と「管理台帳項目の説明用資料」を無償ダウンロード

クロスビートが使用。推奨する管理台帳項目をまとめた「ソフトウェア/ライセンス台帳関連図」と、各部門への説明、調査協力の獲得に便利な「管理台帳項目説明用資料」をダウンロード提供します。

「ソフトウェア/ライセンス台帳関連図」の無償ダウンロードはこちら

「管理台帳項目の説明用資料」の無償ダウンロードはこちら


 次回は、現状把握の最後の章として、現状把握の際のその他の注意点をお伝えし、「海外も含めたツール動向と管理システムの調達要件」として海外のツールと日本のツールの違い、インベントリツール利用時の注意点、SAMシステムとインベントリツールの違いなどをお伝えします。

著者プロフィール

篠田 仁太郎(しのだ じんたろう)

日本におけるIT資産管理、ソフトウェア資産管理のトップコンサルタント。(社)ソフトウェア資産管理評価認定協会 代表理事/情報規格調査会 SC7 WG21(ISO/IEC19770) エキスパート/(財)日本情報経済社会推進協会 IT資産管理評価検討委員会 委員長

株式会社クロスビート

一般社団法人 ソフトウェア資産管理評価認定協会(SAMAC)

一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)


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