面接という「商談」を成功させるためには経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(3)(2/2 ページ)

» 2014年07月02日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
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面接官が知りたいのは、たった4つのこと

 相手の会社のことをよく調べてあれば、面接直前の準備はそれほど大変なものではない。それは、面接の質問パターンが決まっているからだ。

 面接する側が知りたいのは、この人物(候補者)は、(1)任せたい仕事をする上で十分な能力を持っているか? (2)本当に入社してくれるのか? (3)一緒に働いて感じのいい人物か? (4)仕事に対してどういう態度の人物か? の4点だ。

 面接する側からすると、(1)は、過去の仕事の実績を履歴書で確認して、さらに「ご専門の内容を、一般向けに分かりやすい言葉で説明してください」とでも質問するとチェックできる。

 専門の内容を平易な言葉で説明できる人は、専門内容を深く理解していてかつ頭のいい人物だ。特にエンジニアの場合は、専門知識の不足は致命的だし、知識が十分でも専門知識に関してビジネス的なコミュニケーションをうまく取れないと、仕事の成果が上がりにくい。学生を対象とする面接なら、学校で専攻したテーマについて説明させるといい。

 面接官は(2)について、「当社(あるいはこの仕事)を志望した理由を聞かせてください」という質問をすればいいし、候補者側ではこの質問に対する納得のいく答えを用意しておくといい。あまりに自己中心的な説明や、いわゆる「上から目線」に聞こえる説明は人格的な印象が悪くなるので注意したい。

 (3)の人物に対する印象は、面接する側がぜひ知りたい点であり、会話全体から判断することになるが、「入社したら、どのような仕事をしたいですか」と質問して、やりとりしてみるのが分かりやすい。

 「面接で好印象を持たれる人物像」の特徴は、以下の4点に集約される。(A)誠実な人、(B)自分で考える人、(C)他人を元気にするような明るさのある人、(D)成熟した大人、だ。

子どもとは働きたくない

 面接では、小さなウソや誇張でも、露見すると誠実さを疑われてしまうので、避けるべきだ。また、マニュアル的な受け答えに終始すると、「自分で考える能力の乏しい人」に見えてしまう。

 大半の人は、明るい人が好きだし、世間でリーダーの資質と思われているものの正体は、一貫性があって誠実だと感じさせる言動と、他人を元気づける明るさの2点だ。

 そして、「子どもっぽい人」は、一緒に働きにくい相手だと思われやすいので、大人の言葉遣いを心掛けるべきだ。自分の父親のことを、第三者である面接官に「私のお父さん」などと言うようでは、心もとない。

 なお、転職の面接では、(4)の「仕事に対する態度」が必ず問題となる。「過去に会社を辞めた経緯と理由を説明してください」あるいは「今の職場を辞めてもいいと思うのはなぜですか」という質問に対する答えの準備がぜひとも必要だ。「会社を辞める」ということの説明には、気分的に悩ましさが伴うので、この質問に対する答えは、しっかり考えて、丁寧に用意しておく必要がある。答えを文章にして、紙に書いてチェックしておくくらいの周到さが要る。



 細かなコツを多く述べ過ぎると、心配事が増えるかもしれないので、このくらいにしておこう。自分の魅力を信じて、全力で相手と波長を合わせることに集中すると、面接はきっと上手く行く。

 ただし、面接には、面接官の個人的な相性の要素が入るし、他人との競争もあれば、当日の出来・不出来もある。面接で落とされると気落ちするものだが(筆者は何度も経験がある)、気にせずに次の機会に臨もう。面接には練習が必要であり、失敗の経験は後で生きる。その点でも、まさに面接は商談なのだ。

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筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトにて『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。

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